相続人の1人が行方不明で連絡がつかない。大切な人が亡くなり、悲しみに暮れる中でも銀行預金や不動産の名義を変更といった相続手続きをしなければなりません。
でも全く知らない、連絡が取れない相続人がいたら、この後どうやって手続きをしていけばいいのでしょうか。
この記事では、
- 行方が分からない相続人がいたときの確認方法
- 相続人の行方が分からない場合の相続手続きの進め方
- 生きているうちに相続人の行方不明が分かった場合の対処法
について信託銀行で実際に多くのお客さまの相続手続きを行なっている私が詳しく解説していきます。
目次
この記事の監修者
税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
相続人の行方が分からないときの確認方法
相続人が行方不明で連絡が取れない場合、以下の5つの手順を行なってください。
① 戸籍謄本の取り寄せ 〜名前・生年月日の確認〜
② 戸籍の附票の取得 〜住所の確認〜
③ 手紙を送る 〜住んでいるかの確認〜
④ 住所地に行ってみる 〜住んでいるかの確認〜
⑤ インターネットで検索 〜生きているかの確認〜
それぞれをひとつずつ具体的に解説していきます。
① 戸籍謄本の取り寄せ 名前と生年月日を確認
戸籍謄本を取り寄せる途中で、行方不明の相続人がいることが分かるケースが一番多いです。
戸籍謄本を取り寄せることで、行方の分からない相続人の「名前」と「生年月日」が確認出来ます。
また、行方不明の相続人の戸籍謄本を確認すると、行方不明の相続人に家族がいるのかなども確認出来ます。
相続手続きを進めるなかでとても大切な情報が盛り込まれているので、必ずもれなく取得しましょう。
しかし、この戸籍謄本の取り寄せがかなり大変です。
- 本籍地が複数あり1つの市町村役場で取り寄せが完了しない。
- 手書きで書かれており、文字を読むことが大変。
戸籍謄本の取り寄せで辛いと感じ、作業が止まってしまった人は、早めに専門家に相談しましょう。
② 戸籍の附票の取得 住所の確認
戸籍謄本を取り寄せるとき、戸籍の附票も合わせて取得しましょう。
行方が分からない相続人の「住所」が確認出来ます。
しかし、住所が分かっても、行方の分からない相続人が必ずしもそこに住んでいるかとは限りません。
行方の分からない相続人が届出をせず住所を変えていたり、実際は違うところの住んでいたりといった場合があるからです。
それでも、現在の住所は必要な情報なので、必ず取得しておきましょう。
③手紙を送ってみる 住んでいるかの確認
確認した住所に手紙を送って連絡を取ってみましょう。
何か反応があれば、今後連絡を取れ、相続手続きが進みます。
反対に、郵便物が届かずに返ってきたらそこには住んでいないことが分かります。
④住所地に行ってみる 住んでいるかの確認
手紙が届かなかった場合や、手紙を送って届いているはずだけど連絡が返ってこなかった場合は、もしかするとその住所に住んでいるかもしれません。
そんなときは、確認のために戸籍の附票に書いてある住所に出向いてみましょう。
何か情報を得ることが出来るかもしれません。
⑤インターネットで名前検索 生きているかの確認
ここまでして連絡が取れない場合、行方の分からない相続人は生きていないかもしれません。
生きているかの確認で、最近有効なのがインターネットで検索してみることです。
最近はSNSを利用している人が多いため、何か情報が手に入るかもしれません。
ここまで確認作業を行なっても、行方の分からない相続人と連絡が取れないことがあります。
では、このあとのどのように相続手続きを進めていけばいいのでしょうか。
次はこの疑問について説明していきます。
手続きは2つのパターンに分かれます。
- 生きていることは分かっているが、行方が分からない場合
- 生きているかさえ分からない場合
ひとつずつ解説していきます。
相続人の行方が分からないときの相続手続きの進め方
遺産分割協議とは
どのような相続手続きを行う場合でも、遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議という話し合いを行わなければいけません。
亡くなった人の財産は、相続人全員のものです。
よって亡くなった人の銀行預金の解約や不動産の名義変更するためには、相続人全員で財産をどのように分けるか話し合って決める必要があります。
相続人全員で話し合う必要があるので、行方不明となっている相続人を抜きにして遺産分割協議を行うことは出来ません。
では行方が分からない相続人がいたときは、遺産分割協議が進まないので、ずっと手続きできないのでしょうか。
そんな時、行方の分からない相続人に代わって遺産分割協議に参加してくれる人が不在者財産管理人です。
不在者財産管理人を選任する
不在者財産管理人とは、行方の分からない相続人に代わって財産を管理する人のことです。
不在者財産管理人を選ぶ手続きを進めるためには、行方の分からない相続人が最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所に申立をします。
この申立の時に、行方の分からない相続人を探すために集めた資料を必要になります。
