「相続税で問題が起こりやすいのは、どういうケース?」
「相続トラブルを避けたいけど、具体的に何をすればいい?」
誰かが亡くなると、それまでの家族の関係から微妙に変化することがあります。特に相続ではお金や財産が絡むため、思わぬトラブルが発生することも。近年の税制改正により、富裕層だけでなく中流層でも相続税が課されやすくなりました。事前にしっかり準備しておかないと、相続税が納付できないという恐れも…。
そこで今回は、相続税に関するよくある問題・トラブルについてまとめました。相続で問題が起こりやすい6つのケースとそれぞれの解決策を紹介していきますよ。この記事を読むことで、相続で起こりがちな問題やトラブルを未然に防ぐことに繋がるので、ぜひ参考にしてください。
目次
この記事の監修者
税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
ケース1.遺産の分割協議でもめる
相続税でよくあるトラブルには、遺産分割協議でもめる事が挙げられます遺産分割協議で内容を取り決める場合には、相続人全員の同意が必要で、誰か一人でも拒否したらまとまりません。
相続税の申告及び納税の期限は、相続開始から10ヶ月以内です。期限に話し合いが完了しない場合であっても、期限内の納税が必要になります。話し合いがまとまらないことや連絡が取れない親族がいることで、遺産分割協議は揉めやすくなりがちです。
解決策
遺産分割協議がまとまらないトラブルを防ぐためには、以下の点を心がけておくと良いでしょう。
- 相続人間で連絡を取れるようにしておく
- お互いに冷静になって協議を進める
- 意見がまとまらない場合には、それぞれの立場になって考えてみる
- 中立的な議長を立てて、話し合いをする
- どうしてもまとまらない場合は、家庭裁判所での調停・審判を検討
まず、相続発生が予見できる場合には、相続発生前に相続人間で連絡を取り合うようにしてください。また、中立的な議長、例えば専門家である税理士や弁護士を議長を立てて話し合いを進めるのも良いでしょう。専門家である第三者が入ることでアドバイスが得られ、相続人同士が感情的になるのを防ぐことが期待できます。話し合いがこじれてしまい、まとまらない場合には、家庭裁判所での調停や審判も可能です。
ケース2.一部の相続人が生命保険金を受け取っている
一部の相続人が生命保険金を受け取っている場合、相続トラブルが起きやすくなります。実は、生命保険金の請求権は相続財産には含まれません。
そのため、生命保険金を受け取る相続人がいる場合、生命保険金を考慮せずに遺産分割を行うと実質的に不公平が生じます。生命保険金を一部の相続人だけが受け取る場合、遺産分割は慎重に行いましょう。
解決策
生命保険金にまつわる相続トラブルを回避するには、生命保険金を受け取らない相続人が納得できるような遺産分割を心がけることが重要です。
受け取る生命保険金を考慮して遺産分割協議を行うと、他の相続人も納得した分与に近づけられるでしょう。保険金を受け取らない相続人からのアプローチとしては、保険金を「特別受益」として扱うよう促す方法があります。
【特別受益】
一部の相続人だけが特別に得ていた利益のこと。
- 相続財産に含まれない特別な利益を受けている場合、相続財産に含められる
- 具体的には、生前贈与や借金の肩代わり、借地権の継承等が挙げられる
- 通常、生命保険金や死亡退職金は特別受益に該当しない
一般的には特別受益に含まれない生命保険金ですが、認められた判例があります。一部の相続人の生命保険金の受け取りにより、相続分に著しい不公平が生じる場合は、特別受益を主張してみましょう。
ケース3.相続人に前婚の子どもや内縁の妻がいる
相続での問題が起こりやすいケースには、相続人の中に前婚の子どもや内縁の妻がいる場合も挙げられます。前婚の子と連絡が取れない状況にある場合は、遺産分割協議に手間取るため注意が必要です。(※ 相続権があるのは子だけで、全配偶者には認められません。)
また、被相続人の子とは言え、会ったこともない人に財産を分けるのに少なからず抵抗を感じる可能性もあるでしょう。原則、内縁の妻には相続分が認められませんが、遺言や生前贈与などで財産を得ることができます。内縁の妻が被相続人の家に居住するケースは、より複雑になることが想定されるため注意が必要です。
解決策
被相続人が事前に遺言書で、誰にどのような財産を遺すかを明記しておくことで、トラブルを避けやすくなります。遺言により、被相続人の意志や気持ちを伝えることも可能です。
また、生きている間にどのような相続人がいるか伝えておくと、スムーズに相続を進めることができます。前婚の子や内縁の妻など相続人が複雑になる場合には、早めに専門家に相談するのもおすすめです。専門家であれば調査や対処方法にも知見があるため、適切なアドバイスを受けられるでしょう。
ケース4.財産が不透明
相続財産が不透明なことも、相続問題を引き起こす要因のひとつです。どのような財産があるのかわからないと、以下のような問題が起こりやすくなります。
- 相続財産の確定に時間がかかる
- 遺産分割協議がすすめられない
- 思わぬ財産が出てくることで、相続人間での争奪が懸念
- 相続登記や名義変更などが遅れる
- 相続放棄の期限(相続開始から3ヶ月以内)や相続税の申告期限までに間に合わない
