法定相続情報証明制度のメリットとデメリット

税理士友野
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「法定相続情報証明制度」とは、法務局の認証文が付された被相続人の相続関係一覧図の写しの交付を受けられる制度のことです。

交付を受けた相続関係一覧図の写しは、相続における様々な場面、たとえば預貯金口座の解約、不動産の相続登記、被相続人の年金の手続、相続税の申告といった場面で、戸籍謄本や住民票の束の代わりとして活用することができます。

法定相続情報証明制度を利用のメリットとデメリット

法定相続情報証明制度を利用することによるメリットとデメリットを表にまとめました。

メリット
  • 各種相続手続で戸籍書類一式の提出が不要になる
  • 相続手続が早く進む
  • 不動産の相続登記申請にも使える
  • 手続を税理士などの代理人に依頼することも可能
  • 手数料が無料
デメリット
  • 日本国籍を有しない場合は利用できない
  • 手続を代理してもらう場合は費用が必要
  • 戸籍書類一式の提出をする場面が少ない場合は作成の手間が回収できない

法定相続情報証明制度を利用するメリットが大きいのは、被相続人の財産が散らばっている場合や被相続人の親族関係が複雑な場合です。被相続人が日本のあちこちに預貯金口座を持っていたり、被相続人が離婚と再婚をしていたり、あるいは何人かの相続人に代襲相続が生じているときは、相続関係手続の回数と必要な戸籍謄本の数が多い傾向にあるので、法定相続情報証明制度を利用するメリットは大きいです。

一方、被相続人の預貯金口座が一つだけで、相続人が被相続人の配偶者と子どものみというケースは、相続関係手続の回数と必要な戸籍謄本の数が少ない傾向にあるので、法定相続情報証明制度を利用するメリットは小さいと思われます。

この記事では、法定相続情報証明制度の概要を解説した後、表に記載したメリット・デメリットの各項目について詳しく解説します。

法定相続情報証明制度とは

「法定相続情報証明制度」って何?

「法定相続情報証明制度」とは、法務局の認証文が付された被相続人の相続関係一覧図の写しの交付を受けられる制度のことです。

偽造防止措置が施された専用紙で交付される相続関係一覧図の写しは、預貯金口座の解約、年金の手続、不動産の相続登記、相続税申告などの各種相続手続で使うことが可能です。

制度が導入された経緯

法定相続情報証明制度は、「昨今大きな問題となっている所有者不明土地問題や空き家問題は、相続登記が未了のまま放置されている不動産の増加が一因となっている」との指摘を踏まえ、相続登記手続を促進するために導入されました。法定相続情報証明制度の手続には法務局に所属する登記官が関与するため、その手続の過程で相続人に不動産の相続登記を促すことが期待されています。

法定相続情報証明制度の主たる目的は相続登記手続の促進ですが、もう一つ、相続手続の関係者(相続人・役所や銀行の担当者)の負担を軽減するという目的もあります。

相続人の負担がどのように軽減されるかについては、以下で詳しく解説します。

法定相続情報証明制度のメリット

法定相続情報証明制度のメリットは次のとおりです。

メリット
  • 各種相続手続で戸籍書類一式の提出が不要になる
  • 相続手続が早く進む
  • 不動産の相続登記申請にも使える
  • 手続を税理士などの代理人に依頼することも可能
  • 手数料が無料

それぞれのメリットについて詳しく解説します。

各種相続手続で戸籍書類一式の提出が不要になる

法定相続情報証明制度を利用するメリットの一点目は、「各種相続手続で戸籍書類一式の提出が不要になる」という点です。このメリットを解説する前に、相続手続に必要な戸籍謄本について解説します。

(1) 相続手続に必要な戸籍謄本とは?

