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絵画や盆栽・宝石などの美術品の相続税評価はどうなる?

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税理士桐澤
税理士桐澤

絵画や盆栽・宝石などの内、特に価値のある美術品は数百万円・数千万円するようなものもあります。

そのような高価な美術品を相続する場合、相続の方法や税金についてしっかりと知って正しく評価しないと、思わぬトラブルに巻き込まれるかもしれません。そこでこの記事では、美術品の相続や税金について解説します。

この記事の監修者

税理士桐澤

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。

美術品の相続税評価方法

沢山の巻物

定義

  • 絵画とは

絵画については、「高価な額縁に入れられた著名な作家の作品」といった漠然なイメージを持たれている方も少なくないかもしれません。一般的に、平面上に各種の顔料等により物の形や姿をデザインしたものを総称して、「絵画」と呼びます。切り絵や版画も絵画に含まれます。

  • 骨董品とは

骨董品には「古くて価値あるもの」といったざっくりとしたイメージをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。1934年にアメリカで制定された通商関税法の中では、製造から100年を経過した手工芸品・工芸品・美術品が骨董品であると定義されています。一般的な感覚でいえば、数十年前に作られたものも総称して骨董品と捉えているのではないでしょうか。

絵画や骨董品と呼ばれるかどうかは、その物の価値ではなく、外形や作られた歴史から判断するのが良いとされています。被相続人がこういった高価な物を集める趣味があった場合には、注意が必要です。

評価方法

美術品は次の金額を参考にして評価します。

  • 売買実例価格
  • 精通者意見価格

美術品の評価のポイントとして、物によってその評価が大きく異なることが挙げられます。世界に1点しかないような価値ある絵画の評価額を、ネット情報などで調べた売買実例価格だけで決めてしまうのは大変危険です。美術品の多くは1点ものであり、市場がないからです。

さらに、値幅も広すぎることも美術品の相続税評価を行いにくい理由として挙げられます。正しい評価額より安く評価してしまうと、後々税務調査が入った際、本来はこの評価額のはずだと指摘され、追徴税を取られる可能性があります。美術品の評価方法は、その価値によって使い分けた方が良いでしょう。

高価なもの

価値が数百万・数千万円になるような美術品は、専門家の鑑定をしっかり受けた精通者意見価格で評価を行いましょう。

では実際、具体的にはどのようにすればよいのでしょうか?”詳しい人”に”いくらで売れるか”、”聞く”ということです。”売却金額”=”換金価値”と考えるのが通常です。そのように評価を行えば、税務署から特別な指摘を受けることはないでしょう。何より安心して相続税の申告を行える点は大きいと言えます。

比較的安価なもの

価値が数十万円程度の美術品については、相続税の計算上、相続財産に個別記載はせず、家具家電などの家庭用財産に含めてしまいます。美術品の全てを個別に鑑定してもらい、相続税評価額を決めた方が確実だと言えなくもありません。しかし家庭用財産に含めて捉えるべき美術品にまで、一つ一つ鑑定料を支払う必要はないと言えます。

そのため、このような比較的安価な美術品については、リサイクルショップなどに持って行き、買取価格を査定してもらうと良いでしょう。リサイクルショップの店員さんは、美術品鑑定士のような美術品の専門家ではありませんが、無料で査定して貰えます。そして実際にその店で売る場合にはその金額となるのですから、その鑑定額が美術品の価値であるといえる根拠になります。

事業者が所有している美術品

美術品の販売事業者が所有している美術品は、棚卸商品等として評価します。事業者の確定申告にかかる決算書に記載してあるその美術品の帳簿額を、そのまま評価額とすることができます。

美術品は納税にメリットがある

電卓と黒板

特定美術品についての相続税の納税猶予及び免除制度

特定美術品についての相続税の納税猶予及び免除制度の対象となる「特定美術品」とは、「認定保存活用計画」に記載された次に掲げるものをいいます。

  • 重要文化財として指定された絵画、彫刻、工芸品その他の有形の文化的所産である動産
  • 登録有形文化財(建造物を除きます。)のうち世界文化の見地から歴史上、芸術上又は学術上特に優れた価値を有するもの

