「相続税の申告は無事に終わったけど、もし間違いがあったら…?」
「追徴課税って実際いくらぐらい払うことになる?」
相続税の申告を終えた後も、こういった不安を感じている方は意外と多いのではないでしょうか。
実は、相続税の追徴課税は思っているよりも身近な問題なんです。
税務調査を受けた人の約9割に何らかの申告漏れが見つかっているというデータもあります。
では、追徴課税としては結局、いくら払うことになるのでしょうか?
答えは、ケースによって大きく異なりますが、最も重い場合で本来の税額の4割ほどが上乗せされます。
ただ、追徴課税は正しい知識があれば避けることができます。
また、万が一ミスに気づいた場合でも、早めに対処すれば追徴課税を最小限に抑えることが可能です。
この記事では、追徴課税について知っておくべきポイントをわかりやすく解説していますのでぜひご参考にしてください。
目次
この記事の監修者

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
追徴課税とは?相続税で追加納税が必要になる仕組み

追徴課税とは、本来納めるべき税額に対して、申告や納税が適切に行われなかった場合に課される追加の税金です。
相続税においては、大きく分けて2種類。
1.本来の税額との差額分
2.ペナルティとしての加算税
例えば、本来1,000万円の相続税を納めるべきところ、600万円しか申告していなかった場合、差額の400万円に加えてペナルティとしての加算税が課されることになります。
追徴課税の種類

相続税の追徴課税は全部で4つあります。
それぞれの税金は、内容を正しく理解すれば、リスクや金額を軽減することができます。知らないうちに思わぬ課税をされていたということがないように、それぞれの税金について、どのような時に発生するのか解説したいと思います。
無申告加算税
納税者が期限内に申告をしなかった場合、課税額に無申告加算税を上乗せして納付しなければいけません。
納税者が知識不足により相続税の発生を認識していなかった場合でも、無申告加算税が課されます。申告期限を過ぎてから自分で申告をした場合でも、無申告加算税が課されます。
なお、無申告加算税は申告した時期によって税率が異なる点にも注意が必要です。
また罰則の意味合いから、過去5年以内に重加算税や無申告加算税を受けている場合は、さらに税率が高くなるため、同じ過ちを繰り返さないよう気を付けましょう。
なお税務署からの指摘前に納税することで、税率は5%にまで下がります。
ちなみに、期限を守れなかった具体的な理由があり、それが正当なものだと認められれば、無申告加算税は0%にすることができます。
正当な理由としては、例えば火災やウィルス災害などに見舞われた場合が挙げられます。
重加算税
無申告加算税追徴課税の中で最も重い罰則が重加算税です。
これは、納付すべき相続税の額を意図的に減らそうとした場合に課される加算税です。納税額を減らすために、所得を隠したり、経費を水増ししたりしたケースなどがあてはまります。
悪質な行為の場合、納税者は本来納めるべき税額よりも高い税額を納めなければなりません。特に、以下のようなケースは追徴課税の対象となります。
- 財産に関わる書類の改ざんや偽造の場合
- 相続財産のを隠ぺいした場合
- 取引先に会計書類の改ざん・偽造を強要した場合
- 相続人が嘘をついて取引先などに真実とは違うことを行わせている場合
- 隠し財産・架空責務であることを知りながら、確定申告をする場合
これらの行為は悪質とみなされ、35%または40%の重加算税が課されます。
延滞税
延滞税は期限までに税金を納めなかった場合に発生します。
また、支払期日を過ぎても納税額が足りない場合にも発生します。延滞税は納期限の翌日から日割りで計算されるため、計算が複雑です。
納税が遅れれば遅れるほど延滞税が増えるので、納税が必要だとわかったら、できるだけ早く税理士などに相談して納税することをおすすめします。なお計算された結果、金額が1万円未満の場合は、延滞税はかかりません。
過少申告加算税
相続税を一旦納めたものの、申告額が正しい課税額より少なかったことが判明した場合、正しい納付額に過少申告加算税が上乗せされます。
過少申告加算税が課されるケースは、2種類あります。
- 過少申告が単純な計算ミスや勘違いによるものであった場合
- 課税価格を意図的に過少に申告した場合や、控除額を過大に申告した場合
いずれの場合も、納税者は追加で税金を納めなければなりません。前者のケースでは、過少申告加算税がかかります。後者のケースでは、重加算税も追加されます。
いつ・いくら支払ったかによって税率が変わるので、最終的にいくら納税すべきか税理士に計算してもらうのが無難です。
相続税の税務調査で追徴課税が課されるケース

