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孫への生前贈与の注意点と相続税を節税する方法

税理士友野
税理士友野

孫へ生前贈与を行う際は名義預金と定期金の取り扱いに注意する必要があります。前者について、預金口座名義が孫であっても、贈与契約の有無や預金通帳の管理実態によっては被相続人の預金であるとして相続財産にカウントされる可能性があります。

後者について、複数年に渡る贈与を計画している場合、それが「定期金を受け取る権利」と認定されると多額の贈与税がかかる可能性もあります。

また、孫への生前贈与について、基礎控除額や各種非課税規定を上手く活用すれば、孫に贈与税を負担させることなく相続税を節税できます。

この記事では、孫への生前贈与の注意点と相続税を節税する方法について解説します。

生前贈与と税金

原則的な取り扱い

生前贈与によって基礎控除額(年110万円)を超える金額の贈与を受けた場合、贈与を受けた人に対して贈与税が課税されます

祖父母から孫への贈与に適用される贈与税率は贈与年の1月1日時点で孫が20歳以上か否かで変わり、20歳以上の方が低いので、孫の年齢が19歳であれば少しだけ贈与を待つと贈与税が節税できます。

なお、贈与から3年以内に贈与者である祖父母が死亡した場合、孫が相続人でない限り相続開始前3年以内の贈与加算の適用対象外ですが、孫が祖父母の生命保険金や退職手当等を取得した場合は、3年以内の贈与に対して相続税も課税される点は注意が必要です(この場合、すでに支払った贈与税額は相続税額の計算上控除されます)。

孫へ生前贈与する際の注意点

孫へ生前贈与をする際は、次の2点に注意が必要です。

  1. 「名義預金」の取り扱い
  2. 定期金の取り扱い

(1)  名義預金の取り扱い

まず、「名義預金」の取り扱いについて解説します。「名義預金」とは、口座の名義人と実質的にその口座を管理支配している人が異なる預金のことです。

たとえば
祖父母が孫名義の預金口座を開設し、入出金に関する判断や通帳の管理を祖父母自らが行っている場合がこれに該当します。

祖父母としては、孫名義の口座に入金したお金は孫へあげたもの(孫へ贈与したもの)と考えるかも知れません。ただ、贈与契約は贈与者の一方的な意思表示で成立するわけではなく、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによってその効力を生じる(民法549条)ものであるため、「贈与した」というためには贈与者・受贈者の意思の合致が必要です。

この点、①祖父母と孫(孫が意思表示できない場合はその法定代理人である孫の親)の間に贈与契約が成立したと考えられる証拠がある、②預金通帳を孫(あるいはその法定代理人)が管理するなど孫が預金に対する管理支配権を持っていることが明らか、といった状況にあれば、この預金は孫が祖父母からの贈与によって取得したものと考えるのが自然です。この場合、名義預金は孫の財産なので、祖父母が死亡したときの相続財産とはなりません。

一方、①祖父母が孫に内緒で孫名義の預金口座を作っていた、②預金通帳を祖父母自らが管理していた、③時々その口座から現金を引き出して祖父母自身の生活費として使っていた、などの状況にあれば、その預金は孫のものではなく祖父母のものと考えるのが自然です。この場合、名義預金は祖父母の財産なので、祖父母が死亡したときの相続財産になります。

こういった名義預金は申告漏れが生じやすいことから、税務調査でよくチェックされるのでご注意ください。

(2)  定期金の取り扱い

次に、定期金の取り扱いについて解説します。「定期金」とは、決まった時期に授受する金銭を意味します。

たとえば
「10年間、毎年1月1日に100万円を受け取る権利」が定期金を受け取る権利の代表例です。

孫への生前贈与を行う場合において、贈与契約書を作成するときは、契約書に贈与が定期金である旨を記載すると贈与税の基礎控除額をフル活用できなくなるので注意が必要です。基礎控除額をフル活用できなくなる理由は、贈与税の課税価格に算入される金額が、「その年に現実に取得した金銭」ではなく、「その年に取得した財産」であるためです。

「財産」とは「金銭に見積ることができる経済的価値のあるすべてのもの」をいうため、定期金にかかる権利についてもその権利を取得した年の相続税の課税価格に算入されます。

たとえば
「10年間、毎年1月1日に100万円を受け取る権利」の場合、これに対して贈与税が課税される期間と贈与税の課税対象額の組み合わせとして正しいのはどちらでしょうか。

①  課税される期間:権利を取得した年以降10年間、課税対象額:毎年100万円

②  課税される期間:権利を取得した年のみ、課税対象額:その年に1,000万円

正解は②です。

①に該当すれば毎年の贈与額が基礎控除額(年110万円)以下であるためこの贈与で贈与税は課されませんが、②に該当すれば231万円の贈与税が課税されることになります(孫が20歳未満の場合)。毎年コツコツ贈与する場合は、それが定期金であると考えられないようにする必要があります。具体的には、贈与契約書を作成する場合は贈与のたびに作成する、贈与の時期や金額を年によって変えるなどの工夫をするとよいでしょう。

以上、孫へ生前贈与する際の注意点として、名義預金の取り扱いと定期金にかかる贈与について解説しました。どちらも頻出の論点ですので、ぜひご注意いただければと思います。

続いては、孫への生前贈与で相続税を節税する方法を解説します。

孫への生前贈与で相続税を節税する方法

相続税の課税価格

相続税の課税価格に算入される金額は、原則として相続人が相続または遺贈により取得した財産の価額であるため、生前贈与をするなどして「相続人が相続または遺贈により取得した財産の価額」をあらかじめ減らしておけば、相続税を節税することができます

