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絶対に忘れてはいけない 相続時精算課税制度の手続き上の注意点(贈与税編)

税理士友野
税理士友野

相続時精算課税制度の選択をするにあたっては、贈与税申告書を申告期限(通常は相続時精算課税の選択に係る贈与をした年の翌年3月15日まで)に提出する必要があります。

申告期限を過ぎて申告書を提出した場合は相続時精算課税制度を選択できないため、注意が必要です。

また、相続時精算課税制度の選択をする場合は、贈与税の申告書(第1表と第2表の作成が必要です)の他に、相続時精算課税選択届出書(様式は国税庁のホームページにあります)の作成と、受贈者の氏名と生年月日が分かる書類及び受贈者が贈与者の推定相続人である子または孫であることが分かる書類の準備が必要です。

準備する書類は受贈者の戸籍謄本のみで済むケースもありますが、場合によっては贈与者の戸籍謄本も必要となることがあるので、申告期限に間に合うように早めに準備を開始することをおすすめします。

相続時精算課税制度とは?

制度の概要

相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の父母または祖父母が20歳以上の子または孫に対して財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。

この制度の適用を受けると、贈与時の課税の全部または一部を相続発生時まで実質的に繰り延べることができます。「全部または一部」なのは、相続時精算課税制度による贈与税の特別控除額に限度額(2,500万円)があるためです。

特別控除額の限度額は1年あたり2,500万円ではなく贈与者1人あたり2,500万円ですから、たとえば相続時精算課税制度の適用を受けて以降、父から受けた贈与額の累計が2,500万円を超えると、その超えた金額の20%の贈与税が課税されることになります。

相続時精算課税制度を選択できる条件

相続時精算課税制度は、贈与者と受贈者がそれぞれ一定の要件を満たしている場合に適用を受けることができます

「一定の要件」は次のとおりです。

  • 原則として、受贈者が贈与者の直系卑属であること(つまり、父母または祖父母から、子または孫への贈与であること)
  • 贈与した年の1月1日において贈与者が60歳以上であること
  • 贈与を受けた年の1月1日において受贈者が20歳以上であること

なお、受贈者が次の特例の適用に係る資産を取得したときは、「受贈者が贈与者の直系卑属であること」という要件はなくなります(受贈者が贈与者の直系卑属でなくても相続時精算課税制度の適用を受けることができます)。

  • 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例の適用を受ける場合における、その非上場株式等
  • 個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除の適用を受ける場合における、その事業用資産

適用手続き

適用要件に該当するか否かの確認

相続時精算課税制度の適用を受ける場合、まずは適用要件に該当するか否かについて確認が必要です。適用要件の一つである「20歳以上の子」について、「子」には実子ではなく養子も含まれますが、たとえその後にすぐ養子縁組をする計画があったとしても、贈与の日の時点で養子縁組をしていない場合はこの規定の適用を受けることができないので注意が必要です。

なお、相続税精算課税制度の適用を受けた養父母から贈与を受けた後、その養子縁組が解消となった場合であっても、養子縁組解消後の贈与についても相続時精算課税が適用されます。

適用を受けるために必要な書類など

相続時精算課税制度を選択しようとする受贈者は、贈与税の申告期限までに、次の書類、届出書、及び申告書を税務署へ提出する必要があります。

  • 受贈者の氏名及び生年月日が分かる書類
  • 受贈者と贈与者の関係が分かる書類
  • 相続時精算課税選択届出書
  • 贈与税の申告書(第1表、第2表)

それぞれの書類などの入手方法や作成方法について、以下で解説します。

なお、贈与税の申告期限は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までですが、2020年に贈与を受けた分については新型コロナウイルス感染症の影響で期限が1か月延長され、2021年2月1日から4月15日までとなっています。

受贈者の情報が分かる書類

相続時精算課税を選択しようとする受贈者は、贈与税の申告書に次の情報が分かる書類を添付する必要があります。

  • 受贈者の氏名及び生年月日
  • 受贈者が贈与者の推定相続人である子または孫であること

贈与者が受贈者の父母である場合は、受贈者の戸籍謄本だけで上記の2点が明らかになるため、必要な書類は受贈者の戸籍謄本のみです。戸籍謄本は、受贈者の本籍地の市役所などの窓口で入手することができます。本籍地が現在居住している場所から離れていて本籍地の市役所などへ出向くことが難しいときは、郵送によって戸籍謄本を入手することも可能です。詳しい手続きは、本籍地の市役所などのホームページをご確認ください。

一方、贈与者が受贈者の祖父母である場合は、受贈者の戸籍謄本だけで「受贈者が贈与者の推定相続人である孫であること」が分かるかどうかは、受贈者の婚姻の有無などによって変わります。いずれにしても受贈者の戸籍謄本は必要ですので、受贈者の戸籍謄本を先に入手し、それに祖父母の情報が記載されていなければ祖父母の戸籍謄本を入手するようにしましょう。祖父母の戸籍謄本は、祖父母の本籍地の市役所などの窓口で入手することができます。

