相続した不動産を売却!確定申告前に絶対に確認すべき必要書類とは?

税理士友野
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遺産相続で不動産を引継ぐには遺産分割協議を行い、そのうえで登記しなければなりません。さらに遺産分割協議により相続した土地を売却した場合、譲渡所得という所得税が課税されます。

相続税の金額によっては、相続税を納付したうえに所得税も課税されるということがありえるのです。

特に珍しいケースではありません。

そこでここでは、不動産を売却したときに必要となる「確定申告」を中心に解説します。

不動産を売却したら「譲渡所得」の計算が必要

不動産を売却した場合、「譲渡所得」が発生します。

不動産売買にかかる譲渡所得は、売却した本人が会社員であろうが個人事業主であろうが関係なく、課税の対象として計算しなければなりません。

そのとき、不動産でも「土地」と「建物」の2種類があります。

例えば居住用の戸建て住宅を売却した場合、もちろん建物に価値があるかどうかという問題はありますが、建物だけを売却、土地だけを売却とセットになっているものを別々に売却することはありません。

そもそも「譲渡所得」とは

先にも触れたように、もともと譲渡所得の対象となるものには不動産(土地・建物)のほか、株式やゴルフ会員権も対象になります。

ただし、「相続」というところに限定した場合に最も多くの問題点が出てくるのが「不動産」です。

株式やゴルフ会員権は、その価額を出す方法が明確ですが不動産は相続税を計算するときは路線価や倍率方式で評価し、それが売買価格に直結するのかといえばそうではありません。

そのため、不動産以外の対象となるものに比べるとやや扱いにくいというポイントがあります。

譲渡所得は発生しないこともある

では、今回不動産の売買に限って考えると譲渡所得は発生しないケースもあります。

これは譲渡所得の計算方法を理解するとわかるのですが、単純に買った価格より売った価格の方が低い場合は「損」をしているので所得は出ないということになります。

譲渡所得は「確定申告」で申告

ではこの譲渡所得は、どのタイミングで計算し申告するのでしょうか。

譲渡所得は「所得税」の中に含まれる所得の1つなので確定申告で申告します。

確定申告は令和2年1月から令和2年12月31日までの所得を令和3年2月16日から令和3年3月15日までに申告します。

例えば、不動産の売買を令和2年11月3日に行えば令和3年3月15日までの確定申告で譲渡所得として申告しなければなりません。

(緊急事態宣言の発出に伴い、令和2年分の確定申告期限は令和3年4月15日まで延長されました)

譲渡所得の申告に必要な書類とは

では、譲渡所得の申告で必要になる書類には何があるのでしょうか。

それは大きく分けて3種類あり「税務署」から取寄せるものと「自分で準備」するもの、、そして「法務局」から取寄せるものです。

自分で用意しなければならないもの

  • 不動産売却時の売買契約書
  • 不動産購入時の売買契約書
  • 仲介手数料、印紙税などの領収書

税務署よりとりよせるもの

  • 確定申告書B様式
  • 分離課税用の確定申告書
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)

法務局でとりよせるもの

  • 家屋の登記事項証明書

計算の基礎となる「取得日」「取得価額」は引き継げる

例えば、子供が自分の親から相続で引き継いだ不動産の取得日や取得価額が売買契約書などにより確認できている場合、相続発生の日にかかわらず、その引き継いだ子供は、親が取得した日、取得価額をそのまま引き継ぐことができます。

例えば、平成20年4月に不動産を購入し令和2年4月に相続が発生、その子がその不動産を相続したという場合、相続発生の令和2年4月ではなく平成20年4月を取得日として引き継げます。

引き継いだ取得日で「長期」「短期」を判定

譲渡所得には「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2種類があります。

譲渡をした年の1月1日現在で、所有期間が5年以下の場合は「短期」、5年を超える場合は「長期」になります。

短期と長期の大きな違いは税額を計算するときの税率です。

所得税は、短期は30%で計算し、長期は短期の半分である15%で計算します。

この短期と長期の区分は、所得税だけではなく住民税にも影響を及ぼします。

もともとは短期で売却するものは、自分のために長く使うことを目的としているとは判断できず、「売買目的」であるから儲けに対して税率は高くてもいいという考え方です。

相続財産を譲渡した場合は「取得費加算の特例」の適用ができる

相続により取得した不動産を売却する場合に特例が利用できるケースがあります。

その特例は、譲渡所得の計算上、一定金額を控除することができるというものです。

具体的には相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算するというもので、本来であれば実際にかかった取得費の実額でなければ控除できません。

