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1,000万円の死亡保険金の相続税はいくら?申告は必要?

税理士友野
税理士友野

保険の見直しを行う場面や、遺言書を作成する場面で、「自分は〇〇万円の生命保険に入っているが、この〇〇万円に税金はかかるのだろうか」という疑問をお持ちになった方も多いのではないでしょうか。

死亡保険金に税金がかかるか否かは、主に①死亡保険金の金額、②保険金の受取人が相続人かどうか、③保険料を支払っていたのが誰か、④被相続人が持っていた財産の状況によって左右されます。たとえば、①死亡保険金の金額が1,000万円、②受取人が相続人、③支払者は被相続人、④被相続人の財産は他に現金500万円のみ、というケースであれば、この死亡保険金に相続税はかかりません。

一方、死亡保険金の金額が1億円だったり、保険金の金額が相続人でなかったりした場合は、死亡保険金に相続税がかかる可能性もあります。この記事では、1,000万円の死亡保険金を受け取った場合の課税関係について、相続税を中心に紹介します。

相続税の申告義務と死亡保険金の取り扱い

相続税の申告が必要な場合

相続税の申告は、次の場合に行う必要があります。

  1.  相続によって取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を上回る場合
  2.  配偶者の税額軽減または小規模宅地等の特例の適用を受ける場合ここにコンテンツを記載

①をもう少し簡単にいうと、「相続税額が発生する場合」です。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算するため、被相続人が残した正の財産(現金、不動産、生命保険金など)から負の財産(借金や未払税金など)を引いた金額が3,000万円以下であれば、相続税の申告を行う必要はありません。

このため、被相続人の死亡保険金1,000万円を相続人が受け取ったとしても、被相続人が他に見るべき財産(不動産、多額の預貯金や有価証券など)を持っていなかった場合は、相続税の申告を行う必要はありません(この場合、相続税額は0円ですから、相続税額を納付する必要もありません)

一方、被相続人が他に見るべき財産を持っていた場合は、もう少し詳細に検討する必要があります。

例えば
被相続人が自宅(土地建物合わせて1億円の価値)を持っていた場合において、相続人が被相続人の死亡保険金1,000万円を受け取ったときは、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることで相続税額を0円にすることが可能ですが、この場合は相続税額が0円であっても相続税の申告が必要です(その相続税の申告書には、死亡保険金の額も記載します)。

また、被相続人が現金1億円を持っていた場合において、相続人が被相続人の死亡保険金1,000万円を受け取ったときは、誰が総額1億1千万円の現金を受け取るかによって相続税額が変わります(全てを被相続人の配偶者が受け取る場合は、「配偶者の税額軽減」という特例の適用を受けることで相続税額を0円にすることが可能ですが、この場合は「小規模宅地等の特例」の適用を受ける場合と同じく相続税額が0円であっても相続税の申告が必要です)。

相続税額の計算における死亡保険金の取り扱い

「会社員である夫と専業主婦である妻」という家族構成が主流だった時代において、死亡保険金は残された家族の生活保障という色彩が濃いものであったため、相続税額の計算において特別な取り扱いが用意されています。具体的には、「500万円×法定相続人の数」で計算した金額が非課税となり、この非課税額を超えた金額が相続税の課税対象となります。

非課税額につき、法定相続人が被相続人の配偶者と2人の子どもの計3人だった場合の非課税額は、500万円×3人で1,500万円と計算できます。この場合、受け取った死亡保険金の額が1,000万円だとすると、1,000万円から1,500万円を引くとマイナスになりますから、この死亡保険金に対して相続税は課されません。

なお、この非課税の規定の適用を受けられるのは相続人に限られるため、相続人以外(たとえば被相続人の前妻)が死亡保険金を受けた場合はこの規定の適用を受けることはできません。また、相続人であっても、相続放棄をした人や相続権を失った人が死亡保険金を受け取る場合にも、この規定の適用を受けることはできないので注意が必要です。また、「法定相続人の数」の計算については、法定相続人のうちに相続放棄をした人がいたとしても、その放棄がなかったものとして計算します。

以上を踏まえて簡単な問題を出します。

問題
法定相続人が被相続人の配偶者と2人の子どもの計3人で子どものうち1人が相続放棄をしていた場合において、死亡保険金の受取人が次の人だったときの非課税額はそれぞれ何円でしょうか。

① 配偶者

② 相続放棄をした子ども

答え
①の非課税額は1,500万円、②の非課税額は0円です。

①の配偶者は相続人であって相続放棄をしたり相続権を失ったりした事実がないため、非課税の規定の適用を受けることができます。「法定相続人の数」の計算については、法定相続人のうちに相続放棄をした人がいたとしてもその放棄がなかったものとして計算するため、法定相続人の数を3人として計算します。よって、非課税額は1,500万円です。

また、②の子どもは相続人ではありますが相続放棄をしているため、非課税の規定の適用を受けることはできません。よって、非課税額は0円です。

死亡保険金と税金

死亡保険金の課税関係

ここまでは、死亡保険金が相続税の課税対象となる場合に絞って解説しました。

死亡保険金の課税関係は複雑で、①保険料の支払者と、②保険金の受取人が誰かによって受取人に課される税金の種類や計算方法が変わります。被相続人、被相続人の配偶者、被相続人の子どもの3人家族の場合における課税関係を下表にまとめました。

