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相続が発生したときにまず確定申告書をチェックすべき3つの理由とは?

税理士友野
税理士友野

相続が発生したときに相続税のことを気にする方は多いですが、相続人が被相続人の死亡時までの所得について確定申告の義務を負っていたり消費税の申告納付義務を負っていたりすることについてご存じの方は多くはないと思われます。

特に被相続人が個人事業を営んでいた場合は、こういった申告納付の義務を果たさないと相続人に対して重いペナルティーが課せられたり、相続人が必要な届出を行わないと被相続人が受けていた特典を受けることができなくなったりするので、まずは被相続人が提出していた所得税及び消費税の申告書をチェックして、必要な対応を確認することをおすすめします。

被相続人の確定申告書をまずチェックすべき3つの理由

相続が発生したらすぐに被相続人の確定申告書をチェックすべきなのは、次の理由があるためです。

3つの理由
  1. 被相続人が青色申告の承認を受けていたかどうかで、相続人の青色申告承認申請書を出すべきタイミングが変わるため
  2. 被相続人が消費税の課税事業者であったときは、その消費税の申告納付を相続人が行わなければならないため
  3. 被相続人の死亡に伴う確定申告を相続人が行わなければならないため

このうち、青色申告と消費税については、被相続人が個人事業を営んでいなかった場合には関係ありませんが、特に相続人が被相続人と疎遠だった場合、相続人の知らないところで被相続人が事業を営んでいた可能性もあるため、念のためチェックすることをおすすめします。

以下、3つの理由について詳しく解説します。

青色申告承認申請書の提出時期

青色申告とは?

青色申告制度とは、一定の帳簿書類の作成と備え付けを行い、その帳簿書類に基づいて正確な所得計算をする納税者に対して税務上様々な優遇措置(特典)が与えられる制度のことです。青色申告によって確定申告書を提出しようとする場合には、事前に承認申請書を提出することが必要です。青色申告をすることによる税務上の特典は、たとえば次のものがあります。

税務上の特典
  • 青色申告特別控除(所得金額から最高65万円を差し引くことができます)
  • 純損失の繰越控除(損失額を、損失が生じた理由にかかわらず翌年以降3年に渡って繰り越すことができます)
  • 純損失の繰戻還付(前年分の所得に対する税金から還付を受けることができます)

青色申告の承認は相続により承継されない

青色申告の承認は「事業」ではなく「人」に紐づきます。

このため、被相続人が青色申告の承認を受けていた場合であっても、その効力が相続によりその事業を承継した相続人に引き継がれることはありません。したがって、相続人が青色申告の特典の適用を受けようとする場合には、改めて青色申告承認申請を行う必要があります

また、被相続人が青色申告の承認を受けていなかった場合であっても、その事業を承継した相続人が青色申告の承認申請を行うことは可能です。なお、この次のセクションで説明するように、被相続人が青色申告の承認を受けていたか否かによって、相続人が提出する青色申告の承認申請書の提出期限が変わる点は注意が必要です(これ以降の説明においては、相続人が相続発生前に何らの事業または業務を営んでいないことを前提にします)。

期限までに提出が間に合わない場合は、翌年について青色申告の特典を受けることができなくなります。特に青色申告特別控除の規定や純損失の繰越控除の規定の適用が受けられないことは税額への影響が大きいので、期限までに青色申告の承認申請書を提出するようにしましょう。

被相続人が青色申告の承認を受けていた場合

青色申告をしていた被相続人の業務を承継した場合は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内(ただし、その期限が青色申告の承認があったとみなされる日後に到来するときは、その日まで)に青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署長へ提出します。

被相続人が死亡した日に応じた具体的な提出期限は次のとおりです。

被相続人が死亡した日 提出期限
1月1日から8月31日まで 死亡の日から4か月以内
9月1日から10月30日まで その年の12月31日
11月1日から12月31日まで その年の翌年2月15日

