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現金・預金が多い人におすすめの相続税対策8選

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将来の生活費や緊急の時のために、一定額の現金を自宅に保管している方も多いと思います。この現金は立派な相続財産であり、相続税の対象となります。

さらに、現金は他の資産に比べて相続税が大きくかかる可能性がある資産でもあります。現金は通帳と違い、すぐに全金額が目に見えて分かるものではありません。相続人は現金を数えて、相続税の申告書に記載しなければなりませんが、「申告しなくてもバレないのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、現金は税務調査でよく見られる項目であり、きちんと申告しないとペナルティを受ける可能性があります。税務調査で指摘されないためにも、現金がたくさんある場合の相続税対策についてこの記事で詳しく解説していきます。

相続税をかけずに財産を承継する8つの方法

TAXと書かれた積み木

生前贈与には本来贈与税がかかりますが、この贈与税を控除する制度や特例が多数あります。

これらを利用することで、贈与税をかけずに生前贈与を行うことも可能です。この章では贈与税が非課税となる8つの贈与形態を紹介します。ご自身の場合、どの形態が利用できそうかを確認してください。

1.  年間110万円の基礎控除額内で贈与

贈与税の基礎控除があります。贈与税は、1人あたり年間110万円までの贈与については非課税です。

たとえば
130万円を贈与した場合、「130万-110万=20万円」なので、20万円にしか課税されないのです。

逆に言えば、110万円以下である100万円を贈与しても贈与税はかからないということです。これを利用し、毎年110万円以下の贈与を続けていれば、多額の財産を贈与税ゼロで贈与することが可能です。

たとえば
3200万円の預貯金を1600万円ずつ子供2人に贈与する場合、毎年100万円ずつ贈与するとすると、3,200万円÷(100万円×2名)=16年

つまり、16年かければ、贈与税ゼロで全額を子どもに残せるのです。

この節税方法は「暦年贈与」と呼ばれ、実際に多くの人が利用しています。ただし、注意すべき点もあります。

贈与者(親など)が死亡した場合、死亡後3年以内に贈与された財産は相続財産とみなされ、相続税が発生します。それらを排除できるのであれば、基本控除を使った暦年贈与が実務上最もシンプルに節税できる方法です。

2.  住宅取得等資金の贈与の特例

親や祖父母が住宅購入の資金援助をした場合、親や祖父母から子や孫への1,000万円までの贈与については、特別控除が適用されるという制度があります。

これは「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」と呼ばれ、省エネ・耐震・バリアフリーの住宅には特に大きな非課税枠が設けられているのが特徴です。子供や孫が家を建てたいと言っているので、せめて費用の半分くらいは援助してあげたいとお考えの方は、ぜひこの控除を検討してみてはいかがでしょうか。

3.  教育資金の一括贈与

30歳未満の子や孫の教育資金として贈与する場合は、1,500万円まで非課税枠が追加されます。つまり、1,610万円までが非課税となります。

教育資金一括贈与の特例を利用した贈与では、専用の口座を開設し、「教育資金」であることを示す領収書やレシートを金融機関に提示して、利用の都度、引き落としを行います。教育資金として認識されているのは、保育園・幼稚園の保育料、中学校・中学校・大学の入学金・授業料などの学校等に対する資金です。塾や習い事がOKな場合とNGな場合があるので、適宜確認しましょう。

なお、教育資金一括贈与制度で贈与された資金を教育以外の目的に使用した場合や、贈与者が30歳に達した時点で余剰金が残っている場合は、贈与税の対象となりますのでご注意ください。

4.  結婚・子育て資金の一括贈与

20歳以上50歳未満の子や孫に結婚・子育て資金を贈与する場合、非課税枠に最大1,000万円を上乗せすることができます。つまり、1,110万円までが非課税となるのです。教育資金と同様、この免除を受けた贈与の使用目的は限定されているため、特別な口座を開設し、領収書や使用証明書を提出する必要があります。

結婚資金は、結婚に伴う婚礼行事・結婚費用・引越し費用に適用されます。結婚式・結婚指輪・ハネムーン費用は対象外です。

子育て資金は、不妊治療・出産費用・産後ケア・子どもの医療費・保育料(小学校就学前まで)が対象です。育児費用などは対象外です。

また、この特別控除には、以下のルールが適用されます。

特別控除のルール
  • 結婚資金として使えるのは日本円で300万円まで(残りは子育て資金)。
  • 贈与を受けた人が50歳になると、その残高に対して贈与税が課税されます。
  • 贈与した人が亡くなると、残額があれば相続財産に加算されます。

5.  夫婦間贈与の特例

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産の購入資金や不動産そのものを贈与された場合、最高2,000万円の配偶者控除が適用されます。これを夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除といいます。

配偶者控除
  • 贈与した配偶者は、贈与した年の翌年3月15日まで、この資金で取得した居住用不動産に実際に居住し、その後も居住し続ける必要があります。
  • 贈与税は控除されますが、不動産取得税と登記費用は通常通り支払う必要があります。
  • 配偶者控除は同じ配偶者間で一度しか使えません。
  • 相続時精算課税との併用はできません。
  • 暦年贈与110万円非課税制度との併用が可能です。

ただしこの控除は、不動産そのものを配偶者に譲渡する場合にはメリットがありますが、購入資金を譲渡する場合にはあまり意味がないとも言われています。

夫婦の場合、配偶者の一方が死亡した場合の相続税にも配偶者控除が適用され、1億6000万円という大きな控除額があるからです。つまり、わざわざ生前に2,000万円を贈与しなくても、死後1億6,000万円分まで非課税で財産を受け継ぐことができるのです。