もっとも、生前贈与で税金逃れができるのであれば相続税の規定が骨抜きになってしまうため、生前贈与に対しては原則として贈与税が課税される規定を設けて、生前贈与をすることによる税金逃れを防止しています。そのため、単に生前贈与をするだけでは、相続税は節税できても代わりに贈与税がかかるため、トータルの節税には繋がりません。

ただし、贈与税の基礎控除額や非課税規定を活用すれば、生前贈与にかかる贈与税が課税されなくなるケースもあります。この場合は、「相続税は節税でき、贈与税がかからない」ため、トータルの節税に繋がります。

以下、贈与税がかからない生前贈与として、基礎控除額以内の贈与と贈与税の非課税規定について解説します。

基礎控除額以内の贈与を行う

まずは、贈与税がかからない生前贈与の最もポピュラーな方法として、基礎控除額を活用する方法を紹介します。先に解説したとおり、贈与税には年110万円の基礎控除額があるため、基礎控除額以内の贈与であれば贈与税はかかりません。

基礎控除額は毎年リセットされますから、毎年コツコツ贈与することで贈与税を節税できますが、特に毎年贈与を行う場合は先に解説した定期金の論点に注意が必要です。税務調査で定期金として認定されてしまうと、贈与を受けた孫に多額の贈与税が課される場合もあるため、定期金と認定されないような工夫が必要です。また、先に解説した名義預金の取り扱いにもご注意ください。

「相続税調査において祖父が孫名義で毎年積み立てていた預金が見つかり、多額の追徴税額を支払った」というケースを耳にしたことがあります。祖父母が良かれと思って積み立てた預金が原因で後に孫が苦労する羽目にならないためにも、生前贈与を行う際は税理士のアドバイスを受けることをおすすめします。

非課税の規定を使う

続いて、贈与税が非課税となる規定を紹介します。ここで紹介する規定は次の3つです。
ž

非課税の規定
  1. 孫が自宅を取得するための資金の贈与
  2. ž 孫の教育資金の贈与
  3. ž 孫が結婚、子育てをするための資金の贈与

孫が自宅を取得するための資金の贈与

それぞれの規定の要件、効果、注意点を簡単に解説します

(1) 要件

この規定の適用を受けるための主な要件は次のとおりです。

要件
  • ž 孫が20歳以上であること(贈与年の1月1日時点の年齢で判定します)
  • ž 贈与を受けた年における孫の所得税に係る合計所得金額が原則2,000万円以下であること
  • ž 贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与を受けた金額の全額を充てて住宅の新築などをすること
  • ž 贈与を受けた年の翌年末までにその住宅に住み始めること

(2) 効果

2020年4月から2021年12月末までの間に住宅新築等の契約を締結した場合、省エネ住宅は1,500万円、その他の住宅は1,000万円を限度に贈与税が非課税となります。

(3) 注意点

この規定の主な注意点は次のとおりです。

注意点
ž 孫は、贈与を受けた年の翌年3月15日(原則)までに、贈与税の申告書を提出する必要があります。ž 中古住宅の取得であってもこの規定の適用を受けることは可能ですが、個人である売主から購入した住宅の場合(つまり取引に消費税がかかっていない場合)は、非課税限度額が通常よりも500万円減ります

孫の教育資金の贈与

(1) 要件

この規定の適用を受けるための主な要件は次のとおりです。

要件
  • 金融機関との間に教育資金管理契約を締結すること
  • ž 教育資金管理契約を締結する時点で孫が30歳未満で、贈与年の前年における孫の合計所得金額が1,000万円以下であること

(2) 効果

1,500万円を限度に贈与税が非課税となります。

(3) 注意点

この規定の主な注意点は次のとおりです。
ž

注意点
教育資金の払い出しを行ったときは、一定期間内に領収証等を金融機関に提出する必要があります。ž 孫が30歳に到達した時点で教育資金管理口座に残高がある場合は、その残高に対して贈与税が課税されます

ž 贈与者たる祖父母が教育資金を贈与したあと3年以内に死亡した場合において、死亡の時点で孫が23歳以上かつ在学していないときは、教育資金管理口座の残高を遺贈により取得したものとみなされ、孫に対して相続税が課税されます。

孫が結婚、子育てをするための資金の贈与

(1) 要件

この規定の適用を受けるための主な要件は次のとおりです。

要件
  • 金融機関との間に結婚・子育て資金管理契約を締結すること
  • ž 結婚・子育て資金管理契約を締結する時点で孫が20歳以上50歳未満で、贈与年の前年における孫の合計所得金額が1,000万円以下であること

(2) 効果

1,000万円を限度に贈与税が非課税となります。

(3) 注意点

この規定の主な注意点は次のとおりです。
ž

注意点
  • ž 結婚・子育て資金の払い出しを行ったときは、一定期間内に領収証等を金融機関に提出する必要があります
  • ž 孫が50歳に到達した時点で結婚・子育て資金管理口座に残高がある場合は、その残高に対して贈与税が課税されます
  • ž 贈与者たる祖父母が死亡したときは、結婚・子育て資金口座の残高を遺贈により取得したものとみなされ、孫に対して相続税が課税されます

まとめ

以上、孫への生前贈与の注意点と相続税を節税する方法について解説しました。

孫への生前贈与につき、各種規定を上手に使えば重い税負担なく孫に財産を渡すことができる一方、気をつけなければいけないポイントも多くあるので、慎重に計画することをおすすめします。

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ABOUT US
税理士 友野祐司
税理士法人レガシィ勤務を経て2011年に響き税理士法人に入社、相続税専門の税理士として、横浜を中心に相続税申告のサポートをを行っています。どこよりも、素早い対応を心がけておりますので、少しでも相続税に関して、不安や疑問がありましたらお気軽にご相談ください。