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相続関係説明図の正しい書き方と作成するメリット

相続と書かれている積み木の画像
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遺産相続の際に、金融機関や法務局から相続関係説明図の提出を求められることがあります。しかし、「相続関係説明図」という用語自体聞き慣れないため、内容までは分からないという人がほとんどではないでしょうか。

相続関係説明図は、相続手続き上で作成する書類です。相続関係説明図はなぜ必要で、自分で作ることは可能なのでしょうか。また、どのように書けば良いのでしょうか。

この記事では、相続関係説明図の正しい書き方と作成するメリットについて詳しく解説します。

エクセルの入力の仕方を説明している画像

この記事の監修者

税理士桐澤

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。

相続関係説明図とは

相続関係説明図とは、相続登記をする際に法務局に提出する添付書類の一つで、被相続人(亡くなった人)と相続人との関係を図にしたものです。相続関係説明図は、相続関係にある親族を中心に書かれた「家系図」のようなイメージです。

相続関係説明図に記載する事項は、法律上決まりがあるわけではありません。しかし、一般的には次のような事項を記載します。

  • 被相続人の氏名、最後の本籍・住所、登記簿上の住所、および出生・死亡の年月日
  • 相続人の氏名、住所、生年月日

相続関係説明図の記載を見れば、亡くなった被相続人と、相続人がどのような関係にあるかが一目で分かります。そのため、誰が相続人なのかということや、相続人と被相続人との関係が把握し易くなります。なお、相続関係説明図は、あくまで被相続人と「法定」相続人との関係を示すものであり、遺産分割協議の結果、実際に相続した人を示すものではありません。そのため、遺産分割協議の結果財産を相続しなかった相続人についても除外せず、相続人の一人として記載します。

相続関係説明図が必要となる具体例

相続関係説明図が必要となる具体的な場面とは、どのような場面でしょうか。相続関係説明図は、主に相続登記や預貯金口座の名義変更等の手続きで、戸籍謄本等の原本を還付してもらう時に作成します。

例えば
相続した遺産のなかに土地や建物などの不動産がある場合、名義を移転するために相続登記が必要となります。そして、相続登記をするときに誰が法定相続人であるかを証明するために、添付書類として相続関係説明図を作成するのです。

このように、相続登記の際に相続関係説明図を法務局に提出することで、手続き完了後には一緒に提出した戸籍謄本等の還付を受けることができるようになります。戸籍謄本が必要となる相続手続きは多くありますので、原本還付を受けることで、手続きのたびに書類を発行する時間や手数料を省くことができるのです。

また、相続関係説明図は、相続時の借金の調査のために信用情報機関に照会をする時など、金融機関等に対して相続人について分かりやすくするために作成することがあります。

法定相続情報説明図との違い

相続関係説明図とよく名前の似た書類として「法定相続情報一覧図」というものがあります。相続関係説明図と法定相続情報説明図は、相続人が誰かをはっきりさせるための書類であるという点で共通しています。

相続関係説明図と法定相続情報説明図の大きな違いは、法務局による認証の文言が入っているかどうかです。相続関係説明図は、あくまでも個人が作ったもので公的保証がありません。そのため、各種相続手続きの際は戸籍謄本等もあわせて提出する必要があります。

一方で、法定相続情報一覧図は法務局の認証印がついてくるので被相続人の生涯の戸籍、相続人の戸籍と同じような効力を持ちます。そのため、法務局での認証を受ければ戸籍謄本の代わりに提出することができるのです。法定相続情報一覧図があれば、土地や銀行口座の名義変更をする際に、その都度被相続人の生涯の戸籍と相続人の戸籍を全て用意しなくても手続きを行うことができます。

また、相続関係説明図は不動産の相続登記との関係でのみ使用するのに対して、法定相続情報一覧図は相続手続き全般で利用することができるという違いがあります。法定相続情報一覧図には、記載したい情報をすべて記せるわけではありません。

一方で、相続関係説明図には相続に必要な情報を詳細に記載できます。「法定相続情報一覧図には記載できず、相続関係説明図には記載できるもの」は以下のとおりです。

相続関係説明図には記載できるもの
  • すでに亡くなっている相続人
  • 廃除を受けた相続人
  • 遺産分割や相続放棄
  • 数次相続の場合の次の相続

相続関係説明図を作成するメリット

Meritと書いているビジネスマン

相続手続きにあたり、相続関係説明図は必ず作成しなければならないのでしょうか。結論から言うと、必ず必要という訳ではありません。

しかし、作成しておくことによって、以下のようなメリットがあります。

戸籍謄本等の原本を還付してもらえる

相続関係説明図を作成するメリットの1つは、相続手続きの書類を返還してもらえることです。相続登記をする際には、誰が法定相続人であるかを証明するために、被相続人の出生から死亡に至るまでの全ての戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍)などを法務局に提出します。

