個人が相続により事業承継したときにチェックすべきポイント3選

税理士友野
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相続により個人が事業承継したときに、何をどういう風にチェックすればよいか分からないということが少なくないようです。通常、個人が相続により事業承継したときには非常に大変です。ただでさえ先代事業者が亡くなった時は大変なのに、相続にあたって何をどういう風にチェックすればよいか分からないと困ってしまいますよね。

今回は、個人が相続により事業承継したときにチェックすべき3つのポイントについて、詳しく解説していきます。

そもそも相続による事業承継ってどういうもの?

最初に「相続による事業承継」がどういうものか捉えておきましょう。

法人の事業承継は、先代事業者から代表取締役の地位と株式を引継ぎ、法人の支配権を得ることで完了します。一方、個人事業主の承継は、後継者が事業を開業することと、先代事業者から事業用資産・債務を引き継ぐことで完了します。個人事業主の事業用資産・債務を引き継ぐ方法は、売買、贈与、相続のいずれかに当てはまります。

売 買 先代事業者の事業用資産・債務を売却する方法です。
贈 与 先代事業者の事業用資産・債務を、先代事業者が生きているうちに、後継者に無償で譲る方法です。
相 続 先代事業者が死亡した後、遺言などによって、事業用資産・債務が後継者に移転される方法です。

相続についてより詳しく

相続では相続人である後継者に相続税が課されます。相続発生後、遺言があれば遺言に基づく財産分割、遺言が無い場合は遺産分割協議が必要です。相続税は、亡くなった方の相続時の財産から債務や葬儀費用を除いた額が基礎控除額を超えている場合に、課税対象となります。

基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算されます。

例えば

相続人が2人の場合は4,200万円となり、財産と債務等の差額がこの金額を超える場合に相続税がかかる、ということになります。

相続税については小規模宅地等の特例などの適用について把握する必要があります。詳細は後述します。

個人が相続で事業承継すると凄く大変!なぜ?

法人の事業承継は具体的には自社株の引き継ぎを行うことです。そのため、会社の所有権である自社株の評価額や税金を検討することになります。

一方、個人事業主の事業承継では、保有する事業用財産すべてが引き継ぎの対象になり、個々に財産評価をしなくてはならないため、長い時間と大きな手間がかかります。

また、資産だけでなく債務も引き継ぐことになるため、相続人の資金力と引き継いだ財産で債務を弁済できるかどうかも大きな問題になります。

相続人としての手続きも、被相続人の手続きも必要

個人事業主の相続による事業承継は、相続人・被相続人の両方の面から手続きが必要です。そして、相続人の手続きも被相続人側の手続きも相続人が行うことになります。

相続により事業承継した場合、しっかりとしたチェックが必要

このように相続により事業承継した場合、相続人は非常に大変です。事業承継にあたり、様々な手続きが必要になります。

そこで特にしっかりと確認しておきたいポイントを3つ説明します。

ポイント1 : 青色申告についてチェックする

日本の所得税は、納税者が自ら税額を正しく計算して申告を行い、納税することになります。1年間で納めるべき所得税の金額を正しく計算して申告するためには、日々の取引の状況を記帳し、取引に伴い作成したり・受け取ったりした書類を保存しておく必要があります。

ここで、一定水準以上の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得税について有利な取扱いが受けられる制度があります。この制度が青色申告です。まずはこの青色申告についてチェックしましょう。

相続の際には、亡くなった方の青色申告を取りやめる手続きと相続人の青色申告の承認を受けることが必要になります。

亡くなった方の青色申告を取りやめる

相続にて青色申告を行っていた事業を承継する場合、亡くなった方の青色申告を取りやめる必要があります。その手続きとしては、青色申告の取りやめ届出書を、事業を廃止する年の翌年3月15日までに提出する必要があります。

自分の青色申告の承認を受ける

相続により事業承継する相続人自身が青色申告を行えるように、自分自身の青色申告の承認を受けましょう。

相続人が以前から別の事業を営んでおり既に青色申告を行っている場合には改めて書類を提出する必要はありませんが、それ以外の場合には手続きが必要です。この場合、青色申告承認申請書と、必要であれば、青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書を提出する必要があります。

青色申告承認申請書

青色申告の承認を受けていた被相続人の事業を相続により承継した場合は、相続開始を知った日の時期に応じて、それぞれ次の期間内に、青色申告承認申請書を提出する必要があります。

相続開始を知った時期 期限
死亡の日がその年の1月1日から8月31日までの場合 死亡の日から4か月以内
死亡の日がその年の9月1日から10月31日までの場合 その年の12月31日まで
死亡の日がその年の11月1日から12月31日までの場合 その年の翌年の2月15日まで