「認定保存活用計画」とは、文化財保護法に規定する認定重要文化財保存活用計画又は認定登録有形文化財保存活用計画のことです。特定美術品についての相続税の納税猶予及び免除になるのは、以下の場合です。

特定美術品についての相続税の納税猶予及び免除
寄託先美術館の設置者と特定美術品の寄託契約を締結し、認定保存活用計画に基づき、その特定美術品をその寄託先美術館の設置者に寄託していた被相続人から、相続又は遺贈によりその特定美術品を取得した寄託相続人が、その特定美術品の寄託先美術館の設置者への寄託を継続する場合。

相続税の納税猶予及び免除については、次の通りです。

相続税の納税猶予及び免除
その寄託相続人が納付すべき相続税の額のうち、その特定美術品に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予され、寄託相続人の死亡等により、納税が猶予されている相続税の納付が免除されます。

「寄託先美術館」とは、博物館法に規定する博物館又は同法の規定に基づき博物館に相当する施設として指定された施設のことをいいます。「寄託契約」とは、特定美術品の所有者と寄託先美術館の設置者との間で締結された特定美術品の寄託に関する契約で、契約期間、特定美術品を適切に公開する旨、所有者から解約の申入れ(一定のものを除きます。)をすることができない旨の記載があるもののことです。この特例は、平成31年4月1日以降に相続又は遺贈により取得をする特定美術品に係る相続税について適用されます。

被相続人は、特定美術品について、文化財保護法の規定に基づき保存活用計画に係る文化庁長官の認定を受けていることが必要になります。寄託相続人は、認定保存活用計画に関する手続として、重要文化財については計画の変更の認定申請を、登録有形文化財については新たな計画の認定申請を、文化庁長官に行うことが必要となります。また、特定美術品の価格評価の申請を文化庁長官に行うことが必要です。

注意! ※ 価格評価の申請は相続開始後8か月以内に行う必要があります。

なお、文化庁長官から通知された上記の申請に係る特定美術品の価格の評価に関する「評価価格通知書」の写しを相続税の申告書に添付する必要があります。被相続人が美術品を大切にしていても、相続で持ち主が変わると管理不十分で破損してしまったり、売却されてしまうなどで、次の世代に引き継がれていかないことが大きく問題視されています。そのため国はこの制度を作ることで、個人が所有している非常に価値ある美術品が、美術館などへ寄託されるように促しています。

特定登録美術品は物納OK

美術品は相続税の物納に充てることができます。物納とは、金銭で相続税を納付することが困難な場合に、相続した財産を相続税の支払いに充てることができる制度です。適用を受けるためには一定の申請を行い許可を受ける必要があります。

また相続税の物納に充てることができる財産には順位があります。通常、美術品の順位は第3順位です。しかし、その美術品が特定登録美術品である場合には、その順位にかかわらず、不動産や上場株式等と並んで優先的に物納に充てることができます。

順 位財産種類
第1順位不動産や上場株式等
第2順位非上場株式等
第3順位自動車や美術品等の動産

特定登録美術品とは、登録美術品の中でも、相続開始前から登録されていたものです。登録美術品とは、下記のどちらかです。

登録美術品
  • 我が国の重要文化財や国宝に指定されている作品
  • 世界文化の見地から歴史上,芸術上又は学術上特に優れた価値を有する作品

税務署によるチェック

税務署の建物

美術品には、不動産や自動車のように名義がありません。そのため、誰がどの美術品を所有しているのかすぐには分からない面があります。そうすると「美術品は相続税の申告を行わないでもバレないのでは?」と考える方もいらっしゃることでしょう。しかし、現実はそう甘くありません。

税務署の情報網は凄まじく、美術品の申告漏れはバレます。美術品等を販売している事業者は、誰にどの美術品を販売したかを税務署に聞かれた場合、正直に答えるケースがほとんどだと想定されます。さらに税務署は、百貨店などの顧客リストまでも入手することができ、高価な美術品を購入するような富裕層については、専用のデータベースを作成して、資産の全体を大まかに把握できるようにしています。

