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公正証書遺言がある場合の相続手続き|死亡後の流れを税理士が解説

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亡くなった方が公正証書遺言を残していた場合は、原則として遺言の内容に沿って相続手続きを進めます。

公正証書遺言は家庭裁判所での検認が不要なため、自筆証書遺言よりも早く手続きを始められます。
ただし、遺言書を確認するだけで相続が完了するわけではありません。
遺言執行者の確認、相続人と財産の調査、預貯金の解約、不動産の相続登記、相続税の申告などが必要です。

本記事では、公正証書遺言がある場合に、遺言者の死亡後どのような順番で相続手続きを進めるのかをわかりやすく解説します。

公正証書遺言が見つかった後の流れ
1.遺言書の正本・謄本を確認する
2.遺言執行者が指定されているか確認する
3.相続人と相続財産を調査する
4.遺言の内容に沿って財産ごとの手続きを進める
5.相続税の申告が必要か確認する

この記事の監修者

税理士桐澤

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。

公正証書遺言とは|公証人が作成し家庭裁判所の検認は不要

公正証書遺言について説明した図解

公正証書遺言とは、公証人が遺言者の意思を確認し、法律で定められた方式に従って作成する遺言書です。

遺言には、主に次の3種類があります。

主な遺言の種類
・公正証書遺言
・自筆証書遺言
・秘密証書遺言

公正証書遺言は、原本が公証役場または日本公証人連合会が運営するシステムに保管されます。
そのため、紛失や隠匿、改ざんのリスクを抑えられる点が特徴です。

また、公正証書遺言は家庭裁判所での検認が必要ありません
相続開始後、正本または謄本を使って速やかに手続きを進められます。

2025年10月1日以降、指定公証人が作成する公正証書は、原則として電子データで作成・保存される仕組みに変わりました。以前に紙で作成された公正証書遺言も引き続き有効です。

出典:日本公証人連合会「遺言」

メモを書いている人の画像

公正証書遺言を残した人が死亡したら|遺言書を探す方法

公正証書遺言を探す方法と謄本請求の流れ

公正証書遺言があると聞いていても、正本や謄本の保管場所がわからない場合があります。
ここでは、公正証書遺言の探し方と必要書類を確認しましょう。

公証役場から相続人へ自動的に通知されるわけではない

遺言者の死亡後、公正証書遺言の存在が公証役場から相続人へ自動的に通知されることはありません

遺言者が家族や遺言執行者に保管場所を伝えていなかった場合は、自宅の机、金庫、貸金庫などを確認します。
遺言作成を依頼した専門家や信託銀行がわかる場合は、問い合わせてみましょう。

正本や謄本が見つからないときは、公証役場の遺言検索システムを利用できます。

全国の公証役場で遺言書の有無を検索できる

平成元年以降に作成された公正証書遺言は、全国の公証役場から遺言書の有無と保管先を検索できます
検索できるのは、相続人や受遺者などの法律上の利害関係人です。
遺言者が亡くなる前は、原則として本人しか検索を申し出られません。

遺言検索の申出は無料で、一般的には次の書類を用意します。

・遺言者が亡くなった事実を証明する除籍謄本など
・申出人が相続人であることを証明する戸籍謄本
・マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類

代理人が手続きをする場合は、委任状などの追加書類が必要です。
必要書類は状況によって異なるため、訪問前に公証役場へ確認しましょう。

出典:日本公証人連合会「亡くなった方について、公正証書遺言が作成されているかどうかを調べることができますか?」

遺言書が見つかったら謄本を請求する

遺言検索で確認できるのは、公正証書遺言の有無と保管先です。
遺言の内容を確認するには、保管している公証役場へ謄本を請求します

謄本は郵送で請求することも可能です。
事前に保管先の公証役場へ連絡し、必要書類や手数料、本人確認の方法を確認してください。

公正証書遺言が見つかった後の相続手続き

公正証書遺言が見つかった後の5つの相続手続き

公正証書遺言が見つかったら、最初に遺言執行者の記載を確認します。
その後、相続人と財産を調査し、遺言の内容に沿って財産ごとの手続きを進めます。

1.正本・謄本を確認する(検認は不要)

公正証書遺言は、家庭裁判所の検認を受ける必要がありません
正本または謄本を確認したら、その内容に沿って手続きを始められます。

遺言書の種類や保管方法による検認の要否は、次のとおりです。

遺言書の種類・保管方法家庭裁判所の検認
公正証書遺言不要
法務局で保管された自筆証書遺言不要
自宅などで保管された自筆証書遺言原則として必要
秘密証書遺言原則として必要

出典:裁判所「遺言書の検認」

2.遺言執行者が指定されているか確認する

遺言書に「遺言執行者」の記載があるか確認します。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人です。

