「育ててくれた親に住宅を贈って親孝行したい!」
「非課税措置は、親への贈与でも使える?」
贈与税には、住宅用の資金を贈与する場合に認められる非課税特例があります。
非課税特例を受けるには受贈者や家屋に要件がありますが、制度を利用できれば最大1,000万円まで非課税になることも。
住宅購入のための資金を贈与したいと考えている人にとっては、非常にありがたい特例です。
では、自分を育ててくれた親への感謝の気持ちとして住宅を贈りたい場合にも、特例は適用できるのでしょうか?
親に贈与するときのポイントも気になるところです。
そこで今回は、親に住宅を贈与する場合に気を付けるべきポイントを解説します!
住宅資金を贈与する場合の特例の詳細や子から親への贈与の扱いについてもまとめていますよ。
この記事を読むことで、親への贈与について覚えておくべき必要最低限の知識が身に付くので、ぜひ参考にしてください。
目次
この記事の監修者

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
住宅取得等資金贈与の非課税特例とは

住宅取得等資金贈与の非課税特例とは、一定の要件を満たせば最大1,000万円の非課税限度額まで贈与税が非課税となる制度のことです。
暦年課税の贈与税は、年間110万円を超えると課税対象となるため、最大1,000万円まで非課税となる特例の効果は非常に大きいといえます。
受贈者(受け取る人)と対象となる家屋には、それぞれ要件があります。
以下で詳しく解説していくので、利用する可能性がある人はしっかりチェックしてください。
受贈者の要件
住宅取得等資金贈与の非課税特例を受けるには、受贈者は以下のすべての要件に当てはまる必要があります。
- 贈与者の直系卑属(子や孫)であること
- 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること
- 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下(新築する住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、1,000万円以下)であること
- 過去に同様の制度を利用していないこと
- 取得する住宅が親族からの購入・請負契約の工事ではないこと
- 贈与を受けた翌年の3月15日までに、贈与された住宅取得等資金の全額をあてて住宅を購入し、住み始めること
- 日本国内に住所があること
非課税特例を受けるには、贈与者の直系卑属であることが要件のひとつです。
つまり、自分の両親や祖父母からの贈与である必要があります。
したがって、自分から両親への贈与や配偶者の両親や祖父母からの贈与は認められません。
ただし、義理の両親と養子縁組している場合にはOKです。
上記のほか、実際の居住実態や住宅の購入先が親族ではないかなど、細かい確認も必要となります。
条件を満たさない場合は、特例が認められないため慎重にチェックしてください。
住宅居用家屋の要件
特例を受けるには、家屋側にも以下のような要件があります。
- 日本国内にある住宅であること
- 床面積が40㎡以上240㎡以下 かつ、その2分の1以上が受贈者の居住の用として使われること
- 中古住宅の場合は昭和57年1月1日以後に建築されたものであること、もしくは、地震に対する安全性が一定の書類で証明されていること
上記は家屋を取得する場合の要件で、増改築等の要件はまた別にあります。
要件を満たして、制度が利用できるかどうかは慣れない人の判断では難しいこともあります。
制度を利用したい場合には一人で考え込まず、専門家への相談がおすすめです。
子から親への贈与は「一般贈与」
贈与税は、大きく分けて一般贈与財産と特例贈与財産の2つに分けられます。
2つを分ける基準は、受贈者と贈与者の関係性です。
カンタンにいうと、特例贈与財産は親や祖父母から18歳以上の子・孫などへ贈与する財産を差します。
つまり、以下のような贈与はすべて、一般贈与となります。
- 子から親への贈与
- 孫から祖父母への贈与
- 夫婦間での贈与
- 兄弟姉妹間での贈与
- 父母や祖父母から未成年(18歳未満)の子や孫への贈与
- 他人への贈与
一般贈与は特例贈与よりも税率がやや高く、支払う贈与税が高くなります。
たとえ親子間であっても子から親への贈与は、税法的な優遇のない贈与であることを覚えておきましょう。
特例贈与財産とは
特例贈与財産とは、父母・祖父母など(直系尊属)から18歳以上の子・孫など(直系卑属)へ贈与される財産をいいます。
ちなみに、子や孫の年齢は贈与された年の1月1日時点で判定します。
したがって、18歳になる年であっても、1月1日に18歳になっていなければ認められません。
特例贈与が認められると贈与税を抑えて、財産を後世に引き継ぐことができます。
親に住宅を贈与するときにできる節税対策は?

