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遺贈(いぞう)と相続って何が違う?違いを分かりやすく解説します!

税理士桐澤
税理士桐澤

相続について色々と調べていると「遺贈」という言葉もよく出てくるので、その意味や「相続」との違いについて疑問に思うかもしれません。

相続と遺贈は似たような意味を持ちながら実は全く異なるもので、法的な効果にも違いが出てきますからしっかり押さえておきたいものです。

特に遺言書を作成する場面では「相続させる」と「遺贈する」という表現の使い分けが必要で、違いを理解していないとどちらを使うべきか判断できません。

相続と遺贈の違いを端的に述べると、「遺贈」は被相続人が遺言書によって自らの財産を他者に無償で譲ることをいい、「相続」とは民法で定められるルールに従って一定の相続人に財産の所有権が移転することをいいます。

簡単に説明すると以上のようになりますが、本章ではより詳しく遺贈と相続の違いに焦点を当てて見ていきますので、ぜひ参考になさってください。

「相続」は法定相続人だけに使える

まず「相続」についてですが、遺言書内では例えば「〇〇に財産□□を相続させる」というような形で用いられます。

「相続」できるのは法定相続人のみですので、民法で定められた法定相続人に対してしか用いることができません。

法定相続人は被相続人の配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹、あるいは一定の代襲相続人など民法で認められた者のみです。

「相続させる」ことができるのは上記の人物に限られ、それ以外の者に相続させることはできません。

ですから例えば友人に財産を譲りたい場合、「友人の山田太郎君に財産□□を相続させる」というのは間違いになります。

法定相続人以外は「遺贈」を用いる

友人や知人など、法定相続人以外の人物に財産を譲りたい時は遺言書内で「遺贈する」を用います。

前項の例では「友人の山田太郎君に財産□□を遺贈する」が正解です。

相続も遺贈も被相続人の死亡という事実をもって、被相続人以外の人物に財産を移転させる効果がありますが、その相手によって使い分ける必要があるということです。

ちなみに遺贈によって財産を譲り受ける者を「受遺者」と呼びます。

さてここで一つお伝えしたいことがあります。

前の項で「相続」は法定相続人にしか使えないとお話ししましたが、「遺贈」については財産を譲る相手に制限がありません。

そのため法定相続人にも「遺贈する」と遺言書で書くことはできます。

「相続」=法定相続人にしか使えない

「遺贈」法定相続人にも使えるし、それ以外にも使える

まとめると上記のようになるわけですが、法定相続人には「相続」を使うべきで、可能であったとしても「遺贈」を使うべきではありません。

その理由を以下でお話しします。

相続と比べた遺贈のデメリット

法定相続人以外には「遺贈」しか使えないのはそれとして、遺贈は相続に比べて以下のようなデメリットがあるので、法定相続人に対しあえて「遺贈する」を使うことは避けるようにしましょう。

①不動産登記手続きにおけるデメリット

相続によって不動産を者は、不動産の所有権移転登記を単独で行えます。

一方で遺贈より不動産を取得した者は、所有権の移転登記を他の法定相続人と共同で行う必要があります。

相続争いなどなんらかのトラブルが生じているケースでは、登記に協力を得られず手続きが進まないということも考えられます。

もし法定相続人に「遺贈する」を用いた場合、上記のような問題が生じる可能性があるので「相続させる」と書いた方が無難です。

②相続税の二割加算のデメリット

被相続人の一親等の血族(代襲相続人である孫を含む)及び配偶者“以外”の者は相続税の額が二割加算されるというルールがあります。

兄弟姉妹や代襲相続人ではない孫、友人などの第三者はこの二割加算の対象になります。

友人などは「遺贈」しか使えないのでそもそも二割加算の対象ですが、法定相続人である兄弟姉妹は二割加算の対象にならないよう「相続させる」を使うのが安全です。

③農地取得にかかるデメリット

農地を遺贈によって取得する場合、農地法のルールにより地元の農業委員会等の許可が必要になることがあります。

一方、相続によって取得する場合は許可が不要です。

④借地・借家権取得にかかるデメリット

被相続人が借地権や借家権を保有している場合、その権利を「遺贈」によって引き継ぐには賃貸人の承諾が必要になります。

これが「相続」による場合、同人の承諾は不要です。

遺贈の種類による取り扱いの違い

ところで、遺贈には「特定遺贈」と「包括遺贈」の二種類があります。

前者は「不動産〇〇を遺贈する」など財産を特定する遺贈方法で、後者は「遺産の三分の一を遺贈する」など特定の財産を指定せず、財産の割合を指定するものです。

特定遺贈では受遺者は被相続人の負債を引き継ぎませんが、包括遺贈の受遺者は相続人と同様に被相続人の負債を引き継ぐ責任も生じます。

また包括遺贈の場合で財産を受け取りたくない場合、遺贈があることを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で遺贈にかかる遺産放棄の手続きを取らなければなりません。

特定遺贈の方はこうした手続きは不要です。

同じ遺贈でもこうした違いがあることを覚えておきましょう。

遺贈を考える際は遺留分に注意すること

遺贈は法定相続人以外の人物にも自由に遺産を分け与えることができますが、兄弟姉妹以外の法定相続人には遺産の最低取り分である「遺留分」の権利があることに注意が必要です。

遺留分の権利を侵害する遺贈をしてしまうと、受遺者と相続人の間でいさかいやトラブルが生じる可能性があります。

遺贈を考える際には、できるだけ遺留分に配慮した内容にすることが望まれます。

まとめ

この回では遺贈と相続の違いについて取り上げて見てきました。

人の死亡という事実をもって財産を移転させる点についてはどちらも同じですが、財産を譲る相手に違いがあります。

遺言書内では、法定相続人に対しては「相続させる」を用い、それ以外には「遺贈する」という表現を用いるようにしましょう。

「遺贈」にも種類があり、特定遺贈か包括遺贈かで取り扱いに違いが出ることもあります。

細かい違いを理解するのは大変ですので、遺産の分配を考えるにあたっては関係者に不都合がでないよう、専門家のアドバイスを受けながら進めると安心です。

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ABOUT US
税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。