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相続税の「更正の請求」とは?後発的理由による場合の期限についても解説

そもそも「更正」とは

更正とは申告をおこなった内容や、登記申請時における内容に誤りがある場合に、税務署や登記官からその誤った内容を改める手続きのことをいいます。更正は納税者などにおける「課税の公平」を図るためにおこなわれるものであり、納税者がおこなった申告の内容と課税庁で調査した結果が異なる場合に発生します。

また、状況に応じて更正は下記の2つの種類に区分されます。

更正の種類
  • 既におこなった申告税額よりも税額を増加させる場合・・・増額更正
  • 既におこなった申告税額よりも税額を減少させる場合・・・減額更正

更正の請求とは

更正の請求とは上記の「更正」を請求するための手続きのことをいいます。具体的に更正の請求では「本来納めるべき税金よりも多くの税金を納めている場合」に行う手続きのことをいい、更正の請求をおこなうことで納める必要がなかった金額を還付してもらうことができます。

たとえば
当初おこなった相続税の申告において納税額が「100万円」となっていたが、相続税申告後に内容に誤りがあることが発覚し、本来納めるべき金額が「80万円」であることが判明した場合、更正の請求をおこなうことで納め過ぎた「20万円」を還付してもらうことができます。

このように更正の請求については、「既に納めている税金」よりも「本来納めなければならない税金」が少ない場合におこなう手続きということになります。

修正申告とのちがいとは

更正の請求と似た手続きの1つに「修正申告」があります。

修正申告は「既におこなった申告内容に誤りがあった場合におこなう手続き」という意味では更正の請求と同じですが、いずれの手続きも納税額の面では結果が大きく異なります。修正申告は結果として「税額を増加させる場合」におこなう手続きとなっており、更正の請求は上述のとおり「税額を減少させる場合」におこなう手続きとなっています。

たとえば
当初の相続税の申告において納税額が「100万円」となっていたが、相続税の申告後に内容に誤りがあることが発覚し、本来納めるべき金額が「150万円」であることが判明した場合、修正申告をおこなうことで不足分である50万円を納める流れになります。

そのため、修正申告の場合は正しい納税額を再計算し、不足している税金を追加で納める手続きであるということになります。

更正の請求は2種類ある?

更正の請求については国税通則によって2つの種類が設けられており、具体的に次のように定められています。

更正の請求の種類
  1. 通常の更正の請求
  2. 後発的事由による更正の請求

上記の他にも厳密には「相続税法第32条に定める更正の請求の特則」というものもありますが、相続税方に限らず、所得税や法人税などの各税法ごとに更正の請求の特則が設けられています。同じ更正の請求であっても対象となる条件や期限などの特徴が異なるため、それぞれの違いについてしっかりと押さえておきましょう。

通常の更正の請求

通常の更正の請求は、一度おこなった申告に基づく納税額が過大となれば必ず行えるわけではありません。更正の請求の手続きをおこなうためには、下記の①または②のケースに該当しなければなりません。

  1. 法律違反により納税額が過大であった場合
  2. 計算の誤りにより納税額が過大であった場合

そのため、「なぜ納税額が過大となっていたのか」ということについて、一定の事由に基づいている場合にのみ更正の請求が認められることになります。

後発的事由による更正の請求

後発的事由による更正の請求は申告書を既に提出している、または更正の決定を受けている者について、一定の要件に該当している場合に更正の請求が認められる制度のことをいいます。ここでいう一定の要件のことを「後発的事由」といい、申告、更正又は決定の際に課税標準等の計算の基礎とした事実が、その事実に係る判決又はこれと同一の効力を有する和解により、申告等の計算の基礎としたところと異なることが確定したことなどをいいます。

後発的事由については、原則として次の7つが定められています。

引用:A1-2、H1-1 所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続|国税庁

(1) その申告又は更正決定の課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えの判決(判決と同一の効力を有する和解を含む。)により、その事実が先の計算の基礎としたところと異なることが確定したこと
(2) その申告又は更正決定において、その納税者に帰属するものとされていた所得等が他の者に帰属するものとする当該他の者に対する更正決定があったこと
(3) その申告又は更正決定の課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に含まれていた行為の効力に係る行政機関の許可その他の処分が取り消されたこと
(4) その申告又は更正決定に際し、帳簿書類の押収その他やむを得ない事情により帳簿書類に基づいて課税標準等又は税額等を計算することができなかった場合において、その事情が消滅したこと
(5) その申告又は更正決定の課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に係る契約が、その当事者の解除権の行使によって解除され、若しくはその契約の成立後に生じたやむを得ない事情によって解除され、又は取り消されたこと
(6) 租税条約に基づき、わが国と相手方当事国との権限ある当局間に先の申告又は更正決定と異なる内容の合意が行われたこと
(7) その申告又は更正決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に係る国税庁長官の法令の解釈が、更正決定に係る審査請求若しくは訴えについての裁決若しくは判決に伴って変更され、変更後の解釈が国税庁長官により公表されたことにより、その課税標準等又は税額等が異なることとなる取扱いを受けることとなったことを知ったこと

