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相続税6項の適用で納税者が敗訴?最高裁における相続税6項の適用事例を紹介

相続税6項(財産評価基本通達6項)は、通達に則った適切な財産評価をおこなった場合でも著しく不適当と認められる場合は国税庁長官の指示によって評価をおこなうというものである。

みなさんは「相続税6項」をご存知でしょうか。国税庁の懐刀とも呼べるこの通達は正式名称を「財産評価基本通達 第1章総則6項」と呼び、相続や贈与の際などにおける財産評価の方法を定めた通達の1つとなっています。

通常であれば各種財産を財産評価基本通達にもとづいて評価しますが、場合によってはその評価方法が不適切であると判断される場合があります。そういった場合の評価方法について定めているものが「財産評価基本通達 第1章総則6項」であり、令和4年の4月におこなわれた裁判においてこの通達が適用されたことで大きく注目を浴びました。

そこで今回は「財産評価基本通達6項」の適用にあたり、

  • どういった経緯で
  • 適用されたことで納税額にどのような差が生じたのか

など、実際の事案を確認しながら解説していきます。

財産評価基本通達6項とは

財産評価基本通達6項とは財産評価基本通達の1つであり、「当該通達に則った財産評価をおこなった場合でも著しく不適当と認められる場合は国税庁長官の指示によって評価をおこなう」というものです。

この通達は相続税や贈与税の計算をおこなう際に、財産評価基本通達による不適切な評価を防ぐためでもあり、過度な節税対策や脱税行為を防ぐための通達でもあります。

たとえば
財産評価基本通達にもとづいて「A」という方法で評価した金額が1,000万円だった場合、税務署側が1,000万円の評価は不適切だからだから「A」ではなく、「B」の評価方法で評価しなさいと指示ができるということになります。

つまり、納税者側は「財産評価基本通達に基づいて評価した」としても、さまざまな観点から評価額が不適切だと判断された場合は、国税庁の指示に則った方法で評価しなければならないということになります。

財産評価基本通達6項の適用により2億円近くの追徴課税が発生した判例もある!?

財産評価基本通達6項は国税庁の懐刀と呼ばれることもあり、実務においては頻繁に適用されるものではありません。そのような中で令和4年の4月の事案において、財産評価基本通達 第1章総則6項が適用されることになったことで、一躍注目を浴びることになりました。

まずは、今回の事案の概要から確認していきましょう。

事案の概要

  • 対象税目:相続税
  • 対象者:平成24年6月に94歳で死亡
  • 対象物件:マンション
  • 取得価額:13億8,700万円
上記におけるマンションの財産評価について、相続人は「路線価方式」に則り、評価額を約3億3,000万円としました。路線価が設定されている地域では路線価方式で評価することが一般的であるため、決して間違った方法で財産評価をおこなったとは言えません。

しかし、税務署から指摘された点はマンションの「取得価額」および「時価」と、相続人が財産評価をおこなった金額の差です。

  1. 相続人による評価額:3億3,000万円(路線価方式)
  2. 取得価額:13億8,700万円
  3. 税務署による評価額:12億7,300万円(不動産鑑定)
①の金額が②・③の金額とあまりにも差額があったため、税務署側は路線価方式による評価が不適切と判断し、不動産鑑定による価額にて評価し、相続人に対して2億円以上の追徴課税処分をおこないました。この追徴課税処分に対して相続人が提訴をおこなったことが、今回の事案の概要です。

最高裁判所の判決は?

最高裁判所は財産評価基本通達6項に基づき「特別の事情がある場合には路線価以外の合理的な方法で評価することが許される」と指摘し、税務署がおこなった不動産鑑定の評価が適切であると判決を下しました。

また、今回は評価額との差があまりにも大きかったことだけでなく、その他にもポイントになったことがいくつかありました。これらのチェックポイントも確認していきましょう。

チェックポイント①不動産の購入が相続税対策として直前におこなわれたこと

過度な節税目的の相続税対策は税務署から指摘を受ける可能性が高くなるため注意が必要です。

今回の事案で指摘を受けたマンションを取得したのは、相続開始の3年5カ月前から2年6カ月前であり、税務署側はこれらの観点から「節税目的の不動産取得」とみなしました。亡くなる直前に高額な不動産投資をおこなうことは、税務署の目にとまりやすくなるため気をつけましょう。

チェックポイント②相続発生から1年以内に売却

相続が発生した後に短期間で不動産を売却することも注意が必要です。

短期間での売却についても税務署の目にとまってしまうため、売却するのであれば一般的に税務調査がおこなわれる相続後2年から3年後を目安におこなうことをおすすめします。

チェックポイント③時価と評価額に大幅な乖離があった

自分たちで計算した評価額と時価の間に大きな差額がある場合も注意が必要です。

今回の事案では約4倍近くの乖離があったため、結果として財産評価基本通達6項の適用を受けることになりました。このように時価と評価額との間に大幅な乖離がある場合などは、評価方法を慎重に検討していく必要があります。

財産評価をおこなう際に注意したい4つの判断基準

財産評価基本通達6項は今回の事案のような「過度な節税対策」に対して適用されるものであり、頻繁に適用されるわけではありません。

しかし、過度な節税対策という認識がない場合においても評価方法が不適切であれば指摘を受ける可能性があります。そのため、財産評価をおこなう際には、さまざまな観点から適切な評価方法を検討していく必要があります。

財産基本通達に基づいて財産評価をおこなった場合でも、今回の事案のように指摘を受けるケースがあることから、評価方法の判断は非常に複雑であり困難であるといえます。

しかし、国税庁のホームページには財産評価基本通達6項が適用される判断基準のようなものが存在します。具体的な条件ではなく抽象的な表現もありますが、論叢に掲載されている論文に記載されている次の4つの項目が判断基準になると考えられています。

財産評価基本通達6項が適用される判断基準
  1.  評価通達による評価方法を形式的に適用することの合理性が欠如していること
  2.  他の合理的な時価の評価方法が存在すること
  3.  評価通達による評価方法に従った価額と他の合理的な時価の評価方法による価額の間に著しい乖離が存在すること
  4.  納税者の行為が存在し、当該行為と③の「価額の間に著しい乖離が存在すること」との間に関連があること
引用:財産評価基本通達の定めによらない財産の評価について-裁判例における「特別の事情」の検討を中心に-|国税庁

ただし、上記は法令や通達によるものではないため、1つの判断基準に過ぎません。また、上記の①~④においては抽象的な基準となっているため、実務上の判断基準として判断が難しくなるケースも想定されます。

そのため、実務の対応としては今回の事案のような実際の事例を参考にしながら、

  • 時価と評価額の間に大きな乖離がないか
  • 節税対策が過度なものではないか
  • 法令や過去の事例などに基づく評価方法であるか
など、さまざまな観点から慎重に処理を検討していくことが重要になるといえます。

まとめ

財産評価については従来通り財産評価基本通達に定められた方法でおこなう必要があります。しかし、今回の事案のような過度な節税対策については、財産評価基本通達6項の適用リスクを考慮していく必要があります。

生前における相続税対策については被相続人や相続人にとって非常に大切なことです。そのため財産評価基本通達6項の適用リスクを考慮しながら最大限の節税対策をおこなうことが重要といえます。

しかし、これらの判断や相続税の申告については財産評価基本通達6項の適用リスク以外にも、さまざまな観点から判断すべきポイントや気をつけるべきポイントがあります。そのため、生前における相続税対策や相続税の申告について、少しでも不安がある場合は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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ABOUT US
税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。