相続の手続きしないとどうなる?意外とすぐに問題は生じない

税理士友野
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相続の手続きをしないままほっておいてしまうと、どうなるのでしょうか。不動産や株式などの遺産を相続しても、名義変更や登記などの相続手続きを面倒に感じてしまい手続きをすぐにはできないという方は、少なくありません。

しかし、きちんと手続きを終えておかないと、せっかく相続した不動産が失われたり、借金の債務者になってしまったり、さらには税金滞納状態になったりしてしまうなどのリスクがあります。

相続があった場合には、放置せずに手続きを進めましょう。今回は相続の手続きをしないとどうなるかについて説明します。

具体的に取るべき相続の手続き

銀行

預金を相続した場合には、金融機関にて名義変更を行うか、解約払い戻しをしてもらう必要があります。相続手続きをしないで10年間放置すると休眠預金等活用法が適用されて、休眠預金等となってしまう可能性があるので注意が必要です。

休眠預金等は預金保険機構へ振り替えられて、公益活動に回される結果となる可能性があります。また休眠預金等にならなくても、長期間何も取引をせずに放置していると、民法上の時効が成立し、法的な払い戻し請求権が失われてしまうリスクが発生します。預金債権の時効は基本的に5年間なので、5年取引をせずに預金を放置すると払い戻しを受けられなくなる可能性があります。

こういったリスクを避けるためにも、預金を相続したら、早めに金融機関で解約払い戻しなどの手続きを取りましょう。なお預金の名義人を相続人に変更した場合でも、手続き後に何らかの取引をしないと休眠預金等や時効の問題が発生するので、手続きだけすましてそのまま放置するということのないように注意してください。

不動産

不動産を相続したら、法務局で相続登記を行わなければなりません。相続登記は2021年の時点では義務ではありませんが、法改正によって、将来的には義務化が決定されています。

また相続登記をせずに放置すると、以下のような事態になりかねません。注意が必要です。

  • 第三者に先に登記されてしまう

不動産を相続しても登記せずに放置しておいて、先に第三者に登記されたら、その第三者に対して権利を主張できなくなってしまいます。

  • さらに相続が起こり、誰がどれだけの持ち分を有しているのか分かりにくくなる

相続登記せずに放置している間に不動産の相続人が亡くなると、相続人の子どもなどへさらにその不動産は相続されていきます。ところが、不動産の所有名義は祖父母の代の人のままです。相続人がどんどん増えていき、客観的に誰が権利者なのか非常にわかりにくくなる可能性があります。

  • 後の世代における相続登記が面倒になって子孫に迷惑を掛ける

相続登記しないまま所有者が死亡して次の世代に引き継がれた場合、次の世代の相続人は「祖父母の代」と「親の代」の2世代分の相続登記を行わなければなりません。必要書類も膨大になり、大変な手間が発生するので、子孫に迷惑をかけてしまうことになりかねません。

  • 2024年を目処に相続登記が法的に義務化され、相続登記を行わないと、ペナルティがある

2021年の時点では、相続登記は義務ではありません。しかし不動産登記法の改正がなされ、2024年を目処に相続冬季が義務化されることが決定しています。法律が施行されると、基本的に、「相続してから3年以内」に相続登記しなければなりません。登記しないで放置すると、過料が課される可能性もあります。

  • 「特定空家等」に指定されると高額な固定資産税がかかる

建物を相続した場合管理を怠っていると、その建物が「特定空家等」に指定される可能性があります。特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等のことです。

特定空家等になると固定資産税の減額措置が適用されなくなるため、これまでより高額な税金を払わなければなりません。

必ず、法務局にて申請を行い、相続登記をしましょう。自分で相続登記を行うのが難しい場合には、専門家に依頼するようお勧めします。

株式

被相続人から株式を引き継いだら、株式の相続手続きをしましょう。具体的には、株式の名義変更を行う必要があります。そして相続した株式が上場株式の場合には、相続人名義の証券口座へと移行する必要があります。もしも株式の相続手続きをしなかったら、会社からの株主総会招集通知などの案内を受け取れない可能性があります。しかも、配当金も受けなくなるかもしれません。その他の株主権も、行使できなくなります。

もし株主総会招集通知を受け取れない状態のまま、5年間放置すると、「株主所在不明」扱いにされてしまうのが通常です。そうなると、株式が「競売」で売却されたり、会社に買い取られてしまう可能性があります。通常は、株式が競売になったり会社に買い取られたりした場合には、株主は株式の売却金を受け取る権利があります。しかし会社からの連絡が届かないので、売却金を受け取れない流れになる可能性が高いでしょう。

