「亡父の相続税申告書のコピーが見つからない」
「過去の届出書を参考にしたいのに、どこに片付けてあるのかわからない」
相続税申告書を提出する際には、亡くなられた被相続人が過去に行っている相続税申告書等の書類を確認するケースがあります。
税務署に提出する書類は、ご自身のお手元や税理士側に控えを残すことが可能です。税務署で間違いなく受付したことの証に、受付印を控えにもらっておくこともできます。
では、過去に提出した相続税申告書等の書類が見当たらない場合には、一体どうすればよいでしょうか。
そんな時は「申告書等閲覧サービス」の利用を検討しましょう。本記事では、申告書等閲覧サービスについて、閲覧対象となる書類や利用の流れなどを詳しく解説します。ぜひご一読ください。
目次
この記事の監修者
税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
申告書等閲覧サービスとは
「申告書等閲覧サービス」とは、過去に税務署へ提出した申告書等の書類が閲覧できるサービスです。
たとえば、相続税申告には過去に被相続人が行った相続税申告書の確認が必要なケースがあります。もしも控えが見つからない場合は、税務署に必要書類を提出し、認められれば過去の相続税申告書の閲覧ができます。
閲覧の結果、写しが欲しい場合には令和元年9月1日以降はデジカメやスマホを持ち込んで、写真で記録できるようになりました。(以前は書き写すしか方法がありませんでした)
ただし、保管書類のコピーはできず動画撮影も禁止されています。
撮影したものは必要情報以外が映り込んでいないか、その場で税務署員が確認を行っています。
閲覧できる文書の種類とは
申告書等閲覧サービスでは、相続税申告書はもちろん、その他の文書も閲覧・撮影が可能です。詳しくは以下をご確認ください。
- 所得税及び復興特別所得税申告書
- 法人税及び地方法人税申告書
- 復興特別法人税申告書
- 消費税及び地方消費税申告書
- 相続税申告書、贈与税申告書
- 酒税納税申告書や各種届出書、請求書、報告書等、納税者がこれらの申告書等に添付して提出された書類(青色申告決算書や収支内訳書など)
上記のように、非常に多くの文書が確認できますが無条件に閲覧できるわけではありません。サービスを利用できる人は限られています。
申告書等閲覧サービスの利用できる人とは
過去に提出された申告書等を閲覧できる人は以下のとおりです。
申告書等を提出した人がご存命の場合
・納税者本人
・納税者本人の代理人
(代理人になれる人:配偶者や4親等以内の親族、税理士・弁護士・行政書士、未成年者や成年被後見人の法定代理人、納税管理人)
申告書等を提出した人が亡くなられている場合
・相続人もしくは相続人の代理人
(代理人になれる人:配偶者や4親等以内の親族、税理士・弁護士・行政書士、未成年者や成年被後見人の法定代理人、納税管理人)
被相続人の過去の申告書等を閲覧する場合は、相続人全員で閲覧の申請を行う必要があります。
相続人全員が揃って税務署へ行けない場合は、参加できない相続人の実印が押された委任状と、実印を証明する印鑑登録証明書の原本(申請から過去1か月以内に発行されたもの)の提出が必要です。
申告書等閲覧サービスを利用方法とは|必要書類や手続きの流れ
実際に申告書等閲覧サービスを利用するためには、どのように手続きをすればよいでしょうか。そこで、この章ではサービス利用について必要書類や手続きの流れについて詳しく解説します。
閲覧の必要書類
申告書等閲覧サービスを利用するためには、以下の書類が必要です。
①閲覧したい方が納税者本人の場合
- 申告書等閲覧申請書
- 本人確認書類(運転免許証、健康保険証等の被保険者証、個人番号カード、住民基本台帳カード、在留カード、特別永住証明書、その他本人確認と認められるもの)
②亡くなられた家族が申告した相続税申告書等を、相続人が閲覧したい場合
- ①の書類すべて
- 相続人全員による閲覧が必要、参加できない相続人がいる場合はその方の委任状、30日以内に発行された印鑑証明書の原本(委任状にも実印要)
- 法定相続情報一覧図の写し(もしくは被相続人と相続人の関係がわかる戸籍謄本すべて)