自分が死ぬ前に、誰かにお金を渡して家を買ってもらう必要があるケースはあまりないでしょうから、この選択肢を取る価値があるかどうか、よく考える必要があります。

6.  日頃の生活費や教育費としての贈与

特別控除や控除を利用する以外にも、法律で認められた範囲内で非課税の贈与を行う方法があります。日常生活費や教育費として贈ることです。

そもそも、子や孫を扶養する義務のある両親や祖父母などは、当然、生活費や教育費などの費用を負担します。扶養義務の適切な履行のために必要な金銭であるといえるでしょう。子や孫の扶養義務者からの子や孫への生活費・教育費のための贈与は非課税とされています。

ただし、多額の金銭を贈与した場合は、日常の扶養範囲を超えたと判断され、贈与税の対象となるので注意が必要です。その時々に必要なものを必要なだけ与えることにご注意ください。

7.  相続時精算課税制度

相続時精算課税制度と呼ばれる制度があります。この制度は、2,500万円までの生前贈与は特別控除を受けられ、その代わり、相続時には贈与額に対して相続税を納めるというものです。

この制度は、生前贈与にかかる贈与税を相続後に繰延する制度と言えます。

相続時精算課税制度
  • 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与に2,500万円までの特別控除が適用されます。
  • 同じ父母や祖父母から贈与を受けた場合、2500万円の限度額に達するまでは、何度贈与を受けても特別控除の対象となります。
  • 2,500万円を超える贈与には20%の贈与税が課されます。
  • 贈与を受けた人(親など)が亡くなった場合、2,500万円までの生前贈与の額を相続財産に加算して相続税を計算します。
  • 相続税は、計算された相続税額から生前に行われた贈与のうち2,500万円を超える額に対して支払った贈与税20%を差し引いた額を納付します。
  • この制度を利用した場合、暦年贈与制度は使えなくなります。

また、相続時精算課税制度を選択した贈与者が、贈与者以外の者から相続時精算課税制度を利用して贈与された財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税率を用いて贈与税額を算定します。

8.  生命保険

相続税を計算する際、法定相続人の数×500万円に相当する部分が非課税となる「生命保険料控除枠」というものがあります。

現金をそのままにしておくのではなく、生命保険の非課税枠を利用して生命保険に加入することで、相続税額を減らすことが可能です。

現金の生前贈与の注意点

一万円の札束

ここまで非課税で生前贈与を行う方法をいろいろと紹介しましたが、これらは100%非課税にできるというわけではありません。注意して贈与を行わなければ、贈与税が課税されるリスクもあります。

そこで、本章では、生前贈与の際の注意点を3つご紹介します。

生前贈与の成立要件

まず、生前贈与が法律上「贈与」と認められるためには、次の2つの条件を満たす必要があります。

贈与と認められる条件
  1.  財産を与える人と財産を受け取る人の両方が、それが贈与であることを認識し、財産を「与える」「受け取る」ことに同意

祖父が0歳の孫に財産を「贈与」したいと考えたとします。しかし、その孫はまだ幼いため、その「贈与」を認識できず、「受け取る」ことに同意していません。正式に親を代理人とする契約書があれば、贈与は可能ですが、そうでない場合は贈与として認められません。

また、親が子供に内緒で子供名義の口座に入金し、それを贈与であると考えたとしても、子供がその事実を知り、同意しなければ贈与とはなりません。

  1.  財産を受け取った人が自分の好きなように利用することができる

両親や祖父母が子供名義の口座にお金を預けていたとしても、口座の通帳やカードが子供に渡されていないなど、財産を受け取る人の手元にない場合は「贈与」とは認められません。

これらの2つの要件を満たさない場合、「贈与」として扱われず、控除が適用されなかったり、贈与者の死後に相続税が課されたりすることがあります。これを避けるためには、贈与を行う際にお互いが認め合い、合意した上で、現金や預貯金などの資産の管理を贈与を受ける側に委ねるようにしましょう。

生前贈与の証拠

現金を手渡しで贈ったとします。この場合、贈った形跡は残りません。この状態で税務署に調査されると、贈与が基礎控除内であることを証明できず、贈与税を支払うことになる可能性があります。

そうならないためにも、贈答品の証明書は必ず保管しておくようにしましょう。

たとえば
現金を渡す代わりに銀行振込をすれば、誰が・いつ・いくら渡したのかが記録されることになります。

さらに良いのは、贈与の契約書を保管しておくことです。これは贈与が行われたことの確実な証明となり、税務調査の際にも明確に説明することができます。

生前贈与加算

贈与した親や祖父母が亡くなった場合、死亡日前3年以内に行われた生前贈与は相続財産とみなされ、相続税が加算されるルールになっています。

たとえば
親から子へ暦年で80万円の贈与があり、親が亡くなった場合、直近3年間の贈与額である80万円×3年=240万円が相続税の対象となるのです。

したがって、シニアが生きている間に贈与を考えている場合は、できるだけ早く始めることをお勧めします。

まとめ

相続税対策の一環としての生前贈与では現金の手渡しは推奨していません。現金の授受が行われていても、税務署の調査によってその事実が判明し、場合によっては暦年で贈与が認められず、贈与税を支払わなければならないことがあるからです。どうしても現金を贈らなければならない場合は、毎年贈与契約書を作成したり、贈与者が一旦銀行口座に現金を預けるなどして、贈与の事実と金額を周知徹底させるようにしましょう。

ここまで説明して来た通り、贈与税には、基礎控除に加えて、いくつかの特例があります。相続税対策として生前贈与をお考えの方は、この特例も活用できないか検討されてはいかがでしょうか。

相続税について疑問や不安をお持ちの方は、税理士などの相続の専門家に相談されることをお勧めします。相続のルールや税金の手続きについて、わかりやすくアドバイスしてくれるはずです。

響き税理士法人のスタッフ

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ABOUT US
税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。