ただし、これは資産が1億円を超えるような富裕層の話です。そもそも相続税は、相続があったとしてもかからない人がほとんどの税金です。そして相続税がかかったとしても、ほとんどの人は相続税額が多額になりません。

美術品の処分

処分のプレート手で持っている

美術品を相続しても、管理の手間が大きな負担となってしまうなどの理由で手放したいケースもあるでしょう。美術品を処分するには、次のような方法があります。被相続人が大切にしていたものである美術品なので、最も良い処分の方法を検討してみましょう。

国などへ寄贈する

相続税の申告期限までに、国・地方公共団体などへ美術品を寄贈した場合、その美術品については相続税は非課税になります。寄贈を行う期限は、相続税申告期限までです。被相続人が死亡した後からでも寄贈を検討することができることは大きなメリットです。

美術館へ寄託する

寄託を行えば、美術品の所有権は自身が持ったままで、美術館でプロに管理してもらうことができます。特に絵画は、気温や湿度等をきちんと管理しなければすぐにカビが生えてしまうので、寄託はおすすめです。また上で解説した通り、一定の要件を満たす場合には納税猶予を受けることもできます。

売却する

質屋や第三者などに売却することも、選択肢の1つです。売却を行えば現金として相続できます。ただし、その美術品の評価額と同じ金額で売れるわけではない点に注意しましょう。仮に運よく購入価格より高く売れた場合にも、注意する必要があります。

1個または1組の売却価額が30万円を超えるものを売って利益が出た場合は、その利益の金額や他の譲渡による利益の金額によっては、譲渡所得として所得税がかかります。ケースによって所得税がかかったりかからなかったりするのは、譲渡所得には50万円の特別控除があるからです。

廃棄またはタダで譲る

被相続人が大切にしていたものと思うと少し忍びないですが、不要なものをいつまでも家に置いておくのも負担ですし、大きい美術品であれば尚更です。そのため、思い入れのないような美術品については、思い切って廃棄しても良いかもしれません。

また自分にとっては不要なものでも、それを必要としている人もいるかもしれません。身近にそのような人がいる場合には、タダで譲ることを検討しても良いでしょう。また今流行りのスマホのフリマサイトなどに出品してみると、意外な高値が付くこともあるかもしれません。

美術品の鑑定が必要な場合

ビジネスマンが虫眼鏡を持っている

ここからは、美術品の鑑定が必要な場合に関して、より具体的なケースを紹介します。例えば、以下のような場合には、相続の前に鑑定が必要です。

相続前鑑定が必要な場合
  • 相続人同士で平等に遺品を相続したい場合
  • 美術品に相続税が発生するかわからない場合(価値がわからない)

相続人同士で平等に遺品を相続したい場合

まず、相続人同士で平等に遺品を相続したい場合は、美術品の鑑定を行ってもらうとよいでしょう。理由としては、財産を平等に分けるためには、相続税評価額を客観的に正しく算出する必要があるからです。複数人で美術品を相続するというケースでは、相続の前に鑑定を行うと良いでしょう。

美術品に相続税が発生するかわからない場合(価値がわからない)

続いて、美術品に相続税が発生するのかが分からない場合や、美術品の価値が全く分からないという場合にも、相続税評価額を正しく算出する必要があります。

追徴課税を支払うことにならないために、美術品に相続税が発生するのか分からないというケースでも、鑑定に出していただくと正しく評価してもらうことができます。買取をしてもらう場合は、実際の取引金額が明確になります。申告額と取引金額に大きな乖離がある場合には、税務署に指摘される可能性が高くなります。

買取を検討されている場合には申告に考慮できるよう、早めにした方が良いと思います。すぐには買取してもらうか決められないといった場合には、あとで乖離が生じないよう、事前に鑑定に出しておくことをおすすめします。

まとめ

一般家庭で高価な絵画や骨董品が見つかることはあまりないと思います。しかし資産家の遺産相続では高価な美術品が含まれることがあります。被相続人の残した資産に高価な物はない、と決めつけるのではなく、高価なものは本当にないか、今一度探していただくことをお勧めします。

響き税理士法人のスタッフ

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税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。