不在者財産管理人には、どのような人がなるのでしょうか。
多くは、相続について利害関係のない人か、弁護士や司法書士などの専門家がなることが多いようです。
不在者財産管理人が選ばれるまでには申立をしてから、2ヶ月から3ヶ月かかります。
不在者財産管理人が選ばれた後、遺産分割協議を進めましょう。
不在者財産管理人に遺産分割協議に参加してもらう
不在者財産管理人が選任された後は、遺産分割協議に参加してもらうため、家庭裁判所に「権限外行為の許可」を申請しましょう。
許可が下りると不在者財産管理人を含めた遺産分割協議がスタートします。
注意点としては、
- 行方の分からない相続人の法定相続分の財産を確保する必要がある点。
- 引き継いだ財産を管理するための費用がかかる点
があります。
費用については行方の分からない相続人の財産から差し引かれますが、とくに財産の分け方については、手続きを進める中でしっかり理解しておいたほうがいいでしょう。
相続人が生きているかさえ分からないときの相続手続きの進め方
どれだけ連絡を取ろうとしても、連絡がつかない場合、もしかすると、行方の分からない相続人はもう生きていないかもしれません。
生きているかさえ分からないときは、失踪宣告の申立を行うという方法があります。
失踪宣告が認められると、その人に行方不明者はいなかったものとして相続手続きを行えます。
では詳しくみてみましょう。
失踪宣告
失踪宣告には普通失踪と特別失踪があります。
- 普通失踪
行方不明者が住んでいる場所を去った後、生死が7年間明らかでないときは、7年経った時に法律上死亡したとみなすことです。
- 特別失踪
災害などに巻き込まれ生死が不明の場合に、災害が終わってから1年経過したときに行方不明者は死亡したとみなすことです。
失踪宣告の申し立て手続きも、不在者財産管理人選任手続きと同じく、行方不明の相続人が最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所に申し立てをします。
注意すべきこととして、行方不明の相続人自体に相続人がいないことを確認しなければいけません。
失踪宣告が認められると、死亡したことになり、行方不明の相続人自身の相続が始まってしまうからです。
もし、行方不明の相続人に相続人がいるときは事前に確認しましょう。
もう1点は手続きが完了するまでの期間です。
申し立てから失踪申告されるまで1年近くかかってしまい、相続税の納税期限に間に合わない可能性があります。
現実的にはまず不在者財産管理人を選任し、遺産分割協議を進め相続税を納めます。
その後状況によって失踪宣告の申し立ての手続きを行う方法を選ぶ人が多いです。
生きているうちに相続人の行方不明が分かった場合の対処法
ここまでは、相続が発生した後の状況について説明してきました。
ここでは、生前に行方不明の相続人がいることが分かっている時に、どのような準備ができるかについて解説します。
事前に連絡を取ってみる
ご自身で連絡を取ってみましょう。
先ほど説明した戸籍謄本は、生前にも取得できますし、住所なども確認出来ます。
一切面識のない相続人が連絡を取ろうとするより本人が行なった方が、連絡が取れる可能性は高いでしょう。
連絡が取れたときは、事前に相続が起きたときのことについて話しておきましょう。
遺言書を作っておく
遺言書を作り、財産の分け方を決めておきましょう。
遺言書を作成することで、先ほど説明した遺産分割協議は必要なくなります。
遺産分割協議をしなくていいだけで、残された相続人の負担はかなり減ることでしょう。
また、遺言書を作るときに専門家に質問し、遺言の内容を実現する遺言執行者になってもらうと残された家族の負担はさらに減ります。
ここまで、行方が分からない相続人がいるときの相続手続きがどれだけ大変か説明してきました。
もし、生きているうちに行方不明の相続人がいることが分かっているならば、費用はかかってしまいますが、遺言書を作成することをおすすめします。
残された相続人の負担を少なくするため、準備をしておきましょう。
遺言書の書き方や不明なときは「響き税理士法人」にお問い合わせください。
まとめ
この記事では、行方不明の相続人がいたときの確認方法と相続手続きの進め方について説明してきました。
① 戸籍謄本などを取り寄せて行方不明の相続人の情報を集める
② 不在者財産管理人を選任する申し立てを行い、行方不明の相続人に変わり遺産分割協議に参加してもらう
③ 失踪宣告の申し立てを検討する
以上の手順を説明してきましたが、どのような方法を選び相続手続きを進めるかは、一人ひとりの状況によって変わります。
また、大切な人を亡くした悲しみに暮れる中このような、初めて経験する作業を行うことはとても大変です。
そんなときは、まず専門家であるわれわれ「響き税理士法人」にご連絡ください。
今の大変な状況をお話しいただくだけで心が少し軽くなると思います。
そんな助けになりたいと考えております。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
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