引用:国税通則法第23条|e-GOV法令検索

引用:国税通則法施工令6条|e-GOV法令検索

更正の請求はいつまでにおこなえばいい?

更正の請求に関する手続きの期限については、「通常の更正の請求」と「後発的事由による更正の請求」によってそれぞれ異なります。期限を過ぎてしまった場合は更正の請求をおこなうことができなくなるため、それぞれの期限について適切に理解しておく必要があります。

通常の更正の請求の場合

通常の更正の請求の場合、相続税の申告期限から5年以内におこなう必要があります。相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日から10ヶ月以内におこなう必要があります。そのため、被相続人が死亡した日から数えると5年10ヶ月以内であれば手続きをおこなうことができます。

後発的事由による更正の請求の場合

後発的事由による更正の請求の期限については、通常の更正の請求と異なり、後発的事由が生じた日の翌日から2ヶ月以内とされています。そのため、後発的事由がいつ発生したかによって更正の請求手続きの期限が変動することになります。

相続税の申告で更正の請求が発生する事例5選

相続税の申告における更正の請求は様々な理由によっておこなわれますが、その多くの原因が「計算の誤り」とされています。しかし、単純な計算の誤り以外にも様々なパターンがあり、ここでは更正の請求が発生する事例を5つ紹介します。

①未分割状態の財産が分割された場合

未分割状態の財産が分割された場合は、更正の請求が発生する可能性がある事例だといえます。

相続においては被相続人の財産を相続人の誰が相続するかを協議する「遺産分割協議」がおこなわれます。しかし、遺産分割協議については必ずしもスムーズに終わるとは限りません。場合によっては相続期限の申告期限である10ヶ月以内に協議が終了しないことも珍しくなく、そのような場合は法定相続割合を用いて仮の申告をおこなうことになります。その後、遺産分割協議により相続人ごとの取得財産が確定し次第、更正の請求手続きによって正しい納税額を申告する流れとなります。

②認知などによる相続人の移動があった場合

認知などによる相続人の移動があった場合も更正の請求手続きが発生する可能性があります。

相続においては、

  • 被相続人が認知する子供がいることが後から判明した場合
  • 相続放棄の取り消しがあった場合

など、相続人の変更が発生する場合あり、このような変更のことを「相続人の移動」といいます。

たとえば
相続税の申告が終わった後に「被相続人に他の子供がいることが判明した場合」などが今回のようなケースに該当します。

このようなケースの場合には「被相続人が認知していた子供かどうか」がポイントになり、認知していなかった場合は、法律的な根拠があった場合でも相続人の移動は認められないことになっています。

また、相続には「相続人の廃除による移動」もあります。相続人の廃除とは、被相続人が生前に相続人から虐待を受けるなど、相続人に財産を相続させたくない場合などに発生します。このような場合は家庭裁判所で手続きをおこなうことで、特定の相続人に対する相続権を廃除することができ、この手続きのことを「相続人の廃除」といいます。

ただし、相続人の廃除手続きについては家庭裁判所が慎重に審議をおこなうため、実際に相続人の廃除が認められるケースはごく僅かとなっています。

③遺留分侵害請求権による返還があった場合

遺留分侵害請求権による返還があった場合も、更正の請求手続きが発生するケースの1つです。

遺留分とは配偶者や子供などの法定相続人が最低限相続できる割合のことをいい、遺留分権利者が遺留分相当の財産を受け取ることができなかった場合に、金銭の支払いを請求することができます。これを遺留分侵害請求といい、遺留分侵害請求によって返還があった場合は、更正の請求が発生することが予想されます。

たとえば
被相続人が遺留分権利者以外に財産を贈与又は遺贈し、遺留分権利者が遺留分に相当する財産を受け取ることができなかった場合、遺留分権利者は贈与又は遺贈を受けた他の相続人に対して、その侵害額に相当する金銭の支払を請求することできます。