なお、受贈者が贈与者の子または孫でない場合において、非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例または個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除を受ける者であるときは、受贈者の氏名及び生年月日が分かる書類に加えて、受贈者が贈与者からの贈与により特例対象受贈非上場株式等の取得をしたことを証する書類、または受贈者が贈与者からの贈与により特例受贈事業用資産の取得をしたことを証する書類を、贈与税の申告書に添付する必要があります。

相続時精算課税選択届出書

相続時精算課税を選択しようとする受贈者は、「相続時精算課税選択届出書」作成した上で、贈与税の申告書に添付する必要があります。相続時精算課税選択届出書は国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

出典:国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/zoyo/yoshiki2020/pdf/025.pdf

以下、相続時精算課税選択届出書の作成方法を解説します。

(1) 提出年月日、受贈者の情報等の欄

  • 「受贈者」の左側は、届出書の提出日(贈与税申告書の提出日と同じ日)と、提出先の税務署名(受贈者の納税地を所轄する税務署名)を記入します。
    税務署名は、下記URLのサイトに郵便番号を入力すると検索できます
    https://www.nta.go.jp/about/organization/access/map.htm
  • 「受贈者」の欄は、受贈者の住所、氏名(フリガナ)、贈与者との続柄を記入します。「特定贈与者との続柄」の欄には、贈与者から見た続柄を記入します。たとえば受贈者が贈与者の長女である場合は「長女」、孫である場合は「孫」と記入します

(2) 特定贈与者に関する事項の欄

  • 贈与者の住所、氏名(フリガナ)、及び生年月日を記入します

(3) 年の途中で特定贈与者の推定相続人または孫となった場合の欄

  • この欄は、年の途中で養子縁組によって特定贈与者の推定相続人または孫となった場合に記入するため、そういった事象がなければ何も記入しません

(4) 添付書類

  • チェックボックスにチェックを入れます

相続時精算課税選択届出書の作成は以上で完了です。

贈与税の申告書(第1表、第2表)

相続時精算課税を選択しようとする受贈者は、贈与税の申告書の第1表及び第2表を作成する必要があります。贈与税の申告書の様式は国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

出典:国税庁ホームページ
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/zoyo/yoshiki2020/01.htm

以下、贈与税の申告書の第1表及び第2表の作成方法を解説します。表の連携の関係で、まずは第2表の作成方法から解説します(暦年課税を受ける贈与は受けていないものとします)。

1. 第2表の作成方法

(1) 受贈者の氏名など

  • 受贈者の氏名を記入します
  • チェックボックスにチェックを入れるのは贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合のみですので、住宅取得等資金の贈与を受けていないときはチェックを入れません

(2) 特定贈与者の情報及び財産の明細など

  • 左の欄には、特定贈与者の住所、氏名(フリガナ)、続柄、生年月日を記入します
  • 真ん中の欄には、特定贈与者から取得した財産の明細を記入します。たとえば財産が土地の場合、「種類」には「土地」、「細目」には土地の地目(例:「宅地」、「畑」)、「利用区分・銘柄等」には土地の利用区分(例:「自用地」)、「所在場所等」にはその土地がある場所(例:「〇〇市××区△町1-1」)、「数量」にはその土地の地積(例:「80.00平米」)、「単価」にはその土地の1平米あたりの価格(例:「300,000」)をそれぞれ記入します
  • 右の欄には、受贈者が財産を取得した年月日と財産の価額を記入します。「財産の価額」の欄には贈与税評価額を記入します

(3) 税額の計算

  • ㉓には上記の「財産の価額」の合計額を記入します
  • ㉔には過去の年で使用した相続時精算課税の特別控除額を記入します(過去の年で使用した特別控除額がなければ0を記入します)
  • ㉕には2,500万円から㉔を引いた金額を記入します(この金額が当年で使える特別控除額です)
  • ㉖には㉓(「財産の価額」の合計額)と㉕(当年で使える特別控除額)の低い金額を記入します
  • ㉗は2,500万円から㉔及び㉖を引いた金額が翌期に繰り越される特別控除額の残額です
  • ㉘以降は、㉓から㉖を引いた金額がプラスの場合のみ記入します。プラスの場合は、㉘の数字が贈与税額の課税標準額です
  • ㉙には㉘に20%(相続時精算課税にかかる贈与税率)を乗じた金額を記入します。税額は百円未満切り捨てですから、あらかじめ十の位と一の位に0が印刷されています
  • ㉚には外国での贈与税を課せられた場合に記入します
  • ㉚に数字を記入しない場合、㉛には㉙と同じ数字を記入します