税務調査で追徴課税が発生するケースは、意図的な脱税だけではありません。
実は、善意の申告ミスや知識不足による申告漏れが大半を占めています。
ここでは、特に指摘されやすい3つのケースを解説します。
家族が知らない財産がある場合
家族でも知らない相続財産は意外と多く、以下のような財産は確定申告で申告されないことが少なくありません。
- 遠隔地(海外を含む)で取得した不動産
- ネットバンクやネット証券の口座
- 生命保険
- 外国金融資産
- 暗号資産
これらはいずれも見つけにくい資産であるため、意図せず起こってしまったことであっても、申告漏れが発生する可能性が高くなります。
財産の評価が誤っている場合
不動産や非上場株式の相続税評価額の算出は難しく、本来の評価額より低くなってしまうケースもあります。
自分で計算した評価額に不安がある場合は、税理士に相談して評価し直してもらうとよいでしょう。
生前贈与がある場合
生前贈与も加算税の対象になりやすく、贈与が成立していなかったり、相続財産に加算されていなかったりするケースもありえます。
どちらも延滞税や無申告加算税がかかるので、以下の点に注意しましょう。
- 贈与契約書の存否
- 相続前3年以内に行われた贈与(相続財産に加算する必要があります。)
- 名義預金
贈与と判定されていない財産は相続財産であり、被相続人の財産として申告する必要があります。
口座名義人と実際の預金者が異なる預金は、「名義預金」と呼ばれます。子・孫・配偶者名義の預金口座は、実際の預金者が被相続人である場合、相続財産に含める必要があります。
特に名義預金は指摘されやすいので、名義人に財産が渡ることが予想される場合は、贈与契約書を作成する必要があります。
追徴課税の具体的な計算例(相続税)

追徴課税がかかると言われても、実際にいくら払わなければならないのか見当がつかない方も多いのではないでしょうか。ここでは、それぞれのケースでどのように計算されるのか、実例を交えて解説します。
実際に課税される場合の違いを理解し、解決に向けて行動できるよう、実例を参考にしてください。
過少申告加算税の計算方法
過少申告加算税は「追加で納めるべき額×税率」で計算できます。
税率は相続税の修正申告時期で変わります。正しい納付税額が判明した時点で速やかに納付することが望ましいです。
申告時期 | 税率 |
---|---|
税務調査通知前 | 0%(正しい申告をした時点での課税額のみ納付する必要があります。) |
税務調査の通知後から更正の予知を知る前 | 期限内に申告した税額の5% |
更正の予知以降 | 期限内申告税額×10% |
調整すべき金額が50万円を超える場合、超過部分に対して+5%の税率で課税されます。ただし、期限内に50万円以上の申告があれば、税率上乗せの対象は申告額との差額で済みます。
課税対象額と期限内申告額との差額=90万円
加算税率がかかる部分=90万円-70万円=20万円(※70万円>50万円)
過少申告加算税=70万円×10%+20万円×15%=10万円
無申告加算税の計算について
無申告加算税は「課税額×税率」で計算することができます。税率については、確定申告をする時期によって異なります。
申告時期 | 税率 |
---|---|
税務調査通知前 | 5% |
税務調査通知後から更正の予知まで | 10% |
更正の予知後 | 15% |
税務調査通知後は課税額が50万円を超える部分に対して+5%の追徴課税が行われます。
加算税が発生する部分=200万円-50万円=150万円
無申告加算税=50万円×15%+150万円×20%=37万5千円
無申告加算税は、納税者が自主的に申告書を提出した場合と、税務調査で発覚した場合で金額が大きく異なります。本当に申告する必要がなかったのかどうかがわからない場合は、税理士などの専門家に依頼して確認してもらうのがよいでしょう。
延滞税の計算方法
延滞税の計算方法は複雑です。まず、基本的な計算方法は、「期限を超えて納める税金×延滞税率×日数÷365」です。
延滞税率は、相続税が延滞している期間によって異なります。
期間 | 税率 |
---|---|
支払期日から2ヶ月以内 | 「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い方とする。 |
期限後2ヶ月超 | 「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い方。 |
(延滞税特例基準割合は、いつでも改定することができます。2021年1月1日以降は年率8.8%、2022年1月1日から12月31日までは年率8.7%となります。) |
期間 | 税率 |
---|---|
2ヶ月まで | 200万円×7.3%×61日÷365=24,400円 |
2ヶ月後以降 | 200万円×9.8%×139日÷365≒74,641円 |
合計(24,400円+74,641円=99,041円)【延滞税=99,000円(100円未満切り捨て)】 |
重加算税の計算
重加算税は期限内に申告した税額と本来の課税対象額×税率で計算できます。
税率は過少申告なら35%・無申告なら40%に達します。
申告の種類 | 支払額 |
---|---|
過少申告の場合 | 重加算税の課税額=140万円
支払額=400万円+140万円=540万円 |
無申告の場合 | 追加納税額=160万円
支払税額=400万円+160万円=560万円 |
追徴課税の注意点