相続手続において最も大切な作業の一つに、相続人の確認作業(誰が相続人かを確認する作業)があります。相続人全員が揃わない遺産分割協議は無効となるため、誰が相続人かを確定しないと遺産分割協議を先に進めることはできません。

「相続人が誰かなんて、すぐに分かるじゃないか」と思われている方も多いですが、離婚・再婚があった場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合、被相続人に非嫡出子がいた場合などは、思わぬ人が相続人に該当する可能性もあるので、相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍を追っていく作業が必要不可欠です。

「被相続人の出生から死亡までの戸籍を追っていく作業」を行うためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せる必要があります(正確には、戸籍謄本、改正原戸籍謄本、除籍謄本が必要となるケースもありますが、この記事ではこれらをまとめて「戸籍謄本」といいます)。戸籍謄本は本籍地の役場で保管されているため、まずは被相続人が死亡した時の本籍地を特定し、その本籍地の役場に戸籍謄本を請求するところから作業を開始します。

戸籍は、一つの夫婦と姓を同じくする子を編成単位とするため、婚姻によって新しく作成されます。また、婚姻以外にも、平成6年以降に行われたコンピューター化によって改製されたり(改製の時期は自治体によって異なります)、昭和23年の新戸籍法によって改製されたりしています。作成や改製がされたあとの戸籍にそれ以前の情報は載りませんから、多くの場合は複数の戸籍謄本を取り寄せる必要があります。

例えば
昭和30年に出生し、昭和55年に結婚、令和3年に死亡したA氏の場合、①死亡時の戸籍謄本、②コンピューター化前の戸籍謄本、③婚姻前の戸籍謄本の計3つを最低限取り寄せる必要があります。

①だけだと、たとえばA氏が昭和50年に最初の婚姻をして子どもをもうけたあと離婚していたとするとその事実が分かりませんし、①と②だけだとA氏の兄弟姉妹が相続人となる場合に誰が相続人に該当するかわからないため、上記3つの戸籍謄本が必要です。本籍地の変更や離婚・再婚がない場合は戸籍謄本の数も少なくて済みますが、それらがあった場合は必要な戸籍謄本の数も増えます。

更に、A氏の兄弟姉妹が相続人となる場合、その方が存命か否かや、その方の代襲相続人を確認しなければならないため、兄弟姉妹の戸籍謄本も必要です。

(2) 戸籍謄本の発行には手数料がかかる

各種相続手続を行うためには相続人を確定するに足る戸籍謄本が必要ですから、各種相続手続を行うごとに文字どおり書類の束を法務局や金融機関へ持ち込まなければなりません。戸籍謄本の発行は有料であるため、複数の関係機関へ提出することを想定して複数部請求すると、発行手数料だけで結構な金額が必要です。

また、戸籍謄本の原本還付を請求すれば発行手数料は節約できますが、原本還付を受けようとする場合はあらかじめコピーを取って記名押印するなど、面倒な手続が必要です。

(3) 法定相続情報証明制度のメリット

この点、法定相続情報証明制度を利用して「法定相続情報一覧図の写し」の交付を受ければ、各種相続手続で戸籍謄本を提出する必要がなくなります。「法定相続情報一覧図の写し」の交付手数料は無料で、必要な枚数を何枚でも取得することができるため、必要な戸籍謄本の数が多い方には特にメリットのある制度です。

相続手続が早く進む

法定相続情報証明制度を利用するメリットの二点目は、「相続手続が早く進む」という点です。金融機関へ提出した戸籍謄本は返却(これを「原本還付」といいます)してもらうことが可能ですが、原本還付を受けるまでに時間を要する金融機関もあります。

例えば
百五銀行の場合、「お預かりした戸籍謄本および被相続人様名義の通帳等は、相続手続終了後お返しします」とあるため、戸籍謄本が一通しかない場合は百五銀行における手続が完了しない限り他の金融機関での手続を開始することができません。戸籍謄本を複数部取ればこの問題は解決しますが、その分だけ戸籍謄本の発行手数料が膨れあがってしまいます。

出典:百五銀行ホームページ

この点、法定相続情報証明制度を利用すれば、発行手数料無料で何枚でも「法定相続情報一覧図の写し」の交付を受けることができるため、「先に手続した金融機関から原本還付を受けるまで他の相続手続を開始できない」という事態は生じなくなり、結果として相続手続を早く進めることが可能となります。

不動産の相続登記申請にも使える

法定相続情報証明制度を利用するメリットの三点目は、「不動産の相続登記申請にも使える」という点です。被相続人が所有していた不動産の相続登記を申請するためには、添付情報として「登記原因証明情報」と「住所証明情報」が必要です。具体的には次の資料が必要ですが、「法定相続情報一覧図の写し」を提出すればこれらの資料の提出が不要になります。

