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内縁の妻に相続が発生する前にやらなければいけないこと

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税理士桐澤
税理士桐澤

様々な夫婦のあり方が認められ、また必ずしも婚姻関係が男女で結ばれるものでは無いという認識が広まる現代において、内縁関係として社会生活を送っている人は多くいます。しかし相続税の分野においては、そのパートナーに財産を遺すにあたり、婚姻関係を長年築いてきた夫婦の方が優遇されています。それではパートナーに財産を遺すにはどうしたら良いのでしょうか。

今回は内縁の妻に相続が発生する前にやらなければいけないことをご紹介いたします。

男性が女性より財産を多く持っていて先に死亡するという場合ばかりでは無いですが、ご紹介の便宜上、財産を受け取る側を内縁の妻としております。ご容赦ください。

この記事の監修者

税理士桐澤

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。

内縁の妻は相続財産を受け取ることが出来ない⁈

遺言書と骨壷

内縁の妻は、相続開始以前に対策を行わないと、財産を受け取ることが出来ません。婚姻届けを提出している妻と比較をすると、相続税の分野においては圧倒的な差があります。

内縁の妻とは

内縁とは、婚姻届けの提出がされていないが社会生活上夫婦同然の実態がある男女のことをいいます。

内縁の妻は婚姻に準ずるものとして保護されていますが、相続税の分野においては婚姻届けが提出されている妻の方が優遇されています。内縁の妻である人が内縁の夫から財産を遺される立場になることが予想され、かつ婚姻届けの提出をすることに障害が無い場合は、相続税の分野においては婚姻届けを提出することが最も相続対策としては有効な手段であるともいえます。

内縁の妻は相続人になることが出来ない

相続税の分野において婚姻届けを提出している妻が内縁の妻より優遇されている最も大きな点は、婚姻届けを提出している妻は相続人になることが出来ますが、内縁の妻は相続人になることが出来ないことです。

相続人とは、遺産を受け取れる権利のある人のことをいい、民法で定められています。相続が発生した場合に遺産を受け取れることが出来る権利は、配偶者がいる場合は配偶者と、その血族です。

血族には相続人になることの出来る順番があり、第1順位が子や孫等の直系卑属、直系卑属がいない場合には第2順位である父母等の直系尊属、直系卑属も直系尊属もいない場合には第3順位である兄弟姉妹等が該当をします。法定相続分で財産を配分する場合には、相続人が配偶者のみであれば配偶者が全財産を受取り、相続人が配偶者と子供1人であれば配偶者と子供で1/2ずつ財産を受け取ることが出来ます。相続人の関係性や人数によって法定相続分で受け取る財産の割合は異なります。

配偶者はいかなる場合においても相続人になりますが、ここでいう配偶者とは婚姻届けを提出している法律で夫婦と認められた妻であり、内縁の妻は含まれていません。

内縁の妻が財産を受け取るためには?

遺言書

内縁の妻は相続人になることが出来ないことから、内縁の妻が財産を受け取るためには相続が発生する前に対策を行う必要があります。いずれの対策においても、内縁の夫が内縁の妻に財産を遺す意思があることが前提であり、内縁の妻だけの希望で財産を受け取ることは難しいといえます。

遺言書を書く

相続が発生をすると、遺産を分けるためには最初に被相続人が遺言書を作成していないかが確認されます。最初に遺言書の有無が確認される理由は、財産の分け方について遺言書で指定がある場合には、その遺言書に指定される内容が優先されるためです。

遺言書において全財産を内縁の妻に渡すという記載がある場合、後の章でご紹介します遺留分減殺請求を受けない限り、相続人には該当をしない内縁の妻がその遺言通りの財産を受け取ることが出来ます。遺言書の種類は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。

費用が無く、遺言書を記載する紙と筆記用具、印鑑の用意をするだけで有効となる、最も作成のしやすい遺言書が自筆証書遺言です。自筆遺言証書は簡素な手続きで遺言書としての効力を持つことが最大のメリットですが、遺言作成者が内容を曖昧にしている場合や、書き間違いがある場合には無効になってしまうデメリットもあります。

公正証書遺言、秘密証書遺言は公証役場で作成する必要があり、自筆証書遺言よりも手続きが煩雑となりますが、自筆証書遺言よりも無効となるリスクを抑えることが出来ます。

それぞれメリット、デメリットがありますが、最も作成のしやすい遺言書であることから、実際の相続において遺言書が作成されている場合には、自筆証書遺言が最も多い遺言書となっています。

生前贈与

相続によって財産を受け取る以外にも、内縁の妻が財産を受け取ることが出来る方法があります。それが生前贈与です。

生前贈与とは、相続が発生する以前に行われる財産の贈与のことであり、贈与をすることについて贈与者と受贈者の関係性に制限はありません。贈与者がこの財産を渡す、受贈者がこの財産を受け取る、と双方の合意があり財産の所有者の異動が行われれば成立をする行為です。

なお、内縁の妻に対して生前贈与を行う場合、年間110万円までの贈与であれば、贈与税の課税対象とはなりません。

生前贈与については下記の記事をご参照ください。

硬貨と植物の画像

親族が内縁の妻に財産を渡したくない場合は?