保険料を支払っていた人 保険金を受け取る人 課税関係
1 被相続人 被相続人の配偶者 配偶者に相続税が課税される
2 被相続人 被相続人の子ども 子どもに相続税が課税される
3 被相続人の配偶者 被相続人の配偶者 配偶者に所得税が課税される
4 被相続人の子ども 被相続人の子ども 子どもに所得税が課税される
5 被相続人の配偶者 被相続人の子ども 子どもに贈与税が課税される
6 被相続人の子ども 被相続人の配偶者 配偶者に贈与税が課税される

1と2は、保険料を支払っていた人が被相続人の場合です。この場合は、保険金を受け取る人に相続税が課税されます。

3と4は、保険料を支払っていた人と保険金を受け取る人が同一人物の場合です。この場合は、保険金を受け取る人に所得税が課税されます。

5と6は、保険料を支払っていた人が被相続人以外で、かつ保険料を支払っていた人と保険金を受け取る人が違う人物の場合です。この場合は、保険金を受け取る人に贈与税が課税されます。

所得税または贈与税が課される場合の税額

相続税が課される場合の税額は後ほど詳しく解説するので、まずは所得税または贈与税が課される場合の税額について簡単に解説します。

① 所得税が課税される場合(上記の3と4)

所得税法では、その性格によって所得を10種類に区分しています。死亡保険金を一時金(一括)で受け取った場合の所得区分は「一時所得」、年金(年〇〇円を××年間もらう方式)で受け取った場合の所得区分は「雑所得」です

まず、一時所得に該当する場合における所得税の課税対象となる金額は、「受け取った保険金の額から支払った保険料を引き、そこから特別控除額50万円を引いた金額」の2分の1です。たとえば、受け取った保険金の額が1,000万円、それまでに支払った保険料の額の合計額が800万円だとすると、所得税の課税対象となる金額は150万円の2分の1である75万円と計算できます。他に所得がない場合、この金額から各種所得控除(基礎控除、配偶者控除など)を引いた金額に税率を乗じることで所得税額を算出することができます。

例えば
他に所得がなく、かつ所得控除が基礎控除のみとした場合の所得税額は13,500円です。

次に、雑所得に該当する場合における所得税の課税対象となる金額は、「受け取った保険金の額からその金額に対応する支払い保険料を引いた金額」です。

例えば
1年あたり100万円を10年間受け取るという保険で、それまでに支払った保険料の額の合計額が800万円だとすると、毎年の所得税の課税対象となる金額は100万円から80万円を引いた20万円と計算できます。

この20万円は基礎控除額(48万円)よりも少ないですから、たとえば、他に所得がなく、かつ所得控除が基礎控除のみとした場合の所得税額は0円です。

② 贈与税が課税される場合(上記の5と6)

贈与税額は、1年間に贈与により受け取った財産から基礎控除額である110万円を引き、残額があればそれに贈与税率を乗じて計算します。

たとえば、被相続人の子どもが受け取った死亡保険金が1,000万円、被相続人の配偶者がそれまでに支払った保険料の額の合計額が800万円だとすると、被相続人の子どもに対して1,000万円から110万円を引いた890万円に贈与税率を乗じた金額、すなわち231万円の贈与税額が課税されます。贈与税の場合は、所得税の場合のように「支払った保険料の金額」が考慮されないので注意が必要です。

相続税が課される場合の税額シミュレーション

最後に、相続税が課税される場合(上記の1と2)の税額について、いくつかのケースを用いて解説します。

全てのケースに共通の前提

まずは、全てのケースに共通の前提として、次の前提を置きます。

  •  被相続人は今から20年前にSと離婚し、その5年後にPと再婚しています
  •  被相続人の法定相続人は、S及びPとの間にできた子ども2人の計3人です
  •  Sとの間にできた子どものうち1人は相続放棄をしています
  •  被相続人の死亡保険金を除く正味の相続財産の額は4,800万円とします
  •  生前、被相続人は生命保険に加入しており、その保険料は自己で負担していました
  •  ケース1と2は死亡保険金1,000万円を一時金で受け取るものとし、ケース3は死亡保険金を年金(1年100万円を10年間)で受け取るものとします

ケース1 死亡保険金(一時金)の受取人がPの場合

① 死亡保険金の非課税の規定の適用可否

まずはPが死亡保険金の受取人だった場合に死亡保険金の非課税の規定の適用を受けられるかを確認します。この生命保険は被相続人が保険料を支払っており、受取人はPですから、この死亡保険金は受取人であるPに対する相続税の課税対象となります。

次にPが死亡保険金の非課税の規定の適用を受けられるか否かを確認します。死亡保険金の非課税の規定の適用を受けることができるのは、相続人かつ相続放棄をしていたり相続権を失ったりしていない人です。これをPに当てはめると、Pは被相続人の配偶者であるため相続人に該当し、相続放棄をしていたり相続権を失ったりはしていないため、死亡保険金の非課税の規定の適用を受けることができます。