④軽減措置や特例が適用される場合

相続税の申告をおこなう際には、様々な軽減措置や特例の適用を検討していく必要があり、場合によっては軽減措置や、特例の適用漏れが発生することも珍しくはありません。このように、軽減措置や特例の適用によって、既におこなっている申告における相続税額が減少する場合は、更正の請求が認められる可能性があります。

たとえば
上記①のように相続税の申告期限内に遺産分割協議による相続財産の分割が確定しなかった場合、法定相続分に基づき暫定数値で申告を行うことになります。その後、遺産分割協議により財産の分割が確定した場合は「配偶者に対する相続税額の軽減※1」や「小規模宅地等の特例※2」を適用することができるようになります

これらの特例を適用することにより、最終的な相続税額が減少する可能性があるため、そのような場合は更正の請求の対象となります。

※1 小規模宅地等の特例 小規模宅地等の特例とは被相続人が自宅として使っていた土地など、特定の要件を満たす土地を相続した場合に評価額を最大で80%控除できる特例のことをいいます。小規模宅地の特例については、適用条件が細かく設けられているため、必ず確認するようにしましょう。
※2 配偶者に対する相続税額の軽減 相続税には「配偶者控除」が設けられており、下記の①または②の場合は相続税がかからない仕組みになっています。

①配偶者が相続した課税対象の遺産額が1億6,000万円まで

②法定相続分の金額

たとえば、配偶者が5億円の遺産を相続した場合、1億6,000万円を超えていますが、遺産相続の割合が法定相続分の範囲内であれば、5億円の遺産に相続税は課税されません。

⑤遺言書の発見や遺贈放棄などがあった場合

相続では遺言書が後から見つかる場合も珍しくなく、相続税の申告をおこなった後に遺言書が見つかった場合は、改めて遺言書に基づく財産の分割を行う必要があります。この場合、既に納めた相続税額が減少するような場合は、更正の請求が必要となります。

また、遺言では法定相続人以外の人に遺産を与えることも可能となっており、これを「遺贈」といいます。遺贈についても相続放棄のように「遺贈放棄」することが可能となっているため、遺言書の発見により遺贈放棄が発生した場合も、更正の請求が発生するケースとなります。

相続税の更正の請求の流れ

更正の請求については特定の書類を準備したうえで、手順に沿った手続きをおこなう必要があります。ここからは更正の請求手続きに関する具体的な流れを解説します。

提出書類の準備

まずは提出する書類の準備を行います。相続税の更正の請求の場合、次のような書類を準備する必要があります。

ここにタイトル
  1. 更正の請求書
  2. 更正の請求の必要性を証明する資料(遺言書や遺産分割証明書など)
  3. 本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)

更正の請求書については税務署窓口や、国税庁ホームページからダウンロードすることができます。更正の請求の必要性を証明する書類は、更正の請求に間違いがないことを証明するための書類であるため非常に重要になります。

更正の請求が必要な理由は人によって様々なものであるため、それぞれの理由に合った適切な書類を準備するようにしましょう。

税務署へ書類の提出

書類の準備ができ次第、税務署への書類提出となり、提出が終わると税務署にて審査がおこなわれます。税務署の審査は場合によって様々ですが、おおむね2〜3ヶ月かかります。また、書類を提出する税務署についても注意が必要です。

提出先となる税務署は「被相続人が生前に住んでいた所在地を管轄する税務署」になっています。そのため、相続人の最寄りの税務署ではないため間違わないように注意が必要です。また、被相続人が「生活の本拠地としていた場所」が納税地となるため、必ずしも住民票がある地域ではないことにも注意が必要です。

たとえば

次のような場合における提出先の税務署は以下のようになります。

  • 老人ホームや別荘、単身赴任先を生活の本拠地としていた場合・・・その住所地を管轄する税務署
  • 被相続人が海外に住んでいた場合・・・相続人の住所地を管轄する税務署

振込の確認

更正の請求手続きが適切に処理された場合は、税務署から「相続税の更正通知書」が自宅へと届き、その後「国税還付振込通知書」が届きます。これらの通知書は「更正の請求が認められ還付金を振り込みます」というお知らせの文書となります。この通知を受け取ってから、約2週間以内に相続人が指定した口座に還付金が振り込まれるため、通知書に記載された金額と、実際に振り込まれた金額に違いがないかを必ず確認するようにしましょう。