一万円の札束

上記までの章では内縁の妻に財産を遺したい内縁の夫からの視点でご紹介してきましたが、相続人である婚姻届けを提出している配偶者や子等、親族が内縁の妻への財産の配分を認めず争いになる場合もあります。

内縁の妻に財産を渡したくない場合の対策についてもご紹介いたします。

内縁の妻の遺贈放棄

財産の分け方について遺言書で指定がある場合には、その遺言書に指定される内容が優先され、内縁の妻は財産を受け取ることが出来ますが、この受け取る権利を放棄することも出来ます。

遺贈の種類

遺贈の放棄は、その遺贈が特定遺贈であるか包括遺贈であるかによって、手続き方法が異なります。

特定遺贈
特定遺贈とは、特定の財産を指定して遺贈する方法です。

例えば財産のうち特定の銀行の預貯金を内縁の妻に渡す、と遺言書に指定がある場合には特定遺贈に該当をします。

包括遺贈
一方で包括遺贈とは、全財産の一定の割合を指定して遺贈する方法です。

例えば家や土地、現預金等の全ての財産の7割を内縁の妻に渡す、と遺言書に指定がある場合には、包括遺贈に該当をします。

放棄の方法

特定遺贈の放棄は、内縁の妻が他の相続人にその旨を伝えることで認められます。放棄を行うための申出を行う期限はありません。

包括遺贈の放棄は、内縁の妻が家庭裁判所に包括遺贈の放棄の申述をすることで認められます。放棄を行うための申述を行う期限は遺言者の死亡と遺贈を知ってから3ヶ月以内です。

これらの遺贈放棄は、内縁の妻がその放棄を判断して行うものです。よって内縁の妻は財産を取得したいが、他の相続人が財産の配分を認めない、という争いになる場合では、内縁の妻が合意をしない限り、遺贈放棄は行われません。

遺留分侵害額請求

内縁の妻が財産を受け取らないことに合意して遺贈が放棄されれば、内縁の妻には財産が配分されませんが、放棄されない場合は遺言書に指定された財産が内縁の妻の配分をされます。

しかし遺言書に全財産を内縁の妻に渡すことが記載され、その通りに全財産が内縁の妻に渡ってしまうと、相続人は財産を受け取る権利があるにも関わらず、何も取得することが出来なくなってしまいます。このような事態を防ぎ相続人の権利を守るために、遺留分侵害額請求があります。

 遺留分侵害額請求とは

まず遺留分とは、相続人のうち婚姻届けを提出している配偶者、第1順位である子や孫等の直系卑属、第2順位である父母等の直系尊属に認められた、最低限の遺産取得分のことです。この遺留分を相続人が受け取ることが出来なかった場合には、内縁の妻に遺留分の財産を引き渡すように請求をすることが出来ます。これを遺留分侵害額請求といいます。

遺留分は相続人が婚姻届けを提出している配偶者のみであれば、遺産の1/2、相続人が婚姻届けを提出している配偶者と子供1人であれば、遺産の1/4ずつ等と、相続人の関係性と人数で異なります。

例えば遺言書にて1億円の全財産を内縁の妻に渡すという意思が表示してある場合において、相続人が婚姻届けを提出している配偶者と子供1人である場合には、内縁の妻に対してそれぞれ配偶者と子供は2,500万円ずつを内縁の妻に請求をすることが出来ます。

 請求の方法

請求の方法は、請求の意思表示を行う方法、遺留分侵害額請求調停で請求をする方法、遺留分侵害額請求訴訟を起こす方法があります。請求の意思表示を行う方法は、その意思表示の方法について定めはありませんが、その請求を行ったことの証拠を残すために、内容証明郵便で請求を行うことが一般的です。

遺留分侵害額請求調停で請求をする方法は、意思表示と話し合いでは請求が行えなかった場合に行われる方法であり、家庭裁判所に申し立てを行い、調停委員等を交えて請求を行う方法です。遺留分侵害額請求訴訟を起こす方法は、遺留分侵害額請求調停を行ってもなお請求が行えなかった場合に行われる方法であり、地方裁判所または簡易裁判所に訴状を提出して、訴訟を起こす方法です。

これらの請求期限は遺留分侵害の事実を知った日から1年です。

まとめ

内縁の妻に財産を遺すことについて、内縁の夫が内縁の妻に財産を遺したい場合と、親族が内縁の妻に財産を渡したくない場合の、両局面からご紹介致しました。

内縁の夫が内縁の妻に財産を遺したい場合には、婚姻届けを提出している配偶者とは取り扱いが異なることから、事前の対策が必要といえます。一方で親族が内縁の妻に財産を渡したくない場合においては争いとなることが多々あります。相続人である子供が父の死亡後に内縁の妻の存在を初めて認識をして問題となるようなことも少なくありません。このように相続は、その人の財産額や人間関係によって様々な問題や懸念事項が生じることがあります。

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響き税理士法人のスタッフ

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税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。