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医療費・入院費用は相続税の債務控除の対象?立替払いの扱いも解説

相続税から控除できる医療費と立替払い
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親や配偶者の入院が長引くと、医療費の支払いもまとまった金額になります。
亡くなったあとに病院から請求書が届き、どう扱えばよいのか迷われる方も多いところです。

亡くなった時点で支払いが済んでいなかった医療費は、相続税の計算で相続財産から差し引けます。
家族が生前に立て替えていた場合も、本人に返す義務が残っていれば対象です。
生前に本人が支払い終えていた分は、所得税の医療費控除で扱います。

この記事では、相続財産から差し引ける医療費の範囲と、入院費を家族が立て替えたときの扱いを整理しました。
入院費を立て替えた方は、立て替えたときの扱いからお読みください。

この記事の監修者

税理士桐澤

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。

亡くなった時点の未払い医療費は相続税の債務控除の対象

支払いのタイミング別に見た医療費4パターンの扱い

相続税には、亡くなった人が残した借入金や未払金を相続財産から差し引ける債務控除という仕組みがあります。
差し引けるのは、亡くなった時点で現に残っていた債務に限られます。

医療費も同じ考え方です。
病院への支払いがまだ済んでいなければ、未払医療費として相続財産から差し引けます。

医療費の扱いは支払いのタイミングで決まる

医療費の支払い状況手続きの考え方
死亡時に病院への未払いがある相続税の債務控除の対象
生前に家族が立て替え、返す義務が残る家族への債務として債務控除の対象
生前に本人が支払った支払った年分の医療費控除を検討
死亡後に相続人が支払った要件を満たせば両方を使える

債務控除を受けるのは、その債務を負担することになる相続人や包括受遺者です。

本人が生前に支払った医療費は債務控除の対象外

本人が生前に支払いを終えていれば、亡くなった時点で病院への債務は残っていません。
支払い済みの医療費は、相続税の債務控除の対象になりません。

差し引く先は所得税のほうです。
詳しくは記事の後半で説明します。

未払いの入院費や差額ベッド代も債務控除の対象

相続税の債務控除には、所得税の医療費控除のような費用ごとの線引きがありません。
病院へ支払う義務が残っている金額であれば、入院費も個室の差額ベッド代も債務に含まれます。

入院中の食事代や、病院からまとめて請求される日用品の代金も、未払いのまま残っているのなら同じ扱いです。

亡くなったあとに届く請求書は、金額が確定するまで時間がかかることもあります。
請求書と領収書は、届いた順にまとめて保管しておきましょう。

高額療養費の通知も保管しておく
医療費が高額になると、あとから高額療養費が払い戻されることがあります。
支給の通知が届いたら、請求書や領収書と一緒に保管しておきましょう。
相続税でも所得税でも扱いを確認する必要があるため、税理士に相談すると安心です。

医療費・入院費を立て替えたときの扱いと残しておく記録

生前の立て替えと死亡後の支払いの違いと残しておきたい記録

入院が長くなると、本人に代わって家族が病院の窓口で支払う場面が出てきます。
立て替えた分も、被相続人の債務として相続財産から差し引ける場合があります。

分かれ目になるのは、立て替えた時期。
相続の前か後かで、誰に対する債務なのかが変わります。

生前に立て替えた医療費は本人の返済義務を確認する

生前に家族が支払った場合、病院への支払いそのものは終わっています。
確認したいのは、本人に家族へ返す義務が残っているかどうかです。

返す義務が確実に残っていれば、家族に対する債務として控除の対象になります。

生計をともにする家族の間では、家族が自分の負担として支払うことも多くあります。
自分の負担として支払った分は、本人の債務にはなりません。
精算の約束や支払いの経緯がわかる記録を残しておきましょう。

死亡後に支払った医療費も債務控除の対象になる

相続が始まったあとに請求書が届いた場合、亡くなった時点では病院への未払医療費が残っていたことになります。
未払医療費は、相続財産から差し引けます。

控除を受けるのは、その債務を負担する相続人や包括受遺者です。
窓口で支払った人だけで判断せず、誰がいくら負担するのかを遺産分割の話し合いのなかで整理しておきましょう。

医療費を立て替えたら領収書や精算の記録を残す

債務として認められるかどうかに、書面が必ず必要とされているわけではありません。
ただ、あとから金額や事情を説明できる材料はそろえておきたいところです。

そろえておきたい記録
・病院の領収書・請求書(診療月と金額がわかるもの)
・支払いに使った口座の記録(誰の口座から出たか)
・精算の約束がわかるメモ(返してもらう前提だった場合)