相続税の算出では、遺言書の有無の確認、相続人の調査の次に、相続財産の確定が必要です。そして、相続財産の確定は相続でやらなければならない事の中で、もっとも煩雑な作業と言えます。相続財産の内容が不透明だと、その後の遺産分割協議を円滑に進められなくなります。結果として10ヶ月という相続税の申告期限までに間に合わない可能性もあるでしょう。
解決策
財産を明確にしておくために被相続人、相続人ともにできることがあります。まず、被相続人は遺言などを用いて、財産を明らかにしておいてください。個別に分けたい財産・相続人が決まっているなら、しっかり書き記しておくと良いでしょう。
さらに、書き漏らした財産があった場合にどのように分けるかを明記しておくと、遺産分割でのトラブルを未然に防げます。相続発生後に相続人ができることでは、固定資産税評価証や名寄帳の取り寄せ、被相続人の自宅で通帳、有価証券を探すことがあります。
ただし、不慣れな相続人による財産調査は、財産の漏れや作業の遅れなど、トラブルを招く要因になる恐れも。遺言がなく、財産内容が不透明な場合には、税理士や弁護士などに相談しましょう。
ケース5.相続財産が不動産しかない
相続財産が不動産しかない、あるいは財産のほとんどを占める場合も、問題が起きやすくなります。土地や建物などの不動産は、現預金のように簡単に分けることができません。
兄弟で共有する方法や土地と建物の所有者を別々にするなどの方法もありますが、売却を考えるときにはもめる可能性が高くなるでしょう。不動産が多く、現預金がほとんど遺されていない場合には、相続税の納税が困難になることも考えられます。また、誰も相続したがらない土地がある場合は、誰が相続するかでもめることも懸念されます。
解決策
不動産の多い相続で相続税の支払いに不安がある場合には、換価分割で対処するのがスムーズです。
【換価分割】
不動産や有価証券など遺産を売却して、得た売却金を法定相続人の間で分配する方法。
- 現金なので相続人間で公平に分けやすいため、親族間のトラブルが起こりにくい。
- ただし、売却には相続人全員の同意が必要。
- 売却した時には手数料や譲渡所得税が課税されることもデメリットに挙げられる。
計画的に相続税の申告・納税を行うために、相続人同士が協力し合うことが重要になります。また、相続人らの遠方にあり、使用していない土地などがある場合は、被相続人が生きているうちにどうするかを話し合うことも大切です。相続後に困るのであれば、被相続人に売却や処分をお願いすることも、スムーズな相続に向けてた対策になります。
ケース6.相続税が高くて貧乏になる
相続税が高く、支払いのために生活が苦しくなることも、相続問題のひとつです。原則、相続税は現金で納付する必要があります。遺産が不動産ばかりの場合では、相続税を支払うための資金が準備できず納付が困難になる可能性も。
しかし、どのような事情があっても期限までに申告・納税をしないと、延滞税や無申告加算税が課されてしまいます。相続税を納付するために、ある程度の資金を準備しておくことが重要です。
解決策
相続税支払いによる資金不足は、事前にきちんと対策しておくことで解決しやすくなります。事前の対策として有効なのは、以下の方法です。
- 相続税がどの程度かかるのかを把握しておく
- ある程度の現預金を準備しておく
- 生命保険金や退職金などを上手く活用する
まず、どの程度の相続税がかかるのかを理解しておくことが重要です。必要な金額を知っておくことで、手元に置いておくべき現預金がわかります。
ただし、現預金は不動産と異なり受けられる控除がないため、遺産に多く含みすぎると相続税が高くなる可能性があります。遺産としての現預金を抑えつつ納税資金対策を行うには、生命保険金などを活用するのも良いでしょう。
相続トラブルや問題を回避するためには
相続にまつわるトラブルや問題を回避するためには、以下のような準備を行うと良いでしょう。
- 被相続人・相続人間できちんと話し合う
- 遺言書を作成しておく
- 不安なことがある場合、専門家に相談する
まず、相続でのトラブルを回避するために、被相続人と相続人できちんと話し合っておくことが重要です。その際、1人の相続人だけに話すのではなく、できるだけ多くの相続人に一度に伝えるようにしましょう。
次に、的確な遺言書を作成しておくことも効果的です。遺言書を残すことで被相続人の遺志を伝えられ、相続人間がもめるのを防ぐことが期待できます。
また、少しでも不安がある場合は専門家に相談すれば、早い段階で解決を望めるでしょう。税のことであれば税理士に、法的なことに関しては弁護士など相談したい内容に応じて、相談先を選んでくださいね。
まとめ
今回は、相続で起こりがちな問題やトラブルについてお伝えしました。相続にまつわる多くのトラブルや問題は、事前にきちんと対策を取っておくとスムーズに解決に向かうことができます。事前の対策としては、以下のような方法が有効です。
- 被相続人・相続人間できちんと話し合う
- 遺言書を作成しておく
- 不安なことがある場合、専門家に相談
相続発生後のトラブルや問題を避けるためには、早めの対策がなによりも重要になります。早めにアクションを起こして、相続でのもめごとを回避してくださいね。
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
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