しかし相続により取得した不動産を一定期間内に譲渡した場合にはこの特例を利用できます。

具体的には、次に述べるようようケースが当てはまります。

取得費加算の特例とは

例えば、売却した価格は最近の話なので売買契約書などもそろっていますが、その売却した不動産を実際に購入しているのは、相当期間前というのも珍しくありません。

その場合、「取得費」といっても全くわからない場合があります。

このような場合においても、相続税の一定金額を取得費として認めてもらえれば、譲渡所得は低くなります。

計算方法は次の通りです。

「その者の相続税額×その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の価額÷(その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額)」

特例を受けるための要件

ただし、この特例を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。

  • 相続や遺贈により財産を取得した者であること。

→この特例を受ける金額が、相続税をもとに計算しているため

  • その財産を取得した人に相続税が課税されていること。

→言い換えれば、譲渡した人が相続税を納税しているために受けられる特例である

  • その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

必要となる書類

  • 相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書【土地・建物用】)や株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

この2種類を作成し、税務署へ申告書と一緒に提出します。

そのほか譲渡所得の「特例」を適用する場合

上記では主に相続を中心として取得した場合の譲渡所得の特例について触れてきました。

他にも、相続や贈与で取得した不動産を売買したときに発生した譲渡所得で利用できる特例があります。

もちろん相続や贈与が関係していない「譲渡所得」そのものにも特例があり、それを適用して所得税を申告することも可能です。

では実際にどのような特例があるのでしょうか。

空き家の3,000万円特別控除の適用

こちらは相続により取得していることが第一条件となりますが、以下の要件に当てはまれば適用できます。

目的は「空き家をなくすこと」なので、「空き家の3,000万円特別控除」として周知されています。

  • 被相続人が一人で住んでいた
  • 相続の開始から3年目の年の12月31日までに売ること
  • 昭和56年5月31日以前に建築された建物とその敷地

→これは、耐震基準の関係です。

  • 相続してから譲渡するまでの期間、空き家だった
  • 譲渡対価が1億円を超えていないこと
  • 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと

必要書類

適用を受けるためには、空き家だったことの証明も必要であるため、以下の書類の準備が必要です。

  • 被相続人居住用家屋等確認申請書(別記様式1-1)
  • 被相続人の除票住民票の写し
  • 被相続人居住用家屋の譲渡時の相続人の住民票の写し
  • 家屋又はその敷地等の売買契約書の写し等
  • 次のいずれかの書類

電気もしくはガスの閉栓証明書、または水道の使用廃止届出書

該当する家屋の媒介契約を締結した宅地建物取引業者が、その家屋の現況が空き家であり、かつ、その空家は除却又は取壊しの予定があることを表示して広告していることを証する書面の写し

特定居住用財産の買換え特例の適用

「特定居住用財産」という聞きなれない言葉が出てきています。

これは単純に「マイホーム」と解釈してかまいません。

マイホームを買い換えたときは、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることが出来る制度です。

ただしこれを適用するには、以下の要件を満たす必要があります。

【対象資産】

  • 所有期間が10年を超え、居住期間が10年以上の場合
  • 2021年12月31日までの居住用財産の譲渡
  • 譲渡対価が1億円まで

【買換え先資産の要件】

  • 買換え期間が前年の1月1日から譲渡した年の翌年の12月31日で、一定の期限までに居住すること
  • 取得する個人が居住する土地家屋(借地権も含む)
  • 住宅家屋の床面積は50㎡以上、土地の面積は500㎡以下、住宅家屋が中古住宅の場合は、一定の耐火建築物である時には建築後年数が25年以内であるもしくは、新耐震基準に適合するもの
  • 耐火建築物に該当しないものである場合には、建築後年数が25年以内であるか、買換えで売る物件の売った年の年末までか、または税務署長の承認を得て買換え期限の延長をした場合のその期限までに、耐震基準に適合することにつき証明されたもの

必要書類と入手場所

適用を受ける場合の必要書類と入手場所は以下の通りです。

税務署

  • 確定申告書・譲渡所得の内訳書など

市役所

  • 戸籍の附票(10年以上居住を証明する)