特に、被相続人が12月末に死亡したときは、死亡の日から提出期限までの期間が約1か月半しかないので注意が必要です。

被相続人が青色申告の承認を受けていなかった場合

事業を承継した日から2か月以内に、青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署長へ提出する必要があります。たとえば、5月1日に相続が発生した場合は、6月30日までに提出する必要があります。

被相続人が青色申告の承認を受けていなかった場合は、受けていた場合に比べて概して相続発生から提出期限までの期間が短い傾向にありますから、被相続人が青色申告を行っていなかったことがわかったら、すぐにでも青色申告承認申請書を提出する準備に取り掛かることをおすすめします。

被相続人が青色申告の承認を受けていたか調べる方法

被相続人が青色申告の承認を受けていたか否かは、いくつかの方法で推測あるいは確認することができます。もっとも簡単なのは、被相続人の前年分の申告書の「青色申告特別控除」の欄に数字が入っているかどうかを確認する方法です。この欄に数字が入っていれば、被相続人が青色申告の承認を受けていたことが推測できます(「推測」なのは、被相続人の申告書が誤っていた可能性がゼロではないためです)。

もう少し確実なのは、被相続人宛てに税務署から送られてくる申告書類に青色決算書が同封されていたかを確認する方法です。税務署は青色申告の承認を受けている人にしか青色決算書を送りませんので、被相続人の税務関係書類の中に青色決算書が入っていたら、被相続人は青色申告の承認を受けていたと考えて問題ないでしょう。

消費税の検討

相続があった年の消費税の納税義務

被相続人の死亡の日までの分

「準確定申告と消費税の申告」のセクションで解説します。

被相続人の死亡の日の翌日からその年の12月31日までの分

消費税の免税事業者である相続人が被相続人の事業を承継した場合、相続のあった年の前々年(つまり2年前)における被相続人の課税売上高が1,000万円を超える場合は、相続があった日の翌日からその年の12月31日までの間の納税義務は免除されません。つまり、この間に生じた消費税については、相続人が申告納付の義務を負うことになります

一方、相続のあった年の前々年における被相続人の課税売上高が1,000万円以下である場合は、その年における相続人の納税義務は免除されるため、消費税の申告納付は不要となります。被相続人の2年前の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかは、被相続人が2年前に提出した消費税の申告書で確認することができます。

被相続人が消費税の申告をしていた場合であっても、その理由が2年前の課税売上高が1,000万円を超えていたためか、それとも1,000万円を超えていないものの課税事業者を選択していたためかは申告書を見ないとわかりません。

事業承継者が決まっていない場合の取り扱い

相続人が複数いる場合において、相続財産が未分割のときは、財産の分割が行われるまでは相続人が共同して被相続人の事業を承継したものと扱われるため、被相続人の2年前の課税売上高を法定相続分で按分した金額を使って相続人の消費税の納税義務を判定します

たとえば、法定相続人が被相続人の子ども2人で、被相続人の2年前の課税売上高が1,800万円である場合を考えます。子どもの法定相続分は等しいため、それぞれの2年前の課税売上高は900万円と計算されます。この場合、2年前の課税売上高が1,000万円以下であるため、相続があった日の翌日からその年の12月31日までの間の納税義務は免除されます。

相続があった年の翌年以降の消費税の納税義務

相続があった年の翌年における消費税の納税義務は、その年の2年前、つまり相続があった年の前年における被相続人の課税売上高と相続人の課税売上高の合計額が1,000万円を超えるかどうかで判定します。

また、相続があった年の翌々年における消費税の納税義務は、その年の2年前、つまり相続があった年における被相続人の課税売上高と相続人の課税売上高の合計額が1,000万円を超えるかどうかで判定します。相続のあった年の翌年と翌々年の納税義務は被相続人の分と相続人の分を合算した金額で判定する点は特に注意が必要です。

準確定申告と消費税の申告

準確定申告とは?