さらに5年または10年が経過した時点で、株式の売却代金を受け取る権利について時効が成立してしまい、最終的には株式の売却金をもらえないままになってしまいます。このように株式の相続手続きをしないで放置すると、最終的には株式に関する権利が完全に失われてしまうという可能性が生じます。面倒でも、株式の名義変更をするようにしましょう。

相続税の申告

相続した財産の相続税評価額が相続税の基礎控除を超える場合には、相続税の申告と納付を行わなければなりません。申告と納付は両方とも、相続開始後10カ月以内が期限です。

納付しなければいけないにもかかわらずほっておいて期限をすぎると、「延滞状態」となります。そうなると税務署から指摘を受けて、延滞税や不申告加算税などがかかって税額が大きく増えてしまうことになりかねません。

相続税に関しては申告や納付が必要な場合は、必ず、きちんと相続税の申告と納税を済ませましょう。

借金

被相続人が借金を遺して死亡した場合にも注意が必要です。何も手続きを取らないでほっておいてしまうと、キャッシング・ローン・未払家賃・滞納税などの負債はすべて相続されることになってしまいます。負債を相続したくない場合には、相続があったことを知ってから3カ月以内に、家庭裁判所で、相続放棄、または、限定承認の手続きを行なければなりません。

期限内に手続きを行わなければ、法定相続分に応じて負債を相続することになってしまいます。そうなると、相続人が相続した負債の支払いをしなければならないのです。負債を相続したくない場合は、期限内に相続放棄・限定承認の手続きを取るようにしましょう。

遺留分侵害額請求

特定の相続人や受遺者にばかり多くの遺産を遺す不公平な内容の遺言があったり、特定の相続人へ多額の生前贈与が行われたりすると、兄弟姉妹以外の相続人は「遺留分侵害額請求」を行って、侵害された遺留分を取り戻すことができます。

遺留分とは、亡くなった被相続人の兄弟姉妹以外の近しい関係にある法定相続人に最低限保障される遺産取得分のことです。この遺留分侵害額請求権には時効があります。相続開始と遺留分侵害を知ってから1年以内に請求しないと、請求する権利が失われてしまいます。また遺留分侵害額請求を行った後も、5年以内に認められた分の支払いを受けないと、やはり、時効によって権利が消滅します。

死亡保険金の請求

生命保険金の受取人となっている場合には、被保険人が亡くなった日から3年以内に、生命保険金の請求手続きをしましょう。

通常、生命保険金は決して少額ではないお金です。手続きをせずに受け取れないということがないよう、早めに手続きするとよいでしょう。

相続手続きに関して生じるリスク

未成年

相続人に未成年者がいる場合、未成年者は遺産分割協議が出来ません。そのため、下記の2つの方法から選択しなくてはいけません。
通常、未成年者の代理人は親なのですが、親子揃って相続人となるケースが多くあります。親と子どもが相続人となる場合、親の相続分が増えれば子どもの相続分は減ります。このような関係を「利益相反関係」と言います。

こういった場合に、法律は子どもの権利を守るために、相続に関して親が子どもの代理人となることを禁じています。また、子供だけが相続人である場合であっても、数人の子供を一人の親が代理することはできません。このようなときには、未成年者一人ひとりのために特別代理人を選任します。特別代理人は、家庭裁判所に選任を申し立てます。

認知症

認知症の方が相続人になる場合、そのままでは相続手続きを行うことは出来ません。認知症の方が正しい判断能力(意思能力)を持たない状態では、遺産分割においても正しい判断が出来ないと考えられるためです。そうした相続人の方がいる状況で作成した遺産分割協議書は無効となり、法律的には効果を発揮することが出来ません。

そういったこと無いように、きちんと法律に則った手続きを進めることが必要となります。強引に書類の判子を押させてしまっても、それは当然無効です。意思能力の無い相続人に代わって、遺産分割協議に参加する後見人が必要となります。

行方不明の方

相続人の中に、長期間行方不明の方がおられる場合に、その方を除いたまま、相続手続きを開始することは出来ません。相続人の中に長期間行方不明の方がいる場合、先ずは、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任申立てをします。