法務局

  • 旧居の土地・建物の全部事項証明書
  • 新居の土地・建物の全部事項証明書

売買により既に自分で所有しているもの

  • 売却時の書類(コピー)

→売買契約書・譲渡費用領収書など

  • 旧居取得時の書類(コピー)

→売買契約書・売買代金受領書・取得費用領収書など

  • 新居取得時の書類(コピー)

→売買契約書・売買代金受領書・取得費用領収書など (本人所有)

  • マイナンバーに関する書類

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

この特例はマイホームの買い換えでもともと住んでいた古い自宅を売却したときに発生した「損失」をその年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)できるというものです。

またそれでも控除しきれなかった場合には、翌年以降3年以内に繰り越して控除できます。

必要書類と手続き

この適用を受ける場合には、以下の準備が必要です。

ただし、損益通算を適用する場合と、繰越控除を適用する場合で書類が異なるのでそれぞれについて解説します。

【損益通算の場合】

  • 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
  • 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(租税特別措置法第41条の5用)
  • 旧居宅に関する書類
  • 新居宅に関する書類

【繰越控除の場合】

  • 損益通算の適用を受けた年分について、一定の書類の添付がある期限内申告書を提出していること

→申告書を提出していなければ、そもそもどれだけの損失があったのか把握ができないため。

  • 損益通算の適用を受けた年分の翌年分から繰越控除を適用する年分まで連続して確定申告書(損失申告用)を提出

→初年度に発生した損失をベースに増減を把握し損失の残高を明確にするため。

  • 確定申告書に年末における住宅借入金等の残高証明書を添付

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

「特定のマイホーム」という言葉は聞きなれないかもしれません。

これは「住宅ローンが残っているマイホーム」と言い換えるとイメージしやすくなります。

この住宅ローンが残っているマイホームを売却し発生した譲渡損失も「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」のように特例があります。

内容を簡単に説明すると、令和3年12月31日までに住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却した場合に適用できる特例です。

もしかするとこのコロナ禍の影響で該当する人が多くなることが予測されます。

住宅ローンの要件以外に、譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えるマイホーム(譲渡資産)で日本国内にあるものの譲渡であることなどがあります。

必要書類と手続き

この特例の適用もマイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例と同様に、損益通算と繰越控除で準備するものが異なります。

【損益通算】

  • 特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
  • 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(租税特別措置法第41条の5の2用)
  • 売却したマイホームに関する次の書類
  • ① 登記事項証明書や売買契約書の写しなどで所有期間が5年を超えることを明らかにするもの
  • ② 「譲渡資産に係る住宅借入金等の残高証明書」(売買契約日の前日のもの)

【繰越控除】

  • 損益通算の適用を受けた年分について、損益通算で使用した全ての書類の添付がある期限内申告書を提出
  • 損益通算の適用を受けた年分の翌年分から繰越控除を適用する年分まで連続して確定申告書(損失申告用)を提出

特例適用に関係なく必ず必要となる書類

特例適用に関係なく、譲渡所得を申告するときには必要となる書類があります。

この基本的な書類について説明します。

譲渡時の書類と取得時の書類

譲渡ですが、売却する側の書類だけではなく取得したときの書類も必要です。

万が一、取得費が分かるものがなかったとしても、譲渡所得の計算では取得費を売却価額の5%と見積もって計算できます。

※ただしその場合は、実際にかかっている取得費よりも低く計算される可能性があります。

必要書類については以下の通りです。

  • 確定申告書
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書にセットされています)
  • 売買契約書のコピーや控え(原本は自身で保管)
  • 仲介手数料など譲渡費用が分かる領収書のコピーや控え
  • 取得費や取得時の経費が分かる書類(一般的には売買契約書と一緒に渡されるか、記載があります。)
  • 譲渡した土地・家屋の全部事項証明書

まとめ

相続で取得した不動産を売却した場合、売却した人の譲渡所得の申告が必要になります。

結果的に税額がかからないこともあります。

いずれにしても、申告には売買契約書や取得費が分かる書類が必要です。

「売買契約が終わったから終了」というのではなく、必ず保管しておくことをおすすめします。

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ABOUT US
税理士 友野祐司
税理士法人レガシィ勤務を経て2011年に響き税理士法人に入社、相続税専門の税理士として、横浜を中心に相続税申告のサポートをを行っています。どこよりも、素早い対応を心がけておりますので、少しでも相続税に関して、不安や疑問がありましたらお気軽にご相談ください。