必要資料
  • 被相続人の出生から死亡までの経過が分かる戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)または除籍全部事項証明書
  • 相続人であることが分かる相続人の戸籍全部(個人)事項証明書(戸籍謄抄本)
  • 住所証明情報

出典:法務局ホームページ

不動産の相続登記申請のために追加で戸籍謄本や相続人の住民票を収集しなくて済むのは、金銭面でも手間の面にもかなり助かります。

手続を税理士などの代理人に依頼することも可能

法定相続情報証明制度を利用するメリットの四点目は、「手続を税理士などの代理人に依頼することも可能」という点です。「法定相続情報一覧図の写しが便利なのはわかったが、法定相続情報証明制度に関する手続をすべて自分でやるのは面倒だし、できるか心配だ」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そういった方は、法定相続情報証明制度に関する手続を代理人に依頼することが可能です。代理人となれるのは、親族の他、一定の資格を持った専門職のみです。

例えば
たとえば、親族でも資格者でもない近所の人を代理人とすることはできないのでご注意ください。「一定の資格を持った専門職」とは、税理士の他、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士及び行政書士です。

法定相続情報証明制度に関する手続の依頼を受けた代理人は、申出書と一緒に委任状を登記所へ提出します。委任状のフォーマットと記載例は法務局のホームページに用意されています。

出典:法務局ホームページ

なお、戸籍謄本の取得を代理人へ依頼する場合も原則として委任状が必要ですが、「一定の資格を持った専門職」が職務遂行のために取得する場合は委任状がなくても戸籍謄本を取得できる制度(これを「職務上請求」といいます)があるため、これらの専門職に手続を依頼する場合は、戸籍謄本を取得してもらうために委任状を書く必要はありません。

手数料が無料

法定相続情報証明制度を利用するメリットの五点目は、「手数料が無料」という点です。ここまで「法定相続情報一覧図の写し」の発行手数料は無料と紹介しましたが、「写しの交付は無料でも最初の手続には行政手数料が必要なんでしょ?」と思われている方も多いと思います。

ありがたいことに、法定相続情報証明制度の利用に手数料は必要ありません。手続を行うにあたって必要な戸籍謄本の交付手数料や、手続を郵送で行う場合の切手代は必要ですが、制度の自体は無料で利用できます。

メリットのまとめ

以上、法定相続情報証明制度のメリットについて解説しました。相続関係手続の回数や必要な戸籍謄本の数が多いときは、法定相続情報証明制度を利用することによって手間や費用を大きく削減することが可能です。被相続人の預貯金口座の数が多かったり、親族関係が複雑だったりした場合は、ぜひ利用を検討されることをおすすめします。

法定相続情報証明制度のデメリット

次に、法定相続情報証明制度のデメリットについて解説します。法定相続情報証明制度のデメリットは次のとおりです。

デメリット
  • 日本国籍を有しない場合は利用できない
  • 手続を代理してもらう場合は費用が必要
  • 戸籍書類一式の提出をする場面が少ない場合は作成の手間が回収できないここにコンテンツを記載

それぞれのデメリットについて詳しく解説します。

日本国籍を有しない場合は利用できない

法定相続情報証明制度のデメリットの一点目は、「日本国籍を有しない場合は利用できない」という点です。法定相続情報証明制度は被相続人または相続人のいずれか一人でも日本国籍を有しない方がいる場合は利用することができません

これは、法定相続情報証明制度の利用に戸籍謄本が必要であるところ、日本国籍を有しない人については「戸籍」が作成されないためです。

例えば
アメリカ人男性のA氏と日本人女性のB氏が結婚した場合は、A氏について戸籍は作成されず、B氏を筆頭者とする新しい戸籍が作成されます。

この状態でA氏が死亡したとしても、A氏の戸籍謄本はありませんから、法定相続情報証明制度を利用することもできません。さらに、死亡時点で日本国籍だったとしても、被相続人が日本に帰化した人である場合は「出生から死亡まで」の戸籍がありませんから、法定相続情報証明制度は利用できないので注意が必要です。また、相続人のうちに一人でも日本国籍を有しない人がいる場合は利用できないという点について、特に相続人が被相続人の配偶者と兄弟姉妹というケースは注意が必要です。