青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書

同じ生計で暮らしている配偶者やその他の親族が所得税の納税者の経営する事業に従事している場合で、かつ、納税者がこれらの人に給与を支払っている場合でも、原則としては、この給与は必要経費にはなりません。しかし青色申告を行っていて、かつ、一定の要件を満たす人については、特別の取扱いが認められています。

特別の扱いを受けるためには、青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した人や新たに専従者がいることとなった人は、その開業の日や専従者がいることとなった日から2カ月以内)に青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書を提出する必要があります。

ポイント2 : 消費税の納税義務の承継についてチェックする

先代事業者の2年前の課税対象売上高を基準に納税義務が判定される

相続の場合、先代事業者の相続から2年前の年間課税対象となる売上高をもとに、納税義務が判定されます。そのため、2年前に課税対象となる売上高が1,000万円を超える事業を相続で承継した場合、後継者は承継1年目から消費税の納税義務が生じます。

簡易課税制度や納税義務の選択届出書の効力は承継されない!

被相続人が提出した簡易課税制度選択届出書の効力は、相続により当該被相続人の事業を承継した相続人には及びません。相続人が簡易課税制度の適用を受けようとするときは、新たに簡易課税制度選択届出書を提出しなければなりません。

また、被相続人が提出していた課税事業者選択届出書は、あくまでも被相続人についてだけ適用されるものであり、事業を承継した相続人についてまで適用されるものではありません。したがって、相続人が引き続き課税事業者を選択したい場合には、あらためて「課税事業者選択届出書」を所轄税務署長に提出しなければなりません。

ポイント3 : 相続税への影響をチェックする。

小規模宅地等の特例(特定事業用宅地等、貸付事業用宅地等)

小規模宅地等の特例は、事業用の敷地を相続した場合に、相続税評価額が一定の割合で低くなる制度です。

事業用の土地を承継者である相続人が相続すると、400平方メートルを上限として評価額が80%減額されます。ただし、承継者が相続税の申告期限までに事業を承継・維持していることと、土地を相続税の申告期限までに保有していることが条件です。

なお、小規模宅地等の特例を用いることで相続税額が0円になったとしても、相続税の額が基礎控除を超えている場合は、申告書を期限内に提出する必要があります。

事業用資産はどのくらいあるか

相続税の計算にあたり、事業用資産はどのくらいあるか確認しましょう。

事業用財産すべてが引き継ぎの対象

個人事業主に相続が発生した場合、事業用資産も相続税の課税対象となります。事業用財産のすべてが引き継ぎの対象です。

個々に財産評価をしなくてはならない

事業用資産の評価額は、原則として1個または1組ごとに評価します。

個人版事業承継税制はつかえるか

個人版事業承継税制とは個人事業主から相続や贈与で事業を引き継いだ後継者が、一定の要件のもと、贈与税や相続税の納税猶予を受けられる制度です。

この個人版事業承継税制の適用を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。

適用条件
  1. 先代事業者と後継者の両方が青色申告を行っている
  2. 先代事業者の事業を確実に承継するための具体的な計画を記載した「個人事業承継計画」を策定し、認定経営革新等支援機関(税理士、商工会、商工会議所等)から所見を記載してもらう
  3. 先代事業者、後継者共に要件を満たしていることを証明してもらうため、経営承継円滑化法の認定を受けている
  4. 税務署に対して相続税の額に見合う担保を提供する
  5. 個人版事業承継税制の対象となるのは、先代事業者の事業の用に供されていた以下の資産で、相続の日の属する年の前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されていたものに限ります
    1. 宅地等(400㎡まで)
    2. 建物(床面積800㎡まで)
    3. 建物(床面積800㎡まで)以外の減価償却資産で次のもの

a. 固定資産税の課税対象とされているもの

b. 自動車税・軽自動車税の営業用の標準税率が適用されるもの

c. その他一定のもの(貨物運送用など一定の自動車、乳牛・果樹等の生物、特許権等の無形固定資産)

まとめ

個人が相続により事業承継したときにチェックすべきポイント3選について説明してきました。どのようなポイントをチェックすればよいかよく理解できたという方もいらっしゃることでしょう。相続により個人が事業承継するには、手続きが複雑であるため、ぜひポイントを抑えた上で、手続きを行ってください。

正しい相続を行い、事業を適正に継続していきましょう。

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ABOUT US
税理士 友野祐司
税理士法人レガシィ勤務を経て2011年に響き税理士法人に入社、相続税専門の税理士として、横浜を中心に相続税申告のサポートをを行っています。どこよりも、素早い対応を心がけておりますので、少しでも相続税に関して、不安や疑問がありましたらお気軽にご相談ください。