「相続税の申告期限を逃してしまったけど、時効はいつ?」
「相続税における時効の起算日の計算方法が知りたい」
相続税は、相続が発生してから10ヶ月以内に納付しなければなりません。
しかし、うっかりして10ヶ月が過ぎてしまった人や「うちは相続税はかからない」と思い込み、手続きをしていなかったけど実際は納税が必要であることに気づいたという人もいるでしょう。
わざとではないとはいえ、相続税を支払っていないことに不安を感じたり、悩んでしまいますよね。
一方で、相続税には時効があり、時効を過ぎれば支払わなくてOKという話を聞いたことがある方もいるのでは?
支払わなければならないことはわかっているけど、このまま時効が来るのを待っていてもいいかな…と考える人もいるかもしれませんね。
では、相続税の時効はいつを起算日として計算するのでしょうか?
相続発生時なのか、相続税の納付期限なのかで10ヶ月の差が出るため、違いは大きいです。
そこで今回は、相続税における時効の起算日について解説します。
相続税の時効の基礎知識に加え、具体的な起算日の出し方についてもお話しますよ。
この記事を読むことで、相続税の時効についての理解が深められるのでぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
この記事の監修者

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
相続税の時効とは

相続税の時効とは、一定の期間が過ぎることで国が相続税を徴収する権利を失うことを示します。
ちなみに、正確に言うと時効ではなく除斥期間(じょせききかん)といいます。
時効を迎えると相続人は相続税の納税の義務がなくなるため、相続税を支払う必要はありません。
実際に成立したケースがあるかどうかは別として、制度としては相続税の時効があり、時効を過ぎれば納税の義務はなくなります。
原則5年、悪質なら7年に延長されることも
相続税の時効は、原則5年、もしくは7年です。
期間の違いは、相続人の善意と悪意によって異なります。
時効年数 | 相続人の様子 | 例 |
---|---|---|
5年 | ・通常の相続税の時効 (善意の相続人)・相続税を支払うことを知らなかったケース | ・自分が相続人となっている(被相続人が亡くなっている)ことを知らなかった・相続税納付期限後に相続人が知らなかった財産が発見された |
7年 | ・悪意の相続人の時効・相続税を払うことを分かっていながら、申告・納付をしなかったケース | ・申告を忘れていた、・遺産分割協議がまとまらず期限に申告しなかった・新たに財産を見つけたが黙っていた・遺産を隠して少なく申告した |
自分が相続人となっていることを知らなかった場合や期限後に新たに財産が発見されたケースでは、時効は5年となります。
一方で、相続税を支払う必要があることを認識していた場合には、時効は7年です。
うっかり払い忘れていた場合や遺産分割協議が上手く進まない場合でも、悪意の相続人とみなされます。
悪意といわれると「わざと」かどうかが重要に思われがちですが、民法では「ある事実を知っていること」を「悪意」といいます。
うっかりでも「知っていること」がダメなので、財産を相続した場合はしっかり納税の必要性を確認しましょう。
相続税の時効については、以下の記事に詳しくまとめています。
気になる方はぜひ、チェックしてみてくださいね。
相続税の起算日とは?

