「小規模住宅用地の特例」と「小規模宅地等の特例」は、名前がよく似ています。
ただ、前者は固定資産税、後者は相続税と、負担を軽くする税金が異なる制度です。
対象や要件、手続きにも違いがあります。
ざっくり整理すると、固定資産税の制度は「住宅が建つ土地」の課税標準を軽くするもの。
一方、相続税の制度は、亡くなった方の自宅や事業用地などの評価額を、一定の要件のもとで減額します。
この記事では、混同しやすい2つの制度をまず表で比較し、そのうえでそれぞれの対象・軽減内容・手続き・注意点をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
・小規模住宅用地(固定資産税)と小規模宅地等(相続税)の違い
・それぞれの軽減内容と対象になる面積
・特例を受けるための手続きと、つまずきやすい注意点
この記事の監修者

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
小規模住宅用地の特例と小規模宅地等の特例の違い

はじめに、2つの制度の違いを一覧で確認しましょう。
細かい要件はこのあと順番に解説するので、ここでは全体像をつかめれば十分です。
| 比較項目 | 固定資産税:住宅用地の特例 | 相続税:小規模宅地等の特例 |
|---|---|---|
| 対象となる税金 | 固定資産税 | 相続税 |
| 主な対象 | 住宅の敷地 | 被相続人などが居住・事業・貸付事業に使っていた一定の宅地等 |
| 面積の基準 | 小規模住宅用地は住宅1戸につき200㎡まで | 居住用330㎡、事業用400㎡、貸付事業用200㎡までなど |
| 軽減内容 | 小規模住宅用地は課税標準を価格の6分の1にする | 居住用・一定の事業用は80%、貸付事業用は50%評価額を減額 |
| 判定時点 | 原則として毎年1月1日 | 相続開始の直前の利用状況など |
| 主な手続き | 土地・家屋の状況が変わった場合などに、自治体の定めに従って申告 | 相続税の申告書に明細書などの必要書類を添えて提出 |
どちらも土地に関する制度ですが、一方を利用すればもう一方も自動的に使えるわけではありません。
それぞれ別の要件で判定される点を、まず押さえておきましょう。
固定資産税の小規模住宅用地の特例とは

ここでは、固定資産税の特例について、対象になる面積・軽減内容・申告の要否の順に見ていきます。
固定資産税では、住宅の敷地として使われている土地を「住宅用地」と呼び、課税標準を軽くする特例を設けています。
そのうち、住宅1戸につき200㎡までの部分が「小規模住宅用地」です。
なお、制度の正式な位置づけは「住宅用地に対する課税標準の特例措置」。
検索では「小規模住宅用地の特例」という呼び方も多く使われています。
小規模住宅用地は住宅1戸につき200㎡まで
小規模住宅用地に当たるのは、住宅用地のうち住宅1戸につき200㎡までの部分です。
たとえば、一戸建て住宅の敷地が300㎡の場合、原則として次のように区分されます。
・200㎡まで:小規模住宅用地
・200㎡を超える100㎡:一般住宅用地
アパートやマンションなどの共同住宅では、原則として「住戸数×200㎡」までが小規模住宅用地になります。
なお、住宅用地として認められる範囲は、原則として家屋の床面積の10倍までです。
固定資産税の課税標準は6分の1になる
住宅用地の区分ごとの課税標準は、次のとおりです。
| 区分 | 対象となる部分 | 固定資産税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 住宅1戸につき200㎡まで | 価格の6分の1 |
| 一般住宅用地 | 200㎡を超える部分 | 価格の3分の1 |
たとえば、200㎡以下の住宅用地の価格が3,000万円だとします。
税率を標準税率の1.4%として単純計算すると、課税標準は500万円、固定資産税は7万円です。
3,000万円 × 1/6 × 1.4% = 7万円
ただし、実際の税額には負担調整措置や自治体ごとの税率が影響します。
そのため「特例で必ず税額が6分の1になる」という意味ではありません。
正確な金額は、納税通知書の課税標準額や税額でご確認ください。
なお、市街化区域内の土地などにかかる都市計画税にも、住宅用地の特例があります。
一般的な特例率は、小規模住宅用地が価格の3分の1、一般住宅用地が価格の3分の2です。
併用住宅は居住部分の割合によって対象面積が変わる
店舗兼住宅や事務所兼住宅といった併用住宅も、一定の範囲が特例の対象になりますが、敷地のすべてが住宅用地になるとは限りません。
住宅用地となる割合は、建物の構造や階数、床面積に占める居住部分の割合などで決まります。
判定が複雑になりやすいため、併用住宅をお持ちの場合は、土地が所在する市区町村へ確認すると安心です。
原則として1月1日に住宅が建っていることが必要
固定資産税は、毎年1月1日時点の状況を基準に課税されます。
そのため、1月1日に住宅が存在しない建築予定地や建築中の土地は、原則として住宅用地に当たりません。
もっとも、既存住宅の建替え中であれば、特例が継続される場合もあります。
所有者や建替え前後の住宅などに一定の要件があり、必要書類も自治体によって異なるため、建替え前に確認しておきましょう。
住宅用地の申告が必要になるケース
住宅用地の特例は、自治体が土地や家屋の利用状況を確認して適用します。
住宅の新築・増築・取壊し・建替えや用途変更などがあったときは、申告が必要になる場合があります。
主な例は次のとおりです。
・住宅を新築、または増築した
・住宅の全部、または一部を取り壊した
・住宅を建て替える
・店舗から住宅、住宅から店舗などへ用途を変更した
・庭の一部を月極駐車場にするなど、土地の利用状況を変えた
申告書の名称・提出期限・提出先は、自治体によって異なります。
土地が所在する市区町村の固定資産税担当部署へお問い合わせください。
東京23区の場合は、土地が所在する区を担当する都税事務所が窓口です。
相続税の小規模宅地等の特例とは