この章では相続税の申告漏れによる追徴課税が発生した場合の納税方法など、注意点を解説します。
税金の支払いは現金のみとされている
通常の相続税申告の場合、現金での納税が困難な方は、現金の代わりに「物納」という方法を利用することができます。ただし、追徴課税の納付は現金のみで、現物支給はできません。
また原則として一括納付となり、分割納付はできません。
支払いが滞ると、最終的に財産の差し押さえにつながる
追徴課税を支払わない場合、まず督促状が届き、次に差押え通知が届きます。それでも支払わない場合は、財産が差し押さえられます。
差し押さえられるのは、給料(会社員や公務員)・売掛金(会社)・金融資産(預貯金・証券口座)・不動産・動産(車など)・保険金の解約返戻金などです。
自己破産では免責されない
通常の債務(借金)は、自己破産の申し立てをして免責の決定がなされると、支払う必要がなくなります。しかし、税金は「非免責債務」であるため、自己破産しても免責されず、支払わなければなりません。つまり、自己破産をしても、追徴課税を免れることはできないのです。
相続人全員が追徴課税について「連帯責任」を負う
追徴課税された税金は、基本的に相続を受けた人が支払うことになります。しかし、相続税には「連帯納付義務」というルールがあります。
各相続人は「相続によって得られた利益の額」の範囲内で、相続税を連帯して納める義務があるのです。連帯納付義務は追徴課税にも適用されるため、納税義務のある相続人が納税しない場合、他の相続人に納税を求めることがあります。
その場合、相続人同士の関係が大きく悪化するため、注意が必要です。
相続税の追徴課税は事前対策で回避できる
相続税の追徴課税は、最大で本来の税額の40%、さらに延滞税も加わると、想像以上に高額になることがお分かりいただけたかと思います。
しかし、追徴課税は基本的に「知らなかった」では済まされません。
税務署は相続人の預金口座の動きや、被相続人の過去の収入まで詳細に調査します。
特に名義預金やタンス預金、生前贈与の取り扱いは、専門知識がないと正しく判断することが困難です。
追徴課税を避ける最も確実な方法は、最初から正確な申告を行うことです。
難しい場合は、相続税申告の経験豊富な税理士に依頼することで、申告漏れのリスクを大幅に減らすことも可能です。
もちろん、すでに申告を済ませた方でも、不安が残る場合は早めに修正申告を行うことで、加算税を最小限に抑えることが可能です。
私たち「響き税理士法人」では、相続税申告はもちろん、税務調査の立会いや修正申告のサポートも行っています。
「申告内容に不安がある」「税務署から連絡が来た」という方は、手遅れになる前に対応することをおすすめします。
初回相談は無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
相続税のお悩み一緒に解決しましょう
お気軽にご相談ください!