遺言執行者が就任した場合の主な対応は、次のとおりです。

・相続人へ就任した旨と遺言の内容を通知する
・相続財産目録を作成する
・預貯金の解約や名義変更などを進める

遺言執行者が指定されていない場合でも、すべてのケースで新たに選任する必要があるわけではありません。
ただし、遺言の内容を実現するために遺言執行者が必要な場合は、利害関係人が家庭裁判所へ選任を申し立てることができます。

3.相続人と相続財産を調査する

公正証書遺言があっても、相続人と相続財産の調査は必要です。

戸籍謄本などを集めて相続人の範囲を確認するとともに、次の財産を調べます。

・預貯金
・不動産
・有価証券
・生命保険
・自動車
・借入金や未払いの税金などのマイナスの財産

遺言書の作成後に取得した財産や、遺言書に記載されていない財産が見つかる場合もあります。
相続放棄を検討する可能性があるときは、財産を処分する前に弁護士などへ相談してください。

4.遺言の内容に沿って名義変更などを行う

相続財産を確認したら、遺言書の内容に沿って財産ごとの手続きを進めます

財産の種類主な手続き
預貯金解約・払戻し・名義変更
不動産相続登記
有価証券相続人などの口座への移管
自動車名義変更

必要書類や手続き方法は、財産の種類や提出先によって異なります。
一般的に求められる書類は、次のとおりです。

・公正証書遺言の正本または謄本
・戸籍謄本
・印鑑証明書
・本人確認書類

実際に必要な書類は、手続きをする金融機関や法務局などへ事前に確認しましょう。

5.相続税の申告が必要か確認する

相続税について確認するポイントは、次のとおりです。

確認項目内容
申告の要否遺産の課税価格が基礎控除額を超える場合などは申告が必要
申告・納税期限原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内
注意点名義変更が終わっていなくても期限は延長されない

財産調査と並行して、早めに申告の要否を確認しましょう。

出典:国税庁「相続税の申告手続」

相続と書かれている鍵の画像
家のおもちゃを手で持っている画像

公正証書遺言がある場合に注意したい死亡後の手続き期限

相続手続きの主な期限と内容を示した図解

公正証書遺言がある場合でも、相続に関する期限は変わりません。
特に注意したい期限を、次の表で確認しましょう。

期限の目安主な手続き
相続開始を知ったときから3か月以内相続放棄・限定承認
相続開始を知った日の翌日から4か月以内準確定申告が必要な場合の申告・納税
相続開始を知った日の翌日から10か月以内相続税の申告・納税が必要な場合
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内相続登記

相続放棄を検討している場合は、遺言書の確認だけでなく、借金を含む財産調査を早めに始めましょう。
調査しても3か月以内に判断できないときは、家庭裁判所へ期間伸長を申し立てられる場合があります

公正証書遺言で指定された遺言執行者が行う主な手続き

遺言執行者が行う5つの手続きと就任・辞任の注意点

遺言執行者が就任した場合は、遺言の内容を実現するために必要な範囲で手続きを行います。
一般的な流れは次のとおりです。

1.相続人へ就任と遺言内容を通知する
2.相続人と相続財産を調査する
3.相続財産目録を作成して相続人へ交付する
4.預貯金の解約や名義変更などを行う
5.任務が終了したことを相続人へ報告する

遺言の内容によって必要な手続きは異なります。
遺言執行者だからといって、相続に関するすべての行為を単独で行えるわけではありません

遺言執行者への就任は断れる

遺言書で遺言執行者に指定されても、就任を承諾する義務はありません

ただし、相続人などの利害関係人から、期限を定めて回答を求められる場合があります。
その期限内に回答しないと、就任を承諾したものとみなされます。
就任する意思がない場合は、早めに明確な回答をしましょう。

就任を承諾した後に辞任するには、正当な理由が必要であり、家庭裁判所の許可を得なければなりません。

公正証書遺言がある場合の財産別相続手続き

財産の種類ごとに必要な相続手続きを示した図解

公正証書遺言を確認した後は、財産の種類に応じた手続きが必要です。
ここでは、代表的な手続きを紹介します。

不動産の相続登記

遺言によって土地や建物を取得した場合の主な確認事項は、次のとおりです。

確認項目内容
手続き法務局で相続登記を行う
申請期限不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内
過料正当な理由なく申請しなかった場合は10万円以下の過料が科される可能性がある
主な書類公正証書遺言の正本または謄本、戸籍謄本、住民票の写しなど

相続登記は、2024年4月1日から義務化されています
遺言の内容や取得する人によって必要書類が異なるため、法務局または司法書士へ確認しましょう。

預貯金・有価証券の解約や名義変更

預貯金や有価証券について確認するポイントは、次のとおりです。

確認項目内容
手続き先金融機関または証券会社
主な手続き解約、払戻し、相続人などの口座への移管
手続きをする人遺言執行者、財産を取得する相続人または受遺者

必要書類や書式は金融機関によって異なります。
遺言執行者の指定も確認したうえで、相続専用窓口へ問い合わせましょう

生命保険金の請求

生命保険金について確認するポイントは、次のとおりです。

確認項目内容
請求する人保険契約で指定された受取人
請求先契約している保険会社
確認するもの保険証券、受取人、契約内容
遺言で受取人が変更されている場合相続人から保険会社へ通知する

