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不動産の生前贈与は税率が高い?生前贈与時にかかる3つの税金

税理士友野
税理士友野

生前贈与を計画されている方の中には、持っている不動産をそのまま贈与した方がいいのか、それとも持っている不動産を現金化したあとで贈与した方がいいのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

不動産の生前贈与にかかる3つの税金

不動産の生前贈与を受けると、その生前贈与を受けた者に贈与税、登録免許税、不動産取得税の3つの税金が課税されるのが一般的です。

このうち贈与税は贈与により財産を取得したときに課税される税金、登録免許税は不動産の登記等を受ける者が課税される税金、不動産取得税は土地や建物を取得したときに課税される税金です。

この3つの税金のうち贈与税は財産が何であれ課税されますが、登録免許税は登記ができない財産を取得した場合は課税されず、不動産取得税は取得した財産が不動産でなければ課税されません。

たとえば、贈与により取得した財産が現金の場合は、下表のとおり贈与税しか課税されません。

 

贈与税 登録免許税 不動産取得税

不動産

(土地・建物)

課税される 課税される 課税される

金融資産

(現金・預貯金等)

課税される 課税されない 課税されない

つまり、贈与時の時価が同じなのであれば、トータルの税負担は金融資産よりも不動産の方が重いということになります。

以下では、不動産の生前贈与を受けた場合に課される3つの税金、すなわち贈与税、登録免許税、不動産取得税について詳しく紹介します。

生前贈与に係る贈与税

贈与税の課税対象

贈与税は個人からの贈与によって財産を取得した場合にその取得した財産に課税される税金です。

贈与税の納税義務を負うのは、贈与によって財産を取得した人です

贈与税額は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額の合計額から基礎控除額である110万円を引いた金額に贈与税率を乗じて計算します。

贈与税の税率(原則課税)

1. 原則の税率

財産を生前贈与する場合に適用される贈与税率は、次のとおりです(相続税法21条の7)。

基礎控除後の課税価格 税率
200万円以下の金額 10%
200万円超300万円以下の金額 15%
300万円超400万円以下の金額 20%
400万円超600万円以下の金額 30%
600万円超1,000万円以下の金額 40%
1,000万円超1,500万円以下の金額 45%
1,500万円超3,000万円以下の金額 50%
3,000万円超の金額 55%

たとえば、基礎控除後の課税価格が1,500万円だった場合の贈与税額は500万円です。

計算過程は次の表のとおりです。

基礎控除後の課税価格 税率 税額
200万円以下の金額 10% 20万円
200万円超300万円以下の金額 15% 15万円
300万円超400万円以下の金額 20% 20万円
400万円超600万円以下の金額 30% 60万円
600万円超1,000万円以下の金額 40% 160万円
1,000万円超1,500万円以下の金額 45% 225万円
500万円

なお、このままだと贈与税額の計算が煩雑なので、速算表が用意されています。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下の金額 10%
200万円超300万円以下の金額 15% 10万円
300万円超400万円以下の金額 20% 25万円
400万円超600万円以下の金額 30% 65万円
600万円超1,000万円以下の金額 40% 125万円
1,000万円超1,500万円以下の金額 45% 175万円
1,500万円超3,000万円以下の金額 50% 250万円
3,000万円超の金額 55% 400万円

たとえば、基礎控除後の課税価格が1,500万円だった場合の贈与税額を速算表で計算すると、1,500万円×45%ー175万円=500万円となります(先ほどの計算結果と同じです)。

2. 直系尊属から贈与を受けた場合の特例税率

財産の贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合は、原則の税率ではなく特例の税率が適用されます。

特例が適用される場合の贈与税率は次のとおりです(租税特別措置法70条の2の5)。

基礎控除後の課税価格 税率
200万円以下の金額 10%
200万円超400万円以下の金額 15%
400万円超600万円以下の金額 20%
600万円超1,000万円以下の金額 30%
1,000万円超1,500万円以下の金額 40%
1,500万円超3,000万円以下の金額 45%
3,000万円超4,500万円以下の金額 50%
4,500万円超の金額 55%