(4) 過去の申告状況

  • 過去に同じ人からの贈与について相続時精算課税の選択をしていた場合は、過去の申告状況を記入します

第2表の作成は以上で完了です。続いて、第1表を作成します。

2. 第1表の作成方法

(1) 受贈者の氏名など

  • 左の欄には、受贈者の住所、氏名、個人番号(マイナンバー)、生年月日、職業を記入します
  • 右の欄は税務署整理欄(税務署用の記入欄)なので何も記入しません

(2) 合計欄

  • ⑪には第2表㉓欄の数字を転記します
  • ⑫には第2表㉛欄の数字を転記します
  • ⑬には⑪の数字を転記します
  • ⑭には⑫の数字を転記します
  • ⑳には⑭の数字を転記します

第1表の作成は以上で完了です。

以上で贈与税の申告に必要な申告書、届出書、書類が揃いました。相続時精算課税は贈与税の申告期限までに申告書を提出しないと適用を受けることができなくなるため、期限に遅れることのないようご注意ください。

贈与の翌年以降の注意点

撤回ができない

相続時精算課税は、いったん選択すると選択した年以後贈与者が亡くなる時まで継続して適用され、選択を撤回したり暦年課税に変更したりすることはできません。今後の贈与計画や受贈者のライフプランなどを総合的に考慮して、選択するか否かを判断しましょう。

一般的には、今後値上がりが確実に見込まれる財産や、贈与者が存命のうちに受贈者に使わせたい財産(たとえば住宅用の土地)があるときは相続時精算課税の選択をするメリットがあります。

一方で、「資産の移転に係る税金を極小化したい」という意向がある場合や、今後贈与する予定の財産が土地や建物ではなく現金や少額に細分化できる財産(たとえば有価証券や宝石)である場合には、相続時精算課税の選択をするメリットは薄いため、選択しない方がよいでしょう。

相続時精算課税を選択するか否かについて客観的な意見が欲しい場合は、税理士などの専門家に相談することも一つの手です。

年110万円以下の贈与でも申告と納付が必要

相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできませんので、その年に贈与を受けた財産の価額が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。この点も、選択の撤回ができないことと並んで、相続時精算課税を選択する上での重要な注意点です。

前年以前で相続時精算課税の選択をした贈与者から贈与を受けた場合、相続時精算課税選択届出書、受贈者の氏名及び生年月日が分かる書類、及び受贈者と贈与者の関係が分かる書類を提出する必要はありませんが、贈与税の申告書(第1表、第2表)の提出は必要です。

相続時精算課税の選択をした翌年以降の申告においては、第2表で記載すべき事項が少し変わります。具体的には次のとおりです。

(1) 「税額の計算」の部分

相続時精算課税制度を選択した年(つまり適用初年)では㉔欄に数字を入れることはあ
りませんが、選択した翌年以降はこの欄に数字を記入します。過去の年分の申告におい
て控除した特別控除額が分からないとこの申告書の記入ができなくなるので、少なくと
も前年(あるいは前回贈与時)の申告書は手元に置いておくようにしましょう。

(2) 「過去の申告状況」の部分

相続時精算課税制度を選択した年(つまり適用初年)ではこの部分は記入不要ですが、選択した翌年以降はこの部分に申告した税務署名と控除を受けた年分を記入する必要があります。なお、様式にも記載されているように、「受贈者の住所及び氏名」の欄は、相続税精算課税選択届出書に記載した住所または氏名と異なる場合にのみ記入が必要です(変わらないのであれば、税務署側で調べてくれます)

なお、暦年課税の基礎控除額が使えないということは、たとえば相続時精算課税の選択をした贈与者から2,500万円の贈与を受けた翌年に同じ人から現金10万円の贈与を受けたときでも、2万円の贈与税額(10万円×20%)を納付する必要があることを意味します。特別控除額を超えた分は少額でも贈与税が課される点も、注意が必要です。

相続税の計算に影響がある

相続税額をする上で非常に強力な効力を発揮する小規模宅地等の特例は、個人が相続または遺贈により取得した財産のみが適用対象ですから、贈与により取得した財産は適用対象外となります。この点は、相続時精算課税の選択をした場合でも同じなので、相続税の申告時に誤って小規模宅地等の特例を適用しないよう留意が必要です。

まとめ

以上、相続時精算課税制度の手続き上の注意点について解説しました。手続き上の注意点で最も重要なのは、贈与税の申告書及び添付書類を申告期限までを提出しないと相続時精算課税制度の適用を受けることができなくなる点です。特に祖父母の戸籍謄本が必要となる場合や、急に相続時精算課税制度適用を受けることを思い立ったような場合は時間的な余裕がないケースも多いですから、期限内に申告を済ませるためにも、税理士のサポートを受けることをおすすめします。

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ABOUT US
税理士 友野祐司
税理士法人レガシィ勤務を経て2011年に響き税理士法人に入社、相続税専門の税理士として、横浜を中心に相続税申告のサポートをを行っています。どこよりも、素早い対応を心がけておりますので、少しでも相続税に関して、不安や疑問がありましたらお気軽にご相談ください。