通常、生命保険金は遺産分割の対象となる財産とは扱いが異なります
契約内容によって取扱いが異なる場合もあるため、速やかに保険会社へ連絡しましょう。

車やその他の財産の名義変更

車やバイク、ゴルフ会員権などがある場合も、名義変更や解約の手続きが必要です。
貴金属や美術品などの動産は、遺言書の記載と実際の財産を照合し、引渡しの記録を残しておくとよいでしょう。

公正証書遺言が無効になる主な4つのケース

公正証書遺言が無効になる主な4つのケースを示した図解

公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思と法律上の方式を確認して作成するため、安全性の高い遺言方法です。
ただし、公正証書でも有効性や取消しが争われる場合があり、主な争点として次のようなものが挙げられます。

・法律で定められた方式を満たしていない
・作成時に遺言者に遺言能力がなかった
・詐欺や強迫による遺言で、取消しが問題となる
・証人になれない人が証人として立ち会っていた

公正証書遺言の作成には、原則として証人2人以上の立会いが必要です。
未成年者、推定相続人、受遺者やその配偶者・直系血族などは証人になれません。

ただし、認知症の診断があるだけで直ちに遺言が無効になるわけではありません。
遺言能力は、作成当時の状態、遺言内容の複雑さ、診療記録などを踏まえて個別に判断されます。

遺言の有効性に疑問がある場合は、財産を動かす前に弁護士へ相談しましょう。

老人が遺言書を持っている画像

公正証書遺言の内容に納得できない場合の対応

公正証書遺言の内容に納得できない場合の4つの対応

遺言の内容に不満があるだけで、公正証書遺言が無効になるわけではありません。
まずは、遺言が有効であることを前提に、主張できる権利を確認しましょう。

公正証書遺言は遺言者の死亡後には変更できない

遺言者が亡くなった後に、公正証書遺言そのものを書き換えることはできません

遺言者が生前に新しい遺言書を作成し、前の遺言と内容が抵触する場合は、その部分について後の遺言が優先されます。
日付の異なる遺言書が複数見つかった場合は、専門家へ確認しましょう。

遺留分を侵害されている場合

配偶者、子、直系尊属など一定の相続人には、最低限の取り分である「遺留分」が保障されています。
遺言によって侵害された場合は、財産を多く受け取った人などへ金銭を請求できる可能性があります

請求にあたっては、次の期限に注意しましょう。

・相続開始と遺留分の侵害を知ったときから1年以内に、相手方へ請求の意思を伝える
・相続開始から10年を経過すると、権利そのものが消滅する

なお、家庭裁判所への調停申立てだけでは、相手方への意思表示にはなりません。
内容証明郵便などで、期限内に直接伝えることが大切です。

遺産相続と書かれている積み木の画像

遺言とは異なる分け方を希望する場合

遺言書にすべての財産の分け方が明確に記載されている場合は、一般に遺産分割協議書は不要です。
遺言の内容どおりに、そのまま各手続きを進められます。

一方、遺言書に記載されていない財産がある場合や、内容を特定できない場合などは、遺産分割協議が必要になることがあります。

相続人全員が合意していても、受遺者や遺言執行者がいる場合などは、遺言と異なる遺産分割を自由に行えるとは限りません
相続税や贈与税の扱いに影響する可能性もあります。

遺言と異なる分け方を検討するときは、実行前に弁護士と税理士へ相談しましょう。

遺言の無効を主張する場合

遺言能力や作成方式に問題があり、無効を主張する場合は、証拠を集めたうえで法的な手続きを検討します
話し合いで解決できなければ、遺言無効確認訴訟などに進む可能性もあります。

遺言の無効を争う手続きは、争点や相手方によって進め方が異なり、家庭裁判所の手続きだけで解決するとは限りません。
早い段階で弁護士へ相談してください。

まとめ|公正証書遺言がある場合は死亡後の手続きを早めに進める

公正証書遺言について税理士へ相談する家族のイラスト

この記事の要点は、次のとおりです。

・公正証書遺言は検認不要で、すぐに相続手続きを始められる
・最初に遺言執行者の指定を確認し、相続人と財産を調査する
・相続放棄は3か月、相続税の申告は10か月の期限に注意する

相続財産の調査や評価、相続税の計算は、ご家族や財産の状況によって複雑になる場合があります。
記事内の制度説明だけで個別の税務判断はできないため、最終的な申告内容は税理士へご確認ください。
また、遺言の有効性や相続人間の争いについては、弁護士へご相談ください。

響き税理士法人では、相続税の申告や相続財産の評価に関するご相談を承っています
公正証書遺言が見つかり、相続税の手続きをどこから始めればよいかわからない方は、お気軽にお問い合わせください。

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税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。