相続人どうしで立て替えた金額が食い違うと、遺産分割の話し合いがまとまりにくくなります。
あとから確認しやすいように、誰がいくら払ったかを一覧にしておきましょう。

本人が生前に支払った医療費は準確定申告で控除を検討する

準確定申告の対象期間と医療費控除の対象・対象外

本人が生前に支払い終えた医療費は、所得税の医療費控除で差し引きます。
亡くなった人の所得税をまとめて申告する手続きが準確定申告です。

準確定申告の期限は相続開始を知った日の翌日から4か月

準確定申告は、その年の1月1日から亡くなった日までの所得を計算し、相続人などが代わりに申告する手続きです。
申告が必要かどうかは、原則として亡くなった年の所得などで判断します。

申告と納税の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。
相続税の10か月より短く、遅れると延滞税や加算税がかかることがあります。

差し引けるのは、その年の1月1日から亡くなった日までに本人が支払った医療費です。
亡くなったあとに相続人が支払った分は、相続財産から支払った場合でも準確定申告には含められません。

医療費控除の対象になる費用・ならない費用

医療費控除には、対象になる費用の線引きがあります。
入院に関する費用は特に分かれやすいところです。

入院・通院にかかる費用医療費控除
医師の診療・治療の対価対象
治療に必要な医薬品の購入費対象
入院中に病院で出される食事代対象
療養上の世話をしてもらう付添料対象
通院・入院に必要な電車・バス代対象
一定の要件を満たすおむつ代対象
自己都合で個室にした差額ベッド代対象外
医師や看護師への謝礼対象外
寝巻きや洗面用具の購入費対象外
出前や外食でとった食事代対象外

「対象」に条件が付くもの
付添料は、療養上の世話に対して支払うものが対象です。
親族に付添料の名目で支払った分や、所定の料金以外の心付けは含まれません。
交通費は電車やバスなどが対象で、自家用車のガソリン代や駐車場代は含まれません。
おむつ代は、おおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合が対象です。
医師が発行する「おむつ使用証明書」などが必要になります。

相続税の債務控除では、未払いであれば差額ベッド代も差し引けます。
同じ費用でも、相続税と所得税で扱いが変わる点にご注意ください。

保険金や高額療養費は差し引いて計算する
生命保険の入院給付金や高額療養費は、給付の対象になった医療費から差し引きます。
差し引ききれない金額が出ても、ほかの医療費から差し引く必要はありません。
申告の時点で金額が確定していなければ見込額を使い、あとで差が出たときに申告内容を訂正します。

相続税の債務控除と医療費控除を両方使える3つの条件

債務控除と医療費控除を両方使える3つの条件

同じ医療費を、相続税と所得税の両方で差し引けることがあります。
典型的なのは、亡くなった時点で未払いだった医療費を、生計をともにしていた相続人が支払ったケース。

次の3つを満たすと、両方の控除を検討できます。

  • 相続開始の時点で医療費が未払いだった
  • 債務控除を受けられる相続人が医療費を負担した
  • 治療を受けたときに被相続人と生計を一にしていた

※医療費控除には対象になる費用と金額の要件があり、支払った全額を差し引けるわけではありません。
実際に支払った医療費から、まず保険金などで補てんされる金額を差し引きます。
そこからさらに10万円を引いた金額が対象です。
その年の総所得金額等が200万円未満の方は、10万円ではなく総所得金額等の5%を引きます。
控除できる金額は最高200万円までです。

条件1|相続開始の時点で医療費が未払いだった

相続税で差し引けるのは、亡くなった時点で残っていた債務だけです。
本人が生前に支払い終えていれば、相続税の債務控除は使えません。

未払いのまま残っていれば、相続財産から差し引けます。
ここが1つ目の分かれ目。

条件2|債務控除を受けられる相続人が医療費を負担した

医療費控除を受けられるのは、実際にお金を出した人です。
亡くなった本人は支払っていないため、準確定申告では差し引けません。

使うのは、支払った相続人自身の確定申告。
被相続人の準確定申告ではない点にご注意ください。

1人で両方の控除を受けるには、窓口で支払うだけでなく、その金額を自分で負担している必要があります。あとでほかの相続人から精算してもらう場合は、負担する人が別になります。

条件3|治療を受けたときに被相続人と生計を一にしていた

医療費控除の対象になるのは、自分または生計を一にする親族のために支払った医療費です。
判断の基準になるのは、治療を受けた時点で生計をともにしていたかどうかです。

同居していなくても、生活費や療養費を定期的に送っていたのなら、生計を一にしていたと扱われる場合があります。

使う手続き差し引く人
相続税の債務控除未払医療費を負担する相続人
相続人の確定申告実際に医療費を支払った相続人

医療費の債務控除を使えない人と範囲が限られる人

医療費の債務控除を使えない人と控除の範囲が限られる人

債務控除には、使える人の範囲が決まっています。
医療費の債務控除を受けられるのは、相続人と包括受遺者だけです。

包括受遺者とは、「財産の3分の1を渡す」のように割合で財産を受け取る人です。
対象から外れる立場と、範囲が限られる立場を見ていきましょう。

相続放棄した人は葬式費用だけが例外

相続を放棄すると、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎません。
債務控除の対象からも外れます。