ここでは、対象になる宅地等と減額割合を確認したうえで、取得する人ごとに変わる要件を整理します。
相続税の小規模宅地等の特例では、一定の宅地等の相続税評価額を減額できます。
対象は、被相続人などが居住や事業に使っていた宅地等を、相続または遺贈で取得した場合です。
「小さい土地なら使える制度」というわけではありません。
土地の利用状況、取得した人、相続後の居住・事業・保有の状況など、区分ごとに要件が決められています。
対象となる宅地等と減額割合

主な区分・限度面積・減額割合は、次のとおりです。
| 主な利用状況 | 区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|---|
| 被相続人などの自宅の敷地 | 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 被相続人などの事業に使っていた土地 | 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 一定の同族会社の事業に使われていた土地 | 特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 賃貸住宅や駐車場などの貸付事業に使っていた土地 | 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
たとえば、相続税評価額が5,000万円の自宅敷地があるとします。
敷地全体について80%の減額を受けられる場合、相続税の計算に入れる価額は1,000万円です。
5,000万円 ×(1-80%)= 1,000万円
複数の区分を併用するときは、貸付事業用宅地等を含むかどうかで限度面積の計算方法が変わります。
各区分の上限面積まで単純に適用できるとは限らない点に注意しましょう。
自宅の敷地に適用するための要件

特定居住用宅地等に当たるかどうかは、土地を取得した人や、被相続人の住まいの状況によって変わります。
配偶者が取得する場合
取得者についての居住継続要件や保有継続要件はありません。
同居していた親族が取得する場合
原則として、相続税の申告期限までその家に住み、土地を保有する必要があります。
別居していた親族が取得する場合
一定の要件を満たせば、適用できる可能性があります。
適用には、被相続人に配偶者や同居相続人がいないことなど、複数の条件を満たさなければなりません。
さらに、取得者が相続開始前3年以内に一定の持ち家に住んでいないことや、申告期限までの土地の保有も求められます。
被相続人が老人ホームに入居していた場合
被相続人が亡くなる直前に自宅で暮らしていなくても、特例を使える場合があります。
たとえば、要介護認定や要支援認定などを受け、一定の老人ホーム等に入居していたケースです。
ただ、入居後に自宅を新たに第三者へ貸すなど、別の用途に使っている場合は対象外になることもあります。
老人ホームの種類や入居後の自宅の使い方も判定に影響するため、あてはまりそうな場合は個別に確認しておくと安心です。
事業用・貸付事業用の土地に適用するための要件