相続人の代理人が閲覧する場合
相続人からの委任状と30日以内に発行された印鑑証明書の原本が必要です。また、誰が代理人なのかによって、必要書類が異なります。詳しくは以下をご確認ください。
引用URL 国税庁 申告書等閲覧サービスの実施について<代理人が閲覧を申請される場合>より
写真の撮影や記録を書き写す場合
・カメラ、スマートフォンなど
・筆記用具(メモ帳、ペンなど)
閲覧の流れ
亡くなられた被相続人が過去に行った相続税申告について、申告書の内容を見るために申告書等閲覧サービスを利用すると仮定し、閲覧の流れを解説します。
①被相続人全員の同意を得て、申告書等閲覧サービスに必要な書類を用意する
②事前に納税地を管轄する税務署に連絡した上で、申請を行う。手続き費用は無料。
③閲覧当日は本人確認を税務署で受ける
④申告書を受け取り、その場で必要に応じて写真を撮影したり、書き写したり作業を行う
⑤写真のデータを税務署に確認してもらう 資料の返却をもって作業を終える
必要な書類は納税地を管轄する税務署に保管されていますが、外部書庫や業務センターに保管されていることもあります。そのため、事前に閲覧を行いたい旨を税務署へ伝えておくようにしましょう
押さえておきたい申告書等閲覧サービスの注意点
実際に相続税申告書等を閲覧する際にはいくつかの注意点があります。必ず確認の上で、サービスを利用しましょう。
収受印・名前・住所は撮影できない
収受印や氏名、住所などが記載されている書類は、そのままでは撮影できません。それらを見えないように隠して撮影します。見たい箇所に収受印が覆っている場合も撮影できないため、手書きができる準備は忘れないでおきましょう。収受日を知りたい場合はメモに手書きで書き留めましょう。
※なお、2025年1月からは税務署で収受印の押なつが廃止されます。DX化を背景に廃止されており、今後提出される紙の申告書や申請書・届出書などには収受印が残りません。
税務署員の指示に従うこと
申告書等閲覧サービスを受ける際には、本人確認や必要書類のチェック、資料撮影データの確認などが税務署の職員によって行われます。閲覧・撮影・書き写しの一連については、当日職員の指示に従って行いましょう。
郵送での資料請求はできない
「相続人が揃わないし、郵送でコピーしたものを送ってほしい」
「体調がよくないから、税務署に出向くことが困難だ」
このようなケースの場合、申告書等をコピーした物を郵送で送ってほしいと考える人もいるでしょう。しかし、申告書等のコピーはできないため、郵送請求もできません。申請も郵送受付は行っておらず、閲覧当日に本人確認とともに行います。
もしも体調に優れないなどの理由で閲覧に行けない場合は、代理人へ依頼しましょう。
類似した別の手続き方法もある
申告書等閲覧サービスとは別に、類似した請求方法がもう1つあります。「保有個人情報開示請求」と呼ばれる方法です。この方法なら「写し」を受領することが可能です。
相続時に亡くなった被相続人の申告書等の写しが必要な場合、税務署窓口もしくは郵送にて保有個人情報開示請求書を提出します。請求から交付までは2週間~1か月程度の時間を要し、別途手数料も必要です。お急ぎの場合は申告書等閲覧サービスがおすすめです。
詳しくは以下国税庁リンクをご確認ください。
参考URL 国税庁 開示請求等の手続
まとめ
相続税申告時などに、過去の申告書等が必要になったら、まずは慌てずに控えを探してみましょう。控えが見つからない場合は、本記事で紹介した「申告書等閲覧サービス」の利用がおすすめです。ただし、センシティブな書類のため、閲覧できる人は限られており、必要書類も用意する必要があるためご注意ください。
相続税申告時には、過去のさまざまな記録が必要となるケースがあります。相続に関するお困りごとに直面したら、どうぞお気軽に横浜市の響き税理士法人へご相談ください。
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
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