② 死亡保険金の非課税額の計算

死亡保険金の非課税額は、「500万円×法定相続人の数」で計算します。ここで、P自身を人数にカウントできるのは言うまでもないことですが、Sとの間にできた子ども1人が相続放棄をしていることから、相続放棄をしている人を人数にカウントしてよいかという疑問が生じます。

この点、法定相続人の数は法定相続人のうちに相続放棄をした人がいたとしてもその放棄がなかったものとしてカウントするため、相続放棄をした子どもも法定相続人の人数にカウントできます。よって、この場合の非課税額は500万円×3人で計算するため、非課税額は1,500万円です。

そして、Pが受け取る死亡保険金の額1,000万円は非課税額である1,500万円以下であるため、この死亡保険金に対して課される相続税額は0円です。

③ 相続税額と申告義務

ここまでで死亡保険金に相続税が課されないことはわかりましたが、死亡保険金以外の正味の相続財産の額が4,800万円あるため、これに対して相続税が課税されるかも確認します。

相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。

この「法定相続人」については、先ほどの死亡保険金の非課税額の計算のとき同じく相続放棄をした人もカウントしますから、相続税の基礎控除額は4,800万円と計算できます。正味の相続財産の額から基礎控除額を引くとちょうど0円ですから、この場合の相続税額は0円です。

なお、死亡保険金の非課税の規定は、相続税の申告を行わなくても受けることができるため、相続税の申告書を提出することも不要です。

ケース2 死亡保険金(一時金)の受取人がSの場合

① 死亡保険金の非課税の規定の適用可否

まずはSが死亡保険金の受取人だった場合に死亡保険金の非課税の規定の適用を受けられるかを確認します。この生命保険は被相続人が保険料を支払っており、受取人はSですから、この死亡保険金は受取人であるSに対する相続税の課税対象となります。

次にSが死亡保険金の非課税の規定の適用を受けられるか否かを確認します。死亡保険金の非課税の規定の適用を受けることができるのは、相続人かつ相続放棄をしていたり相続権を失ったりしていない人です。

これをSに当てはめると、Sは被相続人の配偶者でも子どもでも親でもないので、相続人には該当しません。したがって、この場合は死亡保険金の非課税の規定の適用を受けることはできません。

② 相続税額の計算

ケース2の場合は死亡保険金の非課税の規定の適用を受けられないので、死亡保険金1,000万円にその他の財産を加えた5,800万円から基礎控除額4,800万円を引いた1,000万円が相続税の税率を乗じる前の金額です。この場合の相続税額は全体で100万円となるため、この100万円を、財産を取得した割合で按分します。

例えば
4,800万円の財産をすべてPが取得したとすると、Sの相続税額は172,400円、Pの相続税額は827,500円と計算できます。

なお、被相続人の配偶者は、相続税の申告書を提出期限までに提出することによって「配偶者の税額の軽減」という制度の適用を受けることができます。この制度の適用を受けることで、正味の相続財産の額が1億6千万円までであれば相続税額がかからなくなるところ、Pが受けた財産は4,800万円であるため、この制度によってPが納付すべき相続税額は0円になります。

一方、被相続人の親、子ども、または配偶者以外の人が遺贈などによって財産を取得した場合は、原則として「相続税額の2割加算」の適用を受けることになります。Sは被相続人の親でも子どもでも配偶者でもないので、この2割加算の適用対象です。よって、Sが実際に負担することになる相続税額は172,400円の2割増しである206,800円です。

ケース3 死亡保険金(年金)の受取人がPの場合

ケース1とケース2は死亡保険金を一括で受け取った場合でしたが、死亡保険金を年金で受け取るケースもあります。年金で受け取る場合は、年金受給1年目は相続税が、2年目以降は所得税がそれぞれ課税されます。たとえば、死亡保険金の相続税評価額が600万円だとすると、600万円部分が相続税の課税対象、残りの400万円部分が所得税の課税対象となります。

相続税部分について、死亡保険金を年金で受け取る場合も非課税の規定の適用を受けることができるため、「500万円×法定相続人の数」の金額が非課税となります。ケース3の非課税限度額はケース1と同様の1,500万円ですから、相続税部分の相続税額は0円です。

まとめ

以上、1,000万円の死亡保険金を受け取った場合の課税関係について、相続税を中心に紹介しました。相続税が課される死亡保険金の場合は、保険金の受取人が相続人か否かで税額が変わります。

残された方に思わぬ相続税を負担させることのないよう、ご自身の生命保険の「保険料受取人」が意図した方になっているかを確認されることをおすすめします。

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ABOUT US
税理士 友野祐司
税理士法人レガシィ勤務を経て2011年に響き税理士法人に入社、相続税専門の税理士として、横浜を中心に相続税申告のサポートをを行っています。どこよりも、素早い対応を心がけておりますので、少しでも相続税に関して、不安や疑問がありましたらお気軽にご相談ください。