相続税の事項についての基礎知識がわかったところで、相続税における時効の起算日を確認しましょう。
まず、起算日とは期間を数え始める最初の日のことで、期間計算の初日とも呼ばれます。
相続税の時効は、法定申告期限の翌日を起算日として計算します。
つまり、相続税の申告期限の翌日が起算日となります。
具体的な日付を用いてまとめると、以下の通りです。
相続発生日 | 相続発生日 | 相続発生日 | 時効成立(5年の場合) |
---|---|---|---|
2024年1月29日 | 2024年11月29日 | 2024年11月30日 | 2029年11月29日 |
相続発生から10ヶ月 | 相続発生から10ヶ月+1日 | 相続発生から5年10ヶ月 |
注意するべきポイントは、起算日は0日目ではなく、1日目になるということです。
ちょっとややこしいですが、仮に起算日が0日とされる場合、上記の例では時効成立は2029年11月30日となります。
しかし、起算日が1日としてカウントされるため、時効成立は2029年11月29日となるのです。
また、上記の例で時効が7年の場合は、2031年11月29日が時効となります。
相続税の時効のポイント
ここでは、相続税のおける時効のポイントについてみていきます。
起算日は「相続税の申告期限の翌日」
繰り返しになりますが、相続税の時効までのカウントが始まる起算日は、相続税申告期限の翌日です!
相続発生時が起算日ではないことをしっかり覚えておきましょう。
【間違った起算日の考え方】
相続発生日 | 時効の起算日 | 時効成立 | |
---|---|---|---|
2024年1月29日 | 2024年1月30日 | 相続発生日から5年→ | 2029年1月29日 |
【正しい起算日の考え方】
相続発生日 | 申告期限 | 時効の起算日 | 時効成立 | |
---|---|---|---|---|
2024年1月29日 | 2024年11月29日 | 2024年11月30日 | 申告期限から5年→ | 2029年11月29日 |
うっかり相続発生日を起算日と考えてしまうと、10ヶ月の誤差が生じます。
必ず、相続発生日から5年10ヶ月で時効が成立するということを理解しておきましょう。
相続の時効は中断されない
相続税の時効は中断されないこともポイントです。
民法には、時効において更新(中断)という考え方があります。
たとえば、AさんがBさんにお金を貸していて、Bさんが約束した期限までにお金を返していないと仮定しましょう。
本来であれば金銭貸借の時効は5年、起算日はお金を支払う期限なので、支払期限の5年後が時効となります。
しかし、Aさんが支払いの請求をしたり、Bさんが支払う意思を見せた場合は、時効がリセットされ、支払いに関するアクションが起こったときが起算日に変わります。
つまり、Aさんが請求した日やBさんが支払う意思を見せた日から、5年後が時効になるということです。
相続税では、上記のような時効の更新や中断はありません。
申告期限の翌日から起算して5年(7年)の時効と定まっていて、期日が変更されることはないということも覚えておくと良いでしょう。
時効が成立すれば支払い義務は消滅
税務署からのお尋ねがなく、相続税の申告期限から5年(7年)が経過した場合は、時効が成立します。
相続税納税の義務がなくなるため、相続人は相続税を払う必要はありません。
ただし、時効までの間に税務署から請求があった場合は、支払いを免れることはできないため注意が必要です。
相続税の時効は成立する?
結論からいうと、相続税の時効が成立するのは非常に難しいです。
日本の税務署は優秀で、あらゆるネットワークを持っていて、申告漏れを見つけ出します。
全国の国税局と税務署をネットワークでつなぎ一元管理する国税総合管理(KSK)システムは、納税者の申告や法定調書を管理し、税務調査対象者の選定に役立てています。
また、亡くなった方の死亡届を市役所に提出すると、その情報は税務署にも届きます。
こちらから税務署に連絡していないのに、亡くなってから半年後くらいに「相続税についてのお尋ね」が送付されるのは、さまざまなネットワークで税務署が繋がっているためです。
たとえ、外に出していないタンス預金であっても、税務署は過去の預金の流れやヒアリングなどの調査から突き止めてきます。
税務署は、お尋ねを送る時点で被相続人の資産や生前の納税状況を考え、ある程度の目星をつけているでしょう。
相続人が税務署に関わっていなくても、相続税から逃れるのは非常に難しいです。
そして、相続税から無理に逃れようとすると、重いペナルティが課せられます。
ペナルティは正しい申告をするまでの期間が長くなるほど、重くなります。
もし、申告期限後に相続税の支払いに気づいた場合や資産を隠して申告してしまった場合には、すぐに相続税に詳しい税理士に相談しましょう。
まとめ|相続税の時効は免れない、税理士に早めのご相談を

今回は、相続税の時効とその起算日についてお伝えしました。
相続税の時効の起算日は相続税申告期限の翌日で、時効は5年もしくは7年です。
つまり、相続が起こった日から、5年(7年)10か月で時効となります。
日本の税務署は優れていて、あらゆるネットワークを駆使して情報を得ているため、お尋ねが来ることなく時効が成立するのは非常に難しいです。
相続税のお尋ねは、相続税の申告期限を過ぎた翌年以降にも届く可能性があります。
すでに申告期限が過ぎてしまっている場合や申告した財産に誤りがあるかも、とお悩みの方は、すぐに税理士への相談をおすすめします。
すぐに対処することで、追徴課税などのペナルティを抑えることができますよ。

戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
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