特例税率の場合も、速算表が用意されています。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下の金額 10%
200万円超400万円以下の金額 15% 10万円
400万円超600万円以下の金額 20% 30万円
600万円超1,000万円以下の金額 30% 90万円
1,000万円超1,500万円以下の金額 40% 190万円
1,500万円超3,000万円以下の金額 45% 265万円
3,000万円超4,500万円以下の金額 50% 415万円
4,500万円超の金額 55% 640万円

たとえば、基礎控除後の課税価格が1,500万円だった場合の贈与税額は410万円です(原則の税率で計算するよりも90万円少ない金額です)。

なお、特例税率の適用を受ける場合で、次の①または②のいずれかに該当するときは、贈与税の申告書とともに、財産の贈与を受けた人の戸籍の謄本または抄本その他の書類でその人の氏名、生年月日及びその人が贈与者の直系卑属に該当することを証する書類を提出する必要があるのでご注意ください。

  1. 特例税率の適用を受ける財産のみの贈与を受けた場合で、その財産の価額から基礎控除額(110万円)を差し引いた後の金額(課税価格)が300万円を超えるとき
  2. 特例税率の適用を受ける財産と原則税率の適用を受ける財産の両方の贈与を受けた場合で、その両方の財産の価額の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた後の金額(課税価格)が300万円を超えるとき

 

贈与税の税額の目安(原則課税)

原則課税の場合の不動産にかかる贈与税の金額は、次のステップで算定します(その年に贈与を受けた財産は当該土地建物以外にはないものとします)。

  1. 贈与により取得する土地、建物を評価します
  2. ①の金額を合算します
  3. ②から基礎控除額(110万円)を引きます
  4. ③に贈与税の税率を乗じます

たとえば、贈与により取得する土地の評価額が10,000万円(1億円)、建物の評価額が5,000万円だとすると、原則税率の場合の贈与税額は77,895,000円、特例税率の場合の贈与税額は75,495,000円と計算できます。

贈与税の税率(相続時精算課税制度の適用を受けた場合)

60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対し財産を贈与した場合においては、原則課税の他に「相続時精算課税」という制度を選択できます。

相続時精算課税制度の適用を受けた場合、この特例の適用を受けた贈与者から贈与を受ける財産については2,500万円の特別控除額がもうけられています。

この特別控除額を引いた残額に対しては、一律で20%税率で贈与税が課税されます。

贈与税の税額の目安(相続時精算課税)

相続時精算課税の場合の不動産にかかる贈与税の金額は、次のステップで算定します(その年に贈与を受けた財産は当該土地建物以外にはないものとします)。

  1. 贈与により取得する土地、建物を評価します
  2. ①の金額を合算します
  3. ②から特別控除額(2,500万円)を引きます。なお、前年以前に特別控除額を使っている場合は、2,500万円からその使った特別控除額を引いた金額が控除額となります
  4. ③に贈与税の税率(20%)を乗じます

たとえば、贈与により取得する土地の評価額が10,000万円、建物の評価額が5,000万円で、これまで特別控除額を使ったことがない場合の贈与税額は、15,000万円-2,500万円=12,500万円の20%で2,500万円と計算できます。

なお、上記の例で、原則課税の場合の贈与税額は特例税率であっても77,895,000円であるのに対して、相続時精算課税制度を選択した場合の贈与税額は2,500万円と、3倍以上の開きがあります。

これだけだと、「相続時精算課税制度を選択した場合の方がお得では?」と思われるかも知れませんが、「相続時精算」の文言どおり、相続時精算課税制度を選択した場合は贈与税の申告納付で課税関係が完結せず、将来相続が発生したときに精算されます(原則課税の場合はそのようなことはありません)。

この「精算」について、国税庁のホームページでは次のように説明しています。

相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。

その際、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。

なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。

出典:国税庁ホームページ

登録免許税とは?