では、子から親に贈与する場合、いわゆる逆贈与するときにできる節税対策はあるのでしょうか?
残念ながら現在の税法では、子から親に住宅を贈与する場合にできる節税対策はありません。
たとえ住宅の贈与であっても、一般贈与としての贈与税を納める必要があります。
生活費の贈与なら子から親でも非課税
子から親への贈与は、基本的に一般贈与として贈与税がかかります。
しかし、唯一贈与税がかからないのが、生活費の贈与です。
扶養義務者からの仕送りが、生活費として認められます。
扶養義務者は、相続税法上「三親等内の親族で生計を共にする者」とされていて、離れて暮らしていても定期的に仕送りをしていれば「生計を共にする者」とみなされます。
生活費であれば、暦年贈与の基礎控除額である年間110万円を超えることも可能です。
110万円を超えていいならいくらまでOKなの?と気になるところですが、国税庁によれば、以下のようにまとめられています。
【生活費として認められる金額についての国税庁の見解】
仕送りを受ける親の生活費と、仕送りをする子供の収入や資産、その他のすべての事情を併せて勘案し、常識的に認められる範囲の金額
具体的にいくら、とは決まっておらず、贈与者の収入や受贈者の生活水準によるようです。
あくまでケースバイケースなので、妥当な金額に悩む場合は、贈与税に詳しい税理士に相談してみてください。
お金を貸すなら金銭貸借契約書を作成
子から親にお金を貸す場合は、必ず金銭貸借契約書を作成しましょう。
契約書のやり取りがなく「なあなあ」で貸し、返済の催促もしないと、税務署では「貸した」のではなく「あげた」とみなされます。
つまり、贈与と認定され、贈与税が課される可能性があるのです。
お金を受け取った側は贈与税を払うことになるため、注意してください。
仮に「本当に貸し借りのつもりであげるつもりはなかった」、「返済が滞っていたけど催促しにくかった」という場合でも結果は同じことです。
親子間であっても、お金の貸し借りをする場合は以下の手続きを踏んでおきましょう。
- 金銭消費貸借契約書を作成
- 定額の返済金額、返済期間を決めておく
- 金銭消費貸借契約書に従い、返済をする
上記を押さえておけば、贈与と認定される心配はありません。
贈与税は税率が高めなので、あらかじめ手を打っておけば不要な支払いを免れますよ。
まとめ|親への住宅贈与の非課税措置はできない、悩んだら税理士にご相談を

今回は、子から親に住宅を贈与した場合に、非課税措置が利用できるかどうかについてお伝えしました。
結論からいうと、子から親への贈与では非課税措置は利用できません。
住宅贈与の非課税措置は、親や祖父母から、子や孫への贈与に限られます。
血縁関係者でのやり取りであっても、非課税措置は利用できないことを覚えておきましょう。
また、子から親に贈与された財産は一般贈与財産となり、親から子への贈与よりも高い贈与税が取られる可能性があります。
現時点では、子から親に逆贈与した場合の税制的な優遇はなく、取れる節税対策はありません。
ただし、生活費の贈与だけは例外です。
生活費であれば基礎控除額110万円を超えても、贈与税が課されることなく親に贈与できます。
金額は収入や生活水準によって変わります。
大切な親御さんへの贈与を考えている方は、ぜひ税理士に相談してみてくださいね。

戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
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