しかし、戸籍謄本は様々な相続手続きに必要とされるため、ここで提出してしまうとまた別の相続手続きのたびに取り寄せをしなければならなくなります。この点、相続関係説明図を提出すれば、戸籍関係の書類を返還してもらえます。

相続手続きのたびに戸籍謄本等を準備するのは手間と費用がかかりますが、相続関係説明図を提出し原本還付を受けることで、書類を発行する時間や手数料を省くことができます。

手続を短縮できる

相続関係説明図を作成する2つ目のメリットは、被相続人と相続人との関係が分かりやすく整理されることによって、手続き時間を短縮できることです。相続関係説明図を作成し、相続人全員の戸籍等の必要書類を揃えて法務局へ提出すると、それが公的な証明書として保管されるとともに、法務局から写しを交付してもらえます。この「写し」が交付されれば、以後その「写し」を以て手続きを進めることができるため、その後の手続きがスムーズになります。

そもそも相続できる地位には順位があるため、被相続人が前の配偶者との間に子をもうけていたり養子がいたりするときなどには相続関係が複雑になります。しかし、相続関係説明図を作成することによって、相続人自身の立場をひと目で確認できるだけでなく、相続手続きを税理士などの専門家に依頼する際の説明も簡略化できます。

相続税の計算の際に使える

相続税の基礎控除額や生命保険金の非課税限度額、死亡退職金の非課税限度額は、法定相続人の人数を基礎に計算します。相続税の申告および納付には期間制限が設けられているところ、相続が発生する前に相続関係説明図を作成しておくことで、いざという時に時間に追われることなく、相続人の人数を把握することができ、相続税等の計算を行うことができます。

相続関係説明図の作成方法

電卓とボールペンとノート

相続関係図は、作り方が法律で定められている訳ではありませんが、実務上ある程度の定式があります。そこで、相続関係説明図の定型的な書き方について、ポイントに沿って説明します。

相続関係説明図の作成方法は、次のとおりです。

相続関係説明図の作成方法

STEP1:必要書類の収集
STEP2:相続関係説明図の作成
STEP3:必要書類と相続関係説明図の提出

STEP1:必要書類の収集

相続関係説明図を作成するにあたって行うべき事前準備として、まず、以下の情報を調べる必要があります。

相関関係図作成の事前準備
  • 被相続人(亡くなった人)に関する情報として、氏名・出生日・死亡日・最後の本籍・最後の住所
  • 登記簿謄本上の住所
  • 相続人に関する情報として、氏名・出生日・現在の住所

上記の情報を調べる為に、以下の書類を取得しましょう。

  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 被相続人の最後の住所を証明する住民票(除票)または戸籍の附票
  • 被相続人名義の不動産の登記簿謄本(複数ある場合には全て)
  • 相続人の戸籍謄本
  • 相続人の住民票

相続関係説明図を作るためには、相続人の一生涯分の戸籍が必要です。しかし、実際には保存期限が切れているなどの理由でなかなか全部揃わないことがあります。戸籍集めで難航してしまったら、この時点で専門家に相談することをおすすめします。

上記書類が揃ったら、法定相続人を確定します。法定相続人は、民法における相続人の範囲に従い決定します。

STEP2:相続関係説明図の作成

相続関係説明図は、Wordなどのソフトを使えば簡単に作成できますし、専用のソフトを使用することもできます。手書きでも問題ありません。ただし、手書きの際には、ボールペンなどの消せないインクを用いて楷書で丁寧に記載しましょう。

相続関係説明図には、以下の項目を記載していきます。

  1.  タイトル

タイトルの部分には、「被相続人 ○○○○ 相続関係説明図」と記載し、誰の相続関係説明図であるかを明らかにします。法定相続情報の場合は「被相続人 ○○○○ 法定相続情報」としてください。

  1.  被相続人の情報

相続関係説明図には、必ず故人の情報を記載しておきます。

1. 名前

2. 死亡年月日

3. 被相続人の住所:被相続人の欄には、以下の3種類の住所を記載します。

最後の本籍地:亡くなった当時、戸籍が置かれていたところ
最後の住所:亡くなった当時、住民票が置かれていたところ
登記簿謄本上の住所:相続により名義変更を行う不動産の登記簿に記載されている住所