事業に使っていた土地では、区分ごとに事業と保有の継続要件を確認します。
特定事業用宅地等の場合
原則として、土地を取得した親族が被相続人の事業を申告期限までに引き継ぎ、申告期限まで事業を続けて土地を保有する必要があります。
被相続人と生計を一にしていた親族の事業に使われていた土地も対象です。
この場合、その親族には、相続開始前から申告期限までの事業の継続と、土地の保有が求められます。
貸付事業用宅地等の場合
被相続人の貸付事業に使われていた土地では、取得した親族が申告期限までに事業を引き継がなければなりません。
そのうえで、申告期限まで貸付事業を行い、土地を保有します。
被相続人と生計を一にしていた親族の貸付事業に使われていた土地では、相続開始前から申告期限まで事業を続けることが要件です。
土地についても、申告期限まで保有することが求められます。
同族会社へ貸していた土地の場合
被相続人が同族会社へ貸していた土地も、無条件で400㎡まで80%の減額を受けられるわけではありません。
対象になるのは、相続開始の直前に、被相続人や親族などが株式または出資の50%超を持つ一定の法人へ貸し付けていた土地などです。
この土地は、その法人の事業に使われている必要があります。
不動産貸付業などに使われている土地は、特定同族会社事業用宅地等には当たりません。
あわせて、次の要件も確認されます。
・土地を取得した親族が、申告期限の時点でその法人の役員である
・その親族が、申告期限まで土地を保有している
・法人による土地の事業利用が、原則として相続開始の直前から申告期限まで続いている
これらに共通する注意点として、相続開始前3年以内に新たに事業用または貸付事業用にした土地は、原則として対象外です。
事業用と貸付事業用では例外の内容が異なるため、あてはまりそうなときは個別に確認しましょう。
特例を利用するには相続税の申告が必要
小規模宅地等の特例を使うときは、次の点を確認しましょう。
・相続税の申告期限は、原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内
・特例で納付税額が0円になる場合でも、相続税の申告は必要
・申告書に計算明細書や遺産分割協議書の写しなどを添付する
・対象になり得る宅地等を取得した人が2人以上いる場合は、原則として全員の同意が必要
また、原則として申告期限までに遺産分割を終えておかなければなりません。
期限までに分割できないときも、一定の手続きによって後から特例を適用できる場合があります。
必要書類や提出期限が定められているため、早めの対応が安心です。
売却や生前贈与に関する注意点

特例を使えるはずが、土地の扱い方によっては対象外になることもあります。
ここでは、売却と生前贈与の2つのケースを見ていきます。
申告期限前に土地を売却する場合
土地を申告期限前に売却すること自体は、法律で禁じられていません。
申告期限までの保有が要件になっているケースでは、売却によって特例を使えなくなることがあります。
一方で、配偶者が自宅敷地を取得する場合など、保有継続要件がないケースも見られます。
売却をお考えのときは、契約前に特例への影響を確認しておきましょう。
生前贈与で土地を取得した場合
小規模宅地等の特例は、原則として相続または遺贈で取得した宅地等が対象です。
そのため、相続時精算課税を選んで生前贈与を受けた土地には適用できません。
相続時精算課税を使うかどうかは、小規模宅地等の特例が使えなくなる影響も含めて、慎重に判断しましょう。
2つの特例は同じ土地に適用されることもある

固定資産税の住宅用地の特例と、相続税の小規模宅地等の特例は別の制度です。
ただし、自宅敷地に両方が適用される場合もあります。
固定資産税では小規模住宅用地に当たり、相続時には特定居住用宅地等に当たるケースです。
もっとも、固定資産税の特例が適用されているからといって、相続税の特例も必ず使えるとは限りません。
相続税では、土地の利用状況だけでなく、取得者や相続後の居住・保有状況なども確認されます。
小規模住宅用地の特例に関するよくある質問

住宅用地の特例について寄せられやすい疑問を、面積・空き家・相続後の手続き・2つの制度の関係の順にまとめました。
ご自身の状況に近いものから確認してみてください。
まとめ:混同しやすい2つの特例、違いを押さえて自分の土地はどちらか見極めよう

小規模住宅用地の特例(固定資産税)は課税標準を価格の6分の1に、小規模宅地等の特例(相続税)は評価額を最大80%減額できる制度です。
名前は似ていても、対象になる税金・判定時点・面積・要件・手続きはそれぞれ異なります。
特に相続税の特例は、土地を取得する人や相続後の利用状況によって適用の結果が変わるため、注意が必要です。
「使えると思って売却したら、あとから要件を満たしていなかった」となると、相続税の負担が大きく変わることもあります。
判定は複雑で、ご家族ごとに事情も異なるため、遺産分割や売却を進める前の確認が安心です。
「うちの土地は対象になる?」といった疑問がありましたら、相続税を専門とする響き税理士法人へお気軽にお問い合わせください。

戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。

















