
相続税は人の死亡により発生するため、予期せずに訪れることが多く、不慣れで慌ただしい状況の中で申告や納税を行う必要があります。
そのような不慣れな手続きの中で、農地が相続財産にあることを知らなかった、農業を引き継ぐ予定は無いのに農地を遺産として取得する必要がある、等と相続財産に農地がある場合には、相続人が困るような事態が起きてしまいがちです。
今回は、農地を相続したときにやるべきことと、農地の評価方法や利用の出来る特例について紹介します。
目次
この記事の監修者

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
やるべき4つのこと
農業を続けると決める
農地を保有していた人が亡くなった場合、まず相続人のうち誰がその農地を遺産として相続をするか、また相続後に農業を続けるかについて、相続人の間で定める必要があります。
これは下記で紹介します農地等を相続した場合の納税猶予の特例を利用するための要件の中に、対象の農地が相続税の申告期限までに遺産分割されたものであることと、相続人が相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業経営を行うと認められる人、という内容が含まれるためです。
よって、これらを定めることが農地の相続税をゼロとするために最初にやるべきことといえます。
農業委員会への届出
農地を取得する人が決定したら、その取得した人は農業委員会へ届出をする必要があります。
取得する人が決定する前であれば、相続人全員が届出を行います。
この届出は、耕作放棄地や所有者不明の田畑が無いよう有効活用させるために、農地の権利取得を農業委員会が把握するためのものであり、相続の開始時から10ヶ月以内に行う必要があります。
農地の相続登記
農地を取得する人は、その農地の持ち主を被相続人から変更をするために、法務局にて所有権移転登記をする必要があります。
所有権移転登記を行い農地の所有者が明らかになることで、その農地に対する権利を法的に主張することが出来ます。
農地の相続税の申告、納付
上記の手続きを行ったうえで、農地の相続税の申告及び納付が必要となる場合があります。
農地を含む相続財産の合計額が基礎控除額を上回る場合、農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例を受けようとする場合には相続税の申告が必要であり、申告期限は相続の開始時から10ヶ月以内です。
相続税の申告や納付が必要であるかの判断には相続財産の正しい評価が不可欠です。
農地はどのように評価をされ相続税が課税されるのかについて下記では紹介します。
農地の相続税

農地の評価方法
相続税は相続財産の金額に対して課税をされます。
農地の相続財産としての評価方法は、農地の区分に応じて異なります。
その区分とは純農地、中間農地、市街地周辺農地、市街地農地の4つであり、どの区分として判断をするかは国税庁の公表をする評価倍率表で確認をすることが出来ます。
純農地
純農地とは、農業振興地域内にある一般に宅地の影響を受けない農地が該当をします。
その農地の固定資産税評価額に、国税局長が定める一定の倍率を乗じて評価する倍率方式を用いて評価額を決定します。
中間農地とは
中間農地とは、市街地として発展する可能性のある場所にある市街化の見込まれる農地等が該当をします。
純農地と同様に倍率方式を用いて評価額を決定します。
市街化周辺農地とは
市街化周辺農地とは、市街地区域に指定されていない地域にある許可を受けることで宅地となる農地が該当をします。
その農地が市街地農地であるとした場合の価額の80%に相当する金額によって評価額を決定します。
市街地農地とは
市街地農地とは、市街化区域内にある農地等が該当をします。
市街地農地の価額は、宅地比準方式又は倍率方式により評価額を決定します。
宅地比準方式とは、その農地が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額からその農地を宅地に転用する場合にかかる通常必要と認められる1㎡当たりの造成費に相当する金額を控除した金額に、その農地の地積を乗じて計算した金額により評価する方法をいいます。
農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例
農地には上記のいずれかの方法によって評価額が決定をされ、その評価額に対して相続税が課税をされますが、農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例を利用することで、その納税が猶予され、かつ納税の免除を受けることが出来ます。
納税猶予の特例を受けるためには
納税猶予の特例を受けるためには下記の被相続人、相続人、農地において、それぞれの要件を満たす必要があります。
被相続人の要件
下記のいずれかを満たす必要があります。
- 死亡の日まで農業を営んでいた人
- 農地等の生前一括贈与をした人
- 死亡の日まで相続税の納税猶予の適用を受けていた農業相続人又は農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、障害、疾病などの事由により自己の農業の用に供することが困難な状態であるため賃借権等の設定による貸付けをし、税務署長に届出をした人
- 死亡の日まで特定貸付け等を行っていた人
相続人の要件
下記のいずれかを満たす必要があります。
- 相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後も引き続き農業経営を行うと認められる人
- 農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、特例付加年金又は経営移譲年金の支給を受けるためその推定相続人の1人に対し農地等について使用貸借による権利を設定して、農業経営を移譲し、税務署長に届出をした人
- 農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、営農困難時貸付けをし、税務署長に届出をした人
- 相続税の申告期限までに特定貸付け等を行った人
農地の要件
下記のいずれかを満たす必要があります。
- 被相続人が農業の用に供していた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
- 被相続人が特定貸付け等を行っていた農地又は採草放牧地で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
- 被相続人が営農困難時貸付けを行っていた農地等で相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
- 被相続人から生前一括贈与により取得した農地等で被相続人の死亡の時まで贈与税の納税猶予又は納期限の延長の特例の適用を受けていたもの
- 相続や遺贈によって財産を取得した人が相続開始の年に被相続人から生前一括贈与を受けていたもの
納税の免除を受けるためには
下記のいずれかに該当をした場合に免除がされます。
- 特例の適用を受けた農業相続人が死亡した場合
- 特例の適用を受けた農業相続人が特例農地等の全部を租税特別措置法第70条の4の規定に基づき農業の後継者に生前一括贈与した場合
- 特例農地等のうちに平成3年1月1日において三大都市圏の特定市以外の区域内に所在する市街化区域内農地等について特例の適用を受けた場合において、当該適用を受けた農業相続人が相続税の申告書の提出期限の翌日から農業を20年間継続したとき
出典:国税庁 No.4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4147.htm
まとめ
上記のように、農地を相続した場合には、納税猶予の特例を利用することで、納税の猶予、さらには免除を受けることが出来、相続税をゼロにすることが出来ます。
農地を相続してお困りの方や、相続税の試算を行いたい方は、是非弊社にご相談ください。

戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
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