  1. 相続人の情報

相続関係説明図に記載する相続人の情報には、下記の項目が必要です。

1. 相続人の名前、誰が相続するのか:誰が遺産を相続するのかを明確にする為に、相続人の名前の後に①「相続」②「遺産分割」③「相続放棄」のいずれかを記載します。

・相続は、文字通り財産を相続する方のことです。
・遺産分割は、遺産分割協議を行った結果、財産を相続しない方のことです。
・相続放棄は、相続放棄を行い遺産相続しない方のことです。

2. 故人との続柄:相続人の名前の横に、被相続人(故人)との続柄を記載します。配偶者を「夫」「妻」、子を「長男」「二男」などと記載し、相続人と個人との続柄を明らかにします。

3. 生年月日、住所 : 相続人の名前の下には、出生の年月日、住所を記載します。住所は、住民票が置かれている住所を記載します。被相続人よりも先に亡くなっている相続人がいた場合には、生年月日と死亡年月日を記載します。

  1. 相続関係を表す罫線

被相続人や相続人を罫線でつなぎます。配偶者は二重線で、それ以外は一本線でつなぎます。離婚している場合は二重線に「×」をつけて離婚成立年月日を記載します。

  1.  戸籍還付の欄

相続関係説明図の下部に「相続戸籍関係一式は還付した」と記載します。その右側に担当者が押印するためのスペースを空けておくと親切です。

  1.  作成者の情報

この図を作成した人については、作成日と作成者の住所と氏名を記載し、押印します。

記載例

上述の通り、相続関係説明図に記載すべき内容自体はあまり難しくはありません。しかし、馴染みのない書類のため、見本を見ながら作成するほうが早いです。法務局のホームページには、相続関係説明図の見本が掲載されています。

法務局ホームページ「相続関係説明図の記載例」

STEP3:必要書類と相続関係説明図の提出

相続関係説明図は必ずしも作成しなければならないということはありませんが、作成した場合は、以下の提出先に提出します。

  • 相続登記を行うときは法務局

相続登記の際、必要書類とともに相続関係説明図を提出することで、戸籍謄本の原本を返却してもらうことができます。

  • 預貯金や有価証券の解約等の手続きを行う場合は金融機関

金融機関に被相続人の死亡を申し出ることで口座が凍結されてしまうと入出金などの手続きができなくなってしまうため、事前に解約等の手続きを行わなければならないところ、金融機関によっては解約手続きの際に相続関係説明図が必要になる場合があります。金融機関によって相続関係説明図が必要ない場合もあるため、事前確認が必要です。

相続関係説明図を作成する際の注意点

注意事項と書かれた積み木

最低限記載しなければならない事項をもれなく記載すること

相続人の情報として、氏名・出生日・現在の住所を記載する必要があります。現住所には、住民票の住所を記載しましょう。

住民票の住所が「一丁目1番地1」なのであれば、相続関係説明図にも「1-1-1」などと略さずそのまま記載しましょう。また、氏名の漢字も戸籍のとおりに正確に記載することが必要です。

相続か遺産分割かを明確に記載すること

土地・建物といった不動産が相続対象の場合には、相続関係説明図のなかで、相続もしくは遺産分割を明示することも重要です。遺産分割協議の結果、不動産を相続する人の名前に「相続」と添えてください。不動産を相続しない人の名前には「遺産分割」と添え書きしましょう。

相続放棄をした場合はその人の名前に「相続放棄」と添えます。

まとめ

今回は、相続関係説明図の正しい書き方と作成するメリットについて解説しました。相続関係説明図は、必ず作成するものと定められている訳ではありませんが、相続財産に不動産があり相続登記を行う際に、戸籍謄本の原本還付を受けるために作成する書類である点を押さえておきましょう。

相続関係説明図を作成することで相続人間の続柄をひと目で把握でき、他の相続手続きの際にも活用できるため、作成するメリットは大きいといえます。相続関係説明図の作成は、法務局のサイトで見本を参照すれば、さほど難しいものではありません。

ただし、事前準備として必要な戸籍謄本の収集は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式すべてを集めるのは手間がかかることがあります。相続手続きや相続税の納付には期間制限もあるため、時間がないときは必要に応じて専門家に依頼するのも一つの手です。

 

響き税理士法人のスタッフ

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税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。