「住宅を相続したときの相続税はどう計算する?」
「住宅の相続でできる節税対策を知りたい」
住宅はもっとも身近な財産であり、相続財産に含まれることが多いです。
相続税の申告が必要な人にとって、親が住んでいた自宅や所有する土地を引き継ぐという人も多いでしょう。
では、住宅を相続した場合の相続税はどのように計算するのでしょうか?
身近な財産だからこそ、事前に知っておくべき節税対策も気になるところです。
そこで今回は、住宅を相続した場合の相続税の計算方法を解説します!
住宅に着目した相続税の求め方や相続税の節税対策についてもまとめていますよ。
この記事を読むことで、住宅を相続する場合にばっちり備えられるのでぜひ参考にしてくださいね。
目次
この記事の監修者

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
相続税の求め方

まず最初に、相続税をどのように算出するかを確認してみましょう。
相続税は以下のような流れで算出します。
- 遺産の総額を算出
- 遺産総額から法定相続人数に応じた基礎控除額を差し引く
- 差し引いた遺産総額を相続人の法定相続分で按分し、相続人ごとの仮の相続税額を算出
- 相続人ごとの相続税額を合算する
- 合算した相続税額を、実際の相続分であん分する
正確な相続税を求めるには、まず遺産の額をしっかり把握することが重要です。
遺産額が不明確では、正しい相続税が導き出せなくなってしまいます。
そして、家屋や土地などの住宅の評価は額が大きいので、遺産額に大きく影響します。
つまり、相続税を算出するには、住宅や土地の評価が非常に重要なキーになるのです。
相続した住宅の評価方法
住宅を相続した場合、価額の評価は家屋と土地に分けて算出します。
以下では、家屋と土地の評価の仕方をそれぞれみていきましょう。
家屋の評価

相続税における家屋の評価は、固定資産税評価額を用います。
固定資産税評価額は、毎年4月に所有者に送られる固定資産税納付通知書で確認できます。
ちなみに、相続税申告には相続が発生した年度の書類が必要です。
相続が発生した年の固定資産税納付通知書が手元にない場合や失くしてしまった場合は、固定資産評価証明書で確認できます。
固定資産評価証明書は、市役所の資産税課などで入手可能です。
ただし、固定資産税評価証明書を手に入れられるのは、以下の人に限られるので注意してください。
- 建物の所有者
- 建物の所有者と同居する家族
- 建物の所有者の代理人
- 建物の所有者の相続人
- 借地人
- 借家人
住宅の評価額は遺産の金額に大きく影響するので、早めに取っておくと安心ですよ。
土地の評価
相続税における土地の評価は、以下の2つの方法で算出します。
- 路線価方式
- 倍率方式
上記の方式は、好きな方を選べるわけではなく所有する土地ごとに決められています。
どちらで算出するかは国税庁のホームページにある「路線価図・評価倍率表」で確認が可能です。
所有する土地が面する道路に路線価が書いてあれば路線価を、なければ評価倍率表に記載されていますよ。
どちらで算出するかがわかったら、土地の広さや形状に応じて土地の評価を算出します。
路線価方式
路線価方式で土地を評価する計算方法は、以下の通りです。
【路線価方式での土地の計算方法】
路線価 × 土地の面積=相続税評価額
上記の計算方法で算出した土地の評価額に、形状や状況を考慮した補正率を適用します。
補正率を加味することで、土地が過度に高く評価されることを防ぎます。
つまり、形の整っていない土地や実際に使いにくい土地の評価を下げることができます。
補正率には、以下のようなものが挙げられます。
- 奥行価格補正率:道路からの奥行距離が長い、または短い土地を相続した場合に適用する補正率
- 不整形地補正率:複雑な形をした土地などに適用する補正率
逆に、2本の道路に面するなど利便性の高い土地では、以下のような加算率で調整されます。
- 側方路線影響加算率:角地や準角地に適用される加算率
- 二方路線影響加算率:敷地の正面と裏面の二つの道路と接している土地に適用される加算率
正確な土地の評価額を導き出すには、複雑な計算が必要です。
仮に、利用できる補正率を使わず土地の価額を過大評価し、相続税を払いすぎたとしても、基本的に税務署からは何も言ってくれません。
相続税における土地の評価は、補正率などを上手く使うと一般的な評価額よりも大幅に下げることができます。
賢く、適切な土地の評価をするには、相続税に詳しい税理士への相談がおすすめです。
倍率方式
評価したい土地の住所が倍率評価表に記載されている場合は、倍率方式を用います。
倍率方式での相続税評価額の求め方は、以下の通りです。
【倍率方式での土地の計算方法】
固定資産税評価額 × 評価倍率=相続税評価額
倍率方式であっても、路線価方式と同様に要件を満たした場合には補正計算が適用できます。
倍率方式で適用可能な土地は、以下の通りです。
- セットバックが必要となる宅地
- 地積規模が大きい宅地
- 都市計画道路予定地
セットバックとは将来建物を建て替える場合に、境界線まで後退が必要となる土地をいいます。
原則として、道路の中心線から左右に2mずつ後退したラインを境界線とみなします。
セットバックの補正対象となる部分の評価額は70%もの減額が可能です。
補正率を適用できるかどうかや適用した場合の適正な評価額は、路線価同様やや複雑になるため、土地評価に詳しい税理士に尋ねることをおすすめします。
住宅の相続税対策