家庭裁判所が不在者財産管理人を選任した後、その管理人を含めた相続人全員で遺産分割協議を行なわなければなりません。

相続手続きが放置されてしまう理由

忙しい

相続手続きを進めようとすると、手続きに必要な書類を集めたり、手続きのために窓口に行ったりしないといけないため、手間と時間がかかります。

例えば
不動産の相続手続(相続登記)と金融機関の口座の相続手続をする場合、法務局と金融機関に足を運ぶ必要があります。

移動時間がかかるだけでなく、窓口で多くの時間がかかることも少なくないため、仕事を休んで相続手続きをしなければならないケースもよくあります。手続きをしようと思っても、仕事や私生活が忙しく、相続手続きまで手が回らず、相続手続きを放置してしまうことがあるようです。

相続財産が少ないため手続きによってマイナスになる

相続手続きをしない理由のひとつに、相続手続きを行うことにより費用ばかりかかるケースが挙げられます。

例えば
被相続人が残したのは、田舎にある経年劣化の激しい一戸建てとほぼ残高のない預金口座だけだとします。

そしてこの一戸建てを不動産会社に見てもらいましたが、「売却は難しいだろう」という判断だったというケースを考えてみましょう。相続人はこの一戸建てと預金口座の相続手続きを進めるために、戸籍謄本などの必要書類を取得する必要があります。

さらに、一戸建ての相続登記のために登録免許税も払い、司法書士にも依頼しなければいけません。ほぼ価値のない不動産と、残高のない預金口座の相続手続きになるので、相続人にとって、相続手続きをするだけで費用的なマイナスになってしまいます。

このようなケースは、相続人が手続きをすることでマイナスを被るので、手続きを放置してしまうことがあるようです。

相続人が遺産の存在や相続権に気づいていない

相続人自身、自分に相続権があるということを知らない場合や、そもそも遺産があるなんて知らないという場合もあります。

【例1】
ある人が叔母の相続人になっていたケース

この相続人は叔母と会話したことなどなく、会ったことすらありませんでした。叔母が亡くなったことも、叔母が住んでいるのかも知らず、自分が相続人になったことも気づかずにいました。

自分が相続人であることを知らないのですから、それに関する相続手続きももちろん行いません。

【例2】
被相続人が住んでいる場所から遠くの土地に不動産を所有していることを知らないケース

北海道に住んでいて沖縄に不動産を所有しているというような場合は、その相続財産の存在に全く気づかないこともあります。そのため、相続手続きを放置する結果になってしまいました。

相続人間で遺産分割をするのが面倒で放置している

遺産分割協議のために相続人が集まるのが面倒で、放置してしまうというケースがあります。遺産分割協議は、必ずしも、一か所に集まって話し合いをしなければならないわけではありません。すべての相続人が納得して同意していれば、メールや電話でやり取りしても問題ありません。ただ、手紙とメールを使うとしても、遺産分割協議にはコストが必要なことは間違いないでしょう。

メールや電話だけでは話がまとまらないからと、相続人全員での集まりを持とうとしても、都合が合わず、最終的にスケジューリングや遺産分割協議自体が面倒になってしまい、放置してしまうケースがあります。

相続税の課税が心配で相続手続きしていない

相続手続きを行うと、相続財産の額を知られてしまい、相続税が課税されてしまうのではないかと、相続税の課税を心配して、相続手続きを進めない相続人もいます。相続手続きをしなければ、相続財産の存在や総額を知られず、相続税の課税が行われないと思ってしまっているのです。

まとめ

ここまで相続の手続きしないとどうなるかについて説明してきました。意外とすぐに問題が生じるわけではないですが、相続手続きは適時に正しく行いましょう。相続の手続きをしないままほっておいてしまうと、どうなるのでしょうか。

不動産や株式などの遺産を相続しても、名義変更や登記などの相続手続きを面倒に感じてしまい手続きをすぐにはできないという方は、少なくありません。しかし、きちんと手続きを終えておかないと、せっかく相続した不動産が失われたり、借金の債務者になってしまったり、さらには税金滞納状態になったりしてしまうなどのリスクがあります。

相続があった場合には、放置せずに手続きを進めましょう。

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ABOUT US
税理士 友野祐司
税理士法人レガシィ勤務を経て2011年に響き税理士法人に入社、相続税専門の税理士として、横浜を中心に相続税申告のサポートをを行っています。どこよりも、素早い対応を心がけておりますので、少しでも相続税に関して、不安や疑問がありましたらお気軽にご相談ください。