所得税の確定申告書は、その年の1月1日から12月31日までの生じた所得について申告期限(例年は翌年3月15日)までに提出しますが、個人事業者が年の中途で死亡した場合は、その年の1月1日から死亡の日までの所得に関する申告書を、その相続人が提出する必要があります。

この、死亡に伴う確定申告のことを「準確定申告」といいます。

消費税の申告義務

消費税の申告書を提出すべき個人事業者がその年の翌年1月1日から申告書の提出期限(例年は3月31日)までの間に死亡したときは、その相続人はその期間にかかる申告書を提出する義務を負います。

また、個人事業者が年の途中で死亡した場合において、その年の1月1日から死亡した日までの期間について消費税の申告書を提出すべき場合も、その相続人はその期間にかかる申告書を提出する義務を負います。

申告書の提出期限

ともに相続の開始があったことを知った日(つまり被相続人の死亡の日)の翌日から4か月以内です。なお、消費税については、申告書のほかに「個人事業者の死亡届出書」を速やかに提出する必要があります。

準確定申告特有の取り扱い

所得税の取り扱い

通常の申告書に加えて、「準確定申告の付表」を作成し、申告書に添付する必要があります。また、準確定申告における所得控除の適用に関して、次の点に留意が必要です。準確定申告においても医療費控除の規定の適用を受けることはできますが、控除の対象となる医療費は被相続人が支払ったものに限られます。

たとえば、被相続人が死亡したあとに相続人が支払った医療費を準確定申告の医療費控除に含めることはできません。準確定申告においても死亡の日の現況により配偶者控除や扶養控除の規定の適用を受けることができます。この場合、死亡の日までの期間按分は不要です

消費税の取り扱い

通常の申告書に加えて、付表6(死亡した事業者の消費税及び地方消費税の確定申告明細書)を作成し、申告書に添付する必要があります。

準確定申告と消費税の申告を行わなかった場合のペナルティー

上述したとおり、準確定申告の義務と消費税の申告義務は相続人が負うことになるため、その義務に違反した場合のペナルティーも相続人が負います。申告書を申告期限までに提出しなかった場合、無申告加算税と延滞税が課せられます。無申告加算税と延滞税の税率は次のとおりです。

無申告加算税と延滞税の税率
  • 無申告加算税の税率は、納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%
  • 延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月の期間に対応するものは年2.5%、それ以降の期間に対応するものは年8.8%(2021年の場合)

被相続人の申告書が見つからないときの対応

ここまで、相続が発生したときにまず被相続人の申告書をチェックすべき理由について紹介しました。被相続人の申告書をチェックする第一歩は被相続人の申告書を発見することですが、時折「どこを探しても被相続人の申告書が見つからない」という方もいます。そういった場合はどうしたらよいのでしょうか。

  1.  一つ目の手段は、「被相続人の顧問税理士に連絡する」方法です。

被相続人の顧問税理士に連絡することができれば、その後の準確定申告や消費税の申告もスムーズに行うことができるでしょう。税理士法人に申告など依頼していた場合、税理士法人名さえ分かれば担当税理士の氏名が分からなくても問題なく話が通じると思われます。

  1.  二つ目の手段は、「申告書等閲覧サービスを利用する」方法です。

閲覧申請は納税地を所轄する税務署に対して行います。

申請に必要な書類などは、国税庁の「申告書等閲覧サービスの実施について」の別紙をご参照ください。

出典:国税庁の「申告書等閲覧サービスの実施について」別紙

まとめ

以上、相続が発生したときに被相続人の申告書をチェックすべき理由について解説しました。

税務上の特典を享受できるだけでなく余計なペナルティーを回避することにもつながるので、相続が発生した場合は被相続人の申告書を早めにチェックすることをおすすめします。

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ABOUT US
税理士 友野祐司
税理士法人レガシィ勤務を経て2011年に響き税理士法人に入社、相続税専門の税理士として、横浜を中心に相続税申告のサポートをを行っています。どこよりも、素早い対応を心がけておりますので、少しでも相続税に関して、不安や疑問がありましたらお気軽にご相談ください。