登録免許税の課税対象

売買、相続、贈与などによる所有権の移転の登記などの申請をする場合は、登録免許税法で定められた登録免許税を納付する必要があります

登録免許税の納税義務者は登記などを受ける者です。

登録免許税額は、原則として課税標準に税率を乗じて計算します。

登録免許税の課税標準

登録免許税の課税標準は、市町村役場で管理している固定資産課税台帳の価格がある場合はその価格です。

この価格は、市町村役場から毎年通知される固定資産課税明細書に記載されています(固定資産税納付通知書に同封されています)。

「固定資産課税台帳の価格」とは固定資産課税明細書において「価格」または「評価額」と表記されている価格であり、「固定資産税課税標準額」ではありません。

なお、固定資産課税明細書の紛失等により固定資産課税台帳の価格を確認することができない場合は、市町村役場で発行する証明書により確認することができます。

贈与により取得する土地建物に固定資産課税台帳の価格がない場合の登録免許税の課税標準は、登記所が認定した価額となります。

詳しくは、不動産を管轄する登記所の登記官にお問合せください。

登録免許税の税率

贈与による所有権の移転にかかる登録免許税の税率は2%です。

「2%」というと大したことがないように思えますが、固定資産課税台帳の価格の2%ですから、たとえば固定資産課税台帳の価格が1,000万円の場合は20万円です。

もちろん、これには登記に係る司法書士への報酬は含めていませんから、登記を司法書士に依頼すると更に費用が発生します。

なお、土地を売買により取得した場合は、租税特別措置法において登録免許税の軽減規定(2%が1.5%に軽減されます)が用意されていますが、贈与により土地を取得した場合には同じような軽減規定は用意されていないため、原則どおりの2%の税率が適用されます。

また、住宅用家屋を売買により取得した場合は、租税特別措置法において登録免許税の軽減規定が用意されていますが、贈与により住宅用家屋取得した場合には同じような軽減規定は用意されていませんので、土地と同じく原則どおりの2%の税率が適用されます。

登録免許税の税額の目安

上述したとおり、登録免許税額は課税標準に税率を乗じて算定します。

このうち「課税標準」は固定資産課税台帳の価格、「税率」は2%ですから、固定資産課税明細書で定資産課税台帳に記載された価格さえ確認すれば、持っている不動産を贈与した場合の登録免許税額をご自身で算定することが可能です。

たとえば、土地の固定資産課税台帳の価格が10,000万円、建物の固定資産課税台帳の価格が5,000万円だとすると、登録免許税の税額は300万円と計算できます。

贈与税の制度選択と登録免許税額

登録免許税の課税標準は固定資産課税台帳の価格ですから、贈与税とは関係がありません。

したがって、贈与税で原則課税を選択した場合と相続時精算課税を選択した場合とで、登録免許税の税額は変わりません

不動産の取得と登記申請義務

登録免許税を納付する必要があるのは、贈与などによる所有権の移転の登記などの申請をする場合です。

所有権の移転の登記を行わなくてもその土地や建物を物理的に使用することはできるため、「所有権の移転の登記に登録免許税と司法書士の費用がかかるなら、登記の申請はしなくてもよいのでは?」とお考えの方もいるかも知れません。

確かに、所有権の移転の登記を申請することは義務ではありません

不動産登記法上、「新築した建物または区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない」という規定があるため(不動産登記法47条1項)、新築した建物や表題部のない建物を取得した場合は登記の申請をする義務がありますが、そうでない場合は取得者に法令上の登記申請義務は課されていません。

それでも、次の二点の理由から、所有権の移転の登記申請を行う方がよいと考えます。

  1. 不動産の権利は登記をしなければ第三者に対抗できないこと
  2. 書面によらない贈与のうち履行の終わっていない部分は各当事者が自由に撤回できること

①について、民法177条では、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と規定しているため、第三者(贈与契約の贈与者と受贈者以外の者)に対して受贈者が自らの権利(この不動産の所有権)を対抗する場合は登記が必要となります。

贈与を受けたときは、その不動産に第三者が権利を主張することは考えられなくても、時間が経過して贈与者の財産に差し押さえが生じたり、贈与者が死亡して相続が生じたりしたときに、突然第三者から権利を主張される可能性もありますので、そういったリスクを排除するという意味で、所有権の移転の登記を行うことが望ましいと考えます。

