故人に係る葬式費用は、相続財産から控除することができます。
葬式費用は被相続人の負債ではありませんが、相続人が被相続人の葬式を執り行うことは、慣習として定着しており、必要不可欠な費用であると認められているためです。
相続財産から控除することができる費用が多いほど、納めるべき相続税額は少なくなります。
よって、同じ支出額であれば、控除することができる費用として取り扱いたいものです。
それでは、葬式と同じように故人のために負担をする、初七日、四十九日、一周忌のための費用は相続財産から控除することができるのでしょうか。
詳しくみていきましょう。
目次
この記事の監修者

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
相続財産から控除できるものとは
相続税の課税される課税遺産総額は、相続財産を基礎として算出されます。
この相続財産から控除することができるものとして、債務控除があります。
債務控除は、債務と葬式費用に大別することができます。
債務

債務とは、被相続人が死亡した時点で確定していた、借入金や未払いの医療費等のことをいいます。
債務の詳細については、下記の記事にて紹介しています。
葬式費用

葬式費用とは、被相続人の死亡により必然的に生じると認められる火葬代や納骨代等のことをいいます。
葬式費用の詳細については、下記の記事にて紹介しています。
相続税から葬儀費用はどこまで引けるか
債務や葬式費用を遺産総額から控除することができる人
債務や葬式費用を遺産総額から控除することができる人は、相続や遺贈で財産を取得した時点で一定の条件を満たした、債務や葬式費用を負担することになる相続人や包括受遺者です。
一定の条件とは、下記のいずれかにあてはまる人です。
- 相続や遺贈で財産を取得した時点で日本国内に住所がある人
(一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除く)
- 相続や遺贈で財産を取得した時点で日本国内に住所がないが、日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人
- 相続や遺贈で財産を取得した時点で日本国内に住所がないが、日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人
(被相続人が、外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除く)
- 日本国籍を有していない人
被相続人が、外国人被相続人、非居住被相続人または非居住外国人である場合を除く)
相続放棄をした人は、相続そのものを放棄しているため、遺贈により財産を取得していない限り、債務控除の適用がありません。
また、特定受贈者も、特定の財産のみを引き継ぐため、債務控除の適用がありません。
初七日、四十九日、一周忌等の法要に係る費用は葬式費用には含まれる?
初七日、四十九日、一周忌等の法要に係る費用は、葬式費用に含まれず、債務控除の対象となりません。
初七日を葬式当日に行い、初七日法要費用と葬式費用が明確に区分されていない場合のみ、葬式費用に含めて債務控除の適用対象とすることができます。
初七日、四十九日、一周忌等は、仏教における供養のための法会であり、相続税法基本通達にて、法会に要する費用は、葬式費用に含まれないことが明記されています。
法会を葬式費用に含め債務控除の適用を認めてしまうと、それを執り行う一定の宗教を信じる相続人だけが相続税の算定上有利な取り扱いを受けてしまう、法会の費用の確定が相続開始から時間が経過しても定まらない等の理由から、火葬代や納骨代等の必然的に生じられると認められる葬式費用とは異なる取り扱いが規定されています。
世界で最も信仰されているキリスト教と仏教では、供養の行事が大きく異なります。
カトリックでは死亡後、三日後、七日後、三十日後と追悼式を行い、一周忌には盛大な死者記念ミサといわれる大きな追悼行事が行われます。
プロテスタントでは七日後、十日後、三十日後に記念集会を行い、更に一年後、三年後、五年後という区切りでも記念集会が行われます。
このように宗教により供養の行事が大きく異なるため、これらに係る費用を一律に債務控除の適用対象として認めることは、課税の公平性をゆがめてしまうといえるでしょう。
また、仏教を信仰している人であっても、年忌法要をいつまで執り行うのかは、その家庭や宗派、地域等によって異なります。
年忌法要の回数によってその費用に大きく差が出てしまうことのみならず、極端な例にはなりますが、百回忌まで行う場合、相続開始以後百年経過してから法要に係る費用が確定することになるため、一律に債務控除の適用対象として認めることは、現実的ではなく、火葬代や埋葬代との取り扱いの区別が必要であるといえるでしょう。
まとめ

このように、初七日、四十九日、一周忌等の費用は、課税の公平性の問題等により、火葬代や埋葬代とは異なり、葬式費用として債務控除の適用をすることが認められません。
債務控除の適用となる費用と混同しないように、その取扱いには注意が必要です。

戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
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