遺贈で財産を受け取った場合でも、差し引けるのは実際に負担した葬式費用だけです。
未払医療費は含まれません。

所得税の医療費控除は、相続放棄とは切り離して考える点にご注意ください。
生計をともにしていた親の医療費を支払ったのなら、放棄をしていても自分の確定申告で医療費控除を受けられます。

国内の財産だけに相続税がかかる人は控除の範囲が限られる

国内にある財産だけに相続税がかかる立場を、制限納税義務者といいます。
この立場にあたる場合、一般的な未払医療費や葬式費用は、原則として差し引けません。

差し引けるのは、受け取った国内財産にかかる固定資産税など、その財産と結びついた債務に限られます。
あてはまるかどうかは、亡くなった方と財産を受け取る方の住所・国籍・居住歴などで決まります。
海外に住んでいるかどうかだけでは判断できないため、国外がからむ相続では税理士にご確認ください。

相続人以外で特定の財産だけを受け取った人

遺言で財産を指定して受け取る人を特定受遺者といいます。

たとえば

「〇〇市〇〇番地の土地を甥の〇〇に遺贈する」と遺言書に書かれていた場合、その土地を受け取る甥が特定受遺者にあたります。

特定受遺者は指定された財産だけを受け取り、借金などの債務は引き継ぎません。
相続人ではない特定受遺者は、債務控除も葬式費用の控除も使えません。

相続人が遺言で特定の財産を受け取った場合は、扱いが変わります。
相続人であれば債務控除を使えるため、未払医療費も差し引けます。

医療費以外に相続財産から差し引ける債務と差し引けない債務

相続財産から差し引ける債務と差し引けない債務の一覧

債務控除の対象は医療費だけではありません。
亡くなった時点で残っていた債務であれば、幅広く差し引けます。

差し引ける債務具体例
借入金金融機関からの借入金、住宅ローン
公租公課未納の固定資産税、住民税、所得税
未払金医療費、公共料金、カードの未決済分
預かり敷金賃貸していた物件の敷金

反対に、次のようなものは差し引けません。

差し引けない債務理由
お墓や仏壇の未払代金非課税財産に関する債務のため
相続財産の維持管理費用相続が始まったあとの費用のため
遺言執行費用相続が始まったあとの費用のため
団信で完済される住宅ローン返済の義務が残らないため

※保証債務は原則として差し引けません。
ただし主たる債務者が返済できない状態にあり、肩代わりした分を取り戻す見込みもない場合は例外です。
肩代わりする部分を差し引けることがあります。

未納の固定資産税の扱いは被相続人の固定資産税は誰が払う?でくわしく説明しています。
住宅ローンについては住宅ローンが残ってる場合の相続税の扱いは?をご覧ください。

葬式費用は債務ではありませんが、相続財産から差し引けます。
差し引ける範囲は次の記事にまとめました。

相続と書かれている鍵の画像

まとめ|医療費は支払った時期と負担した人で控除の扱いが変わる

税理士に医療費の扱いを相談する様子

支払いが済んでいたのか、家族が立て替えたのかを整理するところから始めましょう。
最後に要点をまとめます。

・相続税では、亡くなった時点の未払医療費と、返す義務の残る立替金が債務控除の対象になる
・未払いであれば、入院費も差額ベッド代も債務に含まれる
・生前に本人が支払った医療費は、支払った年分の所得税の医療費控除で差し引く
・亡くなったあとに相続人が支払った医療費は、要件を満たせば相続税と所得税の両方で差し引ける
・相続放棄した人や相続人以外の特定受遺者は、医療費の債務控除を使えない

未払医療費は1件ごとの金額が小さくても、入院が長引けばまとまった金額です。
どちらの手続きで差し引くかを取り違えると、納める税額が変わってしまいます。

横浜市の響き税理士法人では、相続税の申告を専門にお手伝いしています。
ご相談は1時間まで無料です。
立て替えた医療費の扱いや、準確定申告が必要かどうかに迷われたら、お気軽にお問い合わせください。

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この記事の主な参考資料
国税庁「No.4126 相続財産から控除できる債務」(差し引ける債務の範囲・債務控除を受けられる人)
国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」(申告期限・死亡後に支払った医療費の扱い)
国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」(生計を一にする親族・保険金等で補てんされる金額)
国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」(付添料・交通費・おむつ代の条件)
国税庁「No.1126 医療費控除の対象となる入院費用の具体例」(差額ベッド代・付添料・食事代の扱い)
国税庁 質疑応答事例「死亡した父親の医療費」(相続人が支払った未払医療費の医療費控除)
国税庁「相続税法基本通達 第13条《債務控除》関係」(相続放棄した人の扱い・確実な債務・保証債務)

※本記事は2026年9月15日時点の法令等にもとづいて作成しています。
実際の申告にあたっては、税理士にご確認ください。

響き税理士法人のスタッフ

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税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。