②について、不動産の贈与が口頭で行われた場合にはかなり重要な理由です。

民法550条では、「書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。

ただし、履行の終わった部分については、この限りでない」と規定しているところ、「不動産の贈与契約にもとづいて当該不動産の所有権移転登記がなされたときは、その引渡の有無をとわず、民法550条にいう履行が終ったものと解すべきである」とする判例(最判昭和40年3月26日)があるためです。

つまり、書面によらない贈与であっても、所有権の移転の登記を終えれば各当事者が贈与契約を解除することはできなくなります

これも①と同じで、贈与を受けたときは贈与者が贈与を撤回することは考えられなかったとしても、時間が経過して贈与者と受贈者の関係にヒビが入ることは考えられます。

そうしたときに、贈与者から「民法550条の規定に従って贈与契約を解除する」と言われて、居住している家屋を立ち退かざるを得なくなる状況に陥るリスクもあります。

そういったリスクを排除するという意味でも、所有権の移転の登記を行うことが望ましいと考えます。

不動産取得税とは?

不動産取得税の課税対象

不動産取得税とは、土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得したときに、取得した者に対して課税される税金です。

有償・無償の別、登記の有無にかかわらず課税されます。

ただし、相続により取得した場合など、一定の場合には課税されません。

不動産取得税は地方税法73条以降で規定されており、課税主体は不動産所在の道府県です(地方税法73条の2)。

不動産取得税の税率

不動産取得税の税率は、取得した不動産の価格(課税標準額)の3%または4%です。

土地と建物のうち住宅に該当するものについては、平成15年(2003年)4月1日から令和6年(2024年)3月31日までに取得されたものに限り、税率が4%から3%に軽減されます(下表のとおりです)。

 

土地 建物(住宅) 建物(非住宅)
税率 3% 3% 4%

また、「取得した不動産の価格(課税標準額)」は、固定資産課税台帳に登録されている価格です。

上述した登録免許税の課税標準額と同じです。

なお、令和6年(2024年)3月31日までに宅地等(宅地及び宅地評価された土地)を取得した場合、当該土地の課税標準額は固定資産課税台帳の価格の2分の1となります。

不動産取得税の税額計算

以上の説明を踏まえて、不動産取得税の税額を計算してみます。

これまでと同じ例で、固定資産課税台帳の価格が10,000万円の土地(宅地)と住宅用建物の固定資産課税台帳の価格が5,000万円の住宅用建物の贈与を、2021年5月に受けた例で考えます。

1. 土地について

この土地は宅地であり、かつ2024年3月31日までに取得していますから、課税標準額は固定資産課税台帳の価格の2分の1、すなわち5,000万円となります。

また、土地の税率は1%軽減されて3%が適用されます。

以上より、土地にかかる不動産取得税の税額は150万円です。

2. 建物について

この建物は住宅用建物であり、かつ2024年3月31日までに取得していますから、税率は1%軽減されて3%が適用されます。

以上より、建物にかかる不動産取得税の税額は150万円です。

以上から、土地と建物の贈与を受けた者に課税される不動産取得税の税額は300万円です。

贈与税の制度選択と登録免許税額

不動産取得税の課税標準は固定資産課税台帳の価格ですから、贈与税とは関係がありません。

したがって、贈与税で原則課税を選択した場合と相続時精算課税を選択した場合とで、不動産取得税の税額は変わりません

まとめ

以上、不動産の生前贈与にかかる3つの税金(贈与税、登録免許税、不動産取得税)について紹介しました。

不動産を贈与する場合は、現金などの金融資産を贈与する場合と比べると追加的な税負担が生じることをお分かり頂けたかと思います。

それぞれの税金についてより詳細を知りたい場合は、国税庁のホームページをご覧頂くか、お近くの税理士にご相談されるとよいでしょう。

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ABOUT US
税理士 友野祐司
税理士法人レガシィ勤務を経て2011年に響き税理士法人に入社、相続税専門の税理士として、横浜を中心に相続税申告のサポートをを行っています。どこよりも、素早い対応を心がけておりますので、少しでも相続税に関して、不安や疑問がありましたらお気軽にご相談ください。