被相続人と兄弟姉妹が疎遠だった場合、被相続人の配偶者が知らない間に被相続人の兄弟姉妹の誰かが日本国籍を離脱している可能性もあります。日頃から親族間のコミュニケーションを取っているのであれば問題ないでしょうが、そうでない場合はご注意ください。

手続を代理してもらう場合は費用が必要

法定相続情報証明制度のデメリットの二点目は、「手続を代理してもらう場合は費用が必要」という点です。手続を代理してもらう場合の手数料は概ね3万円から10万円程度が相場です(相続関係が複雑な場合はもう少し金額が必要なケースもあります)。

戸籍書類一式の提出をする場面が少ない場合は作成の手間が回収できない

法定相続情報証明制度のデメリットの三点目は、「戸籍書類一式の提出をする場面が少ない場合は作成の手間が回収できない」という点です。法定相続情報証明制度を利用するためには手間がかかります。

相続によって解約しなければならない預貯金口座が多かったり相続関係が複雑だったりする場合はそうした手間を回収することもできますが、預貯金口座が一つで相続関係もシンプルな場合は、法定相続情報証明制度を利用しない方がトータルの手間が減るという可能性も大いにあります。

デメリットのまとめ

以上、法定相続情報証明制度のデメリットについて解説しました。

相続関係手続の回数や必要な戸籍謄本の数が少ないときは、法定相続情報証明制度を利用することによって削減できる手間や費用は限定的で、むしろ法定相続情報証明制度を利用するための手続の手間の方がかかることもあるので、利用は慎重にご検討されることをおすすめします。

法定相続情報証明制度の利用手続

以上、法定相続情報証明制度のメリットとデメリットを解説しました。最後に、法定相続情報証明制度の利用手続の流れを簡単に紹介します。

参考:法務局ホームページ

(1) 必要資料を収集します

まずは、手続を行うにあたって必要となる書類を収集します。いかなる場合でも必要な書類は次のとおりです。

必要書類
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本(抄本)

3つの書類はいずれも市区町村の役場で取得することができます。

(2) 「法定相続情報一覧図」を作成します

次に、法定相続情報一覧図を作成します。法定相続情報一覧図は法務局側で作成してくれるわけではなく、手続の申出人が自ら作成する必要があります(手続を代理人に依頼した場合はその代理人が作成します)。法定相続情報一覧図のフォーマットは法務局のホームページにあります。

法定相続情報一覧図を作成するにあたっては、次の2点にご留意ください。

  1.  被相続人との続柄について、戸籍に記載されている表記(「長女」「二男」「養子」など)ではなく単に「子」と記載することも可能ではありますが、「子」と記載してしまうと相続税申告で法定相続情報一覧図を使うことができなくなるため、戸籍と同じ表記にすることをおすすめします(相続税の申告で使えないのは、相続税の基礎控除額の計算などで実子と養子を区別する必要があるところ、単に「子」と書かれるとその人が実子か養子かがわからないためです)
  2.  相続人の住所を記載するか否かは任意ですが、記載しないと不動産の相続登記申請時などに相続人の住民票提出の省略ができなくなるため、相続人の住所を記載することをおすすめします

出典:法務局ホームページ

(3) 申出書を記入し、収集・作成した資料とともに登記所へ提出します

最後に、手続を行うための申出書(フォーマットと記入例は法務局のホームページにあります)に必要事項を記入し、収集した資料と作成した法定相続情報一覧図とともに登記所へ提出します。なお、申出書と資料の提出は郵送でも可能です。法務局が遠い方や法務局へ行く時間が取れない方は、郵送での手続をおすすめします

まとめ

法定相続情報証明制度は全ての方にメリットがある制度ではないため、被相続人の財産や親族関係を踏まえて利用するか否かを判断することが重要です。利用するか否かの判断に悩んだときは、お近くの税理士などの資格者代理人にぜひご相談ください。

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ABOUT US
税理士 友野祐司
税理士法人レガシィ勤務を経て2011年に響き税理士法人に入社、相続税専門の税理士として、横浜を中心に相続税申告のサポートをを行っています。どこよりも、素早い対応を心がけておりますので、少しでも相続税に関して、不安や疑問がありましたらお気軽にご相談ください。