また、万が一、間違いが判明した場合は、速やかに税務署に連絡するようにしましょう。

相続税の更正の請求が認められない場合の対処方法

更正の請求については必ずしも認められるとは限りません。滞りなく手続きを行っている場合でも、税務署が更正の請求を認めない場合があります。そのような場合は更正通知書は届かず、代わりに「更正すべき理由がない旨の通知書」が届きます。

この通知書が届いた場合は原則として更正の請求が認められなかったということになります。しかし、税務署の判断に納得ができない場合は、次で紹介する方法を検討するようにしましょう。

審査請求や再調査請求をおこなう

更正の請求が認められない場合は「再審請求」や「再調査請求」を行うことができます。国税不服審判所長に対し申し立てをすることを「再審請求」といい、処分を決定した税務署長に対して申し立てをおこなうことを「再調査請求」といいます。

上記の2つについては「国税不服申立制度」といい、国税不服申立制度は国税不服審判所長や税務署長が決定した課税処分に対して、その処分の変更や取り消しを申し立てることができる制度です。ただし、不服の申し立てには期限があり、「更正すべき理由がない旨の通知書」を受け取った日の翌日から3か月以内となっているため注意が必要です。

まずは、この「国税不服申立制度」を利用し、更正の請求を再度申請するようにしましょう。

訴訟を提起する

上記の「国税不服申立制度」を利用しても、相続税の更正の請求が認められない場合があり、そのような場合は訴訟を提起することができます。ただし、取消訴訟を起こすことができる期限は6か月以内となっており、期限を過ぎてしまうと訴訟手続きがおこなえないため注意が必要です。

訴訟できる裁判所は以下の3つの裁判所となっています。

訴訟できる裁判所
  • 東京地方裁判所
  • 課税処分を下した税務署長の所在地を管轄する裁判所
  • 納税者の住所を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所

更正の請求に関するよくあるお尋ね

相続税については上記のような特例や軽減措置の適用をはじめ、様々な専門知識を多く必要とします。また、更正の請求となると、さらに専門的な知識を必要とするため、なるべく税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

ここでは更正の請求に関するよくあるお尋ねや質問などをいくつか紹介していきます。

支払った相続税は適切な額なの?

支払った相続税が適切な額であったかということについては、非常に難しい問題といえます。相続税では土地や建物などの金銭以外の財産についても「財産評価」をおこない、金銭価値に換価する必要があります。

そのため、10人の税理士がいれば10通りの評価額となるともいわれており、計算された税金が適切な金額であったかということは、非常に難しいポイントとなります。そのため、相続税の申告や更正の請求を相談する場合は、税理士の中でも相続税に強い税理士に依頼するようにしましょう。

更正の請求を依頼する税理士は、申告時の税理士と違ってもいいの?

「相続税の申告をおこなった税理士」と「更正の請求を依頼する税理士」はそれぞれ違っていても構いません。しかし、相続税の申告をおこなった税理士と異なる税理士に、更正の請求を依頼する場合は、相続に関する経緯をすべてゼロから説明しなければなりません。

場合によっては時間と手間がかかることから、税理士報酬が割増になる可能性もあります。そのため、更正の請求を依頼する前にヒアリングをおこなってもらい、見積もりを出してもらうようにしましょう。

更正の請求を税理士に依頼する場合、費用はどれくらいかかるの?

更正の請求に関する税理士報酬は相続の状況や、相続財産の金額などによって大きく異なります。場合によっては手続きに要した期間が長くなってしまい、高額な報酬を請求される場合もあります。

そのため、見積もりを事前に出してもらうことや、税金が還付された場合に報酬が発生する「成功報酬型」の税理士に依頼するようにしましょう。

まとめ

更正の請求をはじめ、相続関係の税務については税理士によって力量の差がはっきりと現れます。相続税をなるべく抑えたい場合や相続財産が多い場合などは、特例や軽減措置の適用により大きく税額を抑えることができる場合もあるため、なるべく相続に強い税理士に依頼するようにしましょう。

また、相続については生前に適切な対策をおこなうことで、将来発生する相続税を大きく減らせる場合もあります。そのため、相続について少しでも不安や疑問がある場合は、事前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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ABOUT US
税理士 友野祐司
税理士法人レガシィ勤務を経て2011年に響き税理士法人に入社、相続税専門の税理士として、横浜を中心に相続税申告のサポートをを行っています。どこよりも、素早い対応を心がけておりますので、少しでも相続税に関して、不安や疑問がありましたらお気軽にご相談ください。