住宅の相続税対策はいくつかありますが、大きく減額できるものに小規模宅地の特例が挙げられます。
場合によっては最大80%評価額を抑えられる、非常に節税効果を期待できる制度です。
ぜひ、自分の土地で利用できるかどうかをチェックしてみてください!
小規模宅地の特例
小規模宅地の特例は住居や事業で利用されている場合など、一定の要件に認められる土地で利用できます。
小規模宅地の特例は、大きく分けて住宅用の土地と事業用の土地で適用可能です。
今回は住宅の節税対策に関して解説しているため、事業用の土地については割愛します。
小規模宅地の特例を利用すると、住宅用の土地330㎡が80%まで減額できます。
適用するには、相続人に求められる以下の要件があります。
【小規模宅地の特例を利用する要件】
宅地 | 特定居住用宅地等(亡くなった人が自宅として使っていた宅地等) |
相続人 | ・配偶者・同居親族 (実態が確認できる同居、相続税申告期限まで宅地のある住宅に住み続ける)・別居親族(家なき子)※以下、枠外に要件を解説 |
配偶者は無条件で小規模宅地の特例を受けられます。
一方で、配偶者以外の親族が相続した場合、一定の要件が求められます。
同居親族の場合は、同居の実態が確認できることが必要です。
同居期間の制約はないため、亡くなる直前での同居であっても特例は受けられます。
ただし、相続税の申告期限までは当該の住宅に住み続けなければならない点に気を付けましょう。
住宅を売却して納税資金に充てようと考えている人は、制度が利用できなくなるため注意してください。
また、「家なき子」といわれる別居親族への相続の場合は、さらに以下4つの要件が必要です。
- 被相続人に配偶者や同居相続人がいない
- 相続時にその親族が住んでいる家屋を過去に所有していない
- 相続税の申告期限まで、引き続きその宅地等を所有している
- 宅地等を相続した親族が相続開始前3年以内に、その親族やその親族の配偶者・3親等内の親族・同族会社等が所有する家屋(相続開始直前に被相続人が住んでいた家屋を除く)に住んだことがない
別居親族の4つ目の要件はややわかりにくいですが、要は持ち家に住んでおらず、3年以上借家暮らしをしているかどうかということです。
上記の要件を満たせば、住宅の土地を大幅に節税できます。
住宅を相続した場合には、からなずチェックするべき制度といえるでしょう。
配偶者の優遇制度を利用
住宅を相続する場合には、配偶者への優遇制度を確認しておくのもおすすめです。
配偶者には、相続税や贈与税で優位に財産を贈れるようになっています。
大切な奥さんや旦那さんに余裕を持った老後を過ごす手助けになるため、利用の検討をおすすめします。
配偶者の税額軽減
相続税には、配偶者の税額軽減という制度があります。
この制度は、配偶者が相続した遺産のうち、以下の金額のどちらか多い金額までであれば相続税がかからないというものです。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額
つまり、配偶者が相続した財産が1億6,000万円以内なら相続税はかからないということになります。
また、遺産額が1億6,000万円を超える場合でも法定相続分、つまり配偶者なら1/2までなら相続税は課税されません。
相続税における配偶者の税額軽減は、相続税対策として有効です。
ただし、配偶者が高齢な場合など立て続けの相続が懸念されるときは、あえて制度を使わない方が長い目で見たときに節税効果が期待できる場合があります。
利用するべきかどうかは、一度税理士などへ相談してみるのがおすすめです。
贈与税の配偶者控除
贈与税の配偶者控除とは、以下のような場合2,000万円までを非課税扱いとできる制度です。
【贈与税の配偶者控除の要件】
婚姻期間:20年以上
贈与財産:居住用の不動産またはその購入のための資金
居住実態:贈与を受けた翌年の3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に実際に住んでいて、その後も引き続き住む見込みがあること
特例の適用を受けるには、贈与税の申告が必要です。
また、贈与後には不動産取得税がかかることや登録免許税が相続で受け取るよりも高額になることなどいくつかのデメリットもあります。
相続と贈与、どちらで配偶者に住宅を渡すかはしっかりと検討するのがおすすめです。
まとめ|住宅の相続は事前の準備で節税できる!

今回は、住宅にまつわる相続税についてお伝えしました。
住宅を相続する場合、建物と土地に分けて評価します。
居住用の住宅は小規模宅地の特例が認められるため、比較的評価額を抑えて相続できるでしょう。
また、配偶者への相続や贈与でも特例が使えることが多く、賢く利用することで相続税や贈与税が抑えられます。
ただし、どの制度も要件を満たさない場合は利用できない点やタイミングによっては長い目で見たときに節税効果が薄まってしまうこともあります。
制度を利用するときには、相続税や贈与税に詳しい税理士に相談してみてください。

戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
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