2024年1月から、暦年課税による生前贈与の加算対象期間や相続時精算課税制度が見直されました。
そのため、日本の相続税は海外より高いのか、相続税がない国はあるのかと気になっている方も多いでしょう。
日本の相続税率は10%〜55%です。
ただし、最高税率だけで各国の負担を単純に比較することはできません。
基礎控除や配偶者に対する優遇措置、財産の分け方などが国ごとに異なるためです。
本記事では、財務省が公表した2026年1月時点の資料をもとに、世界の相続税ランキングと日本・海外の相続税制度を比較します。
相続税がない国や、海外移住と日本の相続税との関係も解説します。
この記事の監修者

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
【2026年最新】世界の相続税ランキング

まずは、日本・フランス・英国・米国・ドイツについて、子などの直系親族が相続する場合の最高税率を比べてみましょう。
| 順位 | 国 | 直系親族に適用される最高税率 | 主な課税方式 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 日本 | 55% | 法定相続分課税方式 |
| 2位 | フランス | 45% | 遺産取得課税方式 |
| 3位 | 英国 | 40% | 遺産課税方式 |
| 3位 | 米国 | 40% | 遺産課税方式 |
| 5位 | ドイツ | 30% | 遺産取得課税方式 |
※ドイツは相続人の税区分によって最高50%、フランスは被相続人との関係によって最高60%になる場合があります。
上表は、各国を同じ条件に近づけるため、子などの直系親族が相続する場合の最高税率を掲載しています。
最高税率だけを見ると、日本は5か国のなかで1位です。
ただし、実際の負担額は、控除額や配偶者への優遇措置などによって変わります。
相続税の「負担率」では課税価格によって順位が変わる

財務省の「主要国における相続税負担率の比較」は、次の条件をそろえた資料です。
・相続人は配偶者と子2人
・配偶者が遺産の2分の1を取得
・子2人が残りの遺産を均等に取得
・負担率は「相続税額÷課税価格」で算出
この比較では、課税価格が比較的低い段階では英国の負担率が高く、課税価格が9億円前後になると日本が英国を上回ります。
その後は課税価格が大きくなるほど、日本と他国の負担率の差が広がる傾向です。
したがって、「日本の相続税は必ず世界一高い」と一律にいうことはできません。
正確には、次のとおりです。
・日本の相続税の最高税率55%は世界でも高い水準
・財務省のモデルでは、課税価格が9億円前後になると日本の負担率が5か国で最も高くなる
・課税価格がそれより低い場合は、英国の負担率が日本を上回ることがある
・米国は基礎控除額が大きく、同資料では課税価格3,000万ドル(約46億5,000万円)まで負担率が0%
なお、財務省の2026年版資料では、次の換算レートが使われています。
| 通貨 | 2026年1月の換算レート |
|---|---|
| 1米ドル | 155円 |
| 1英ポンド | 203円 |
| 1ユーロ | 180円 |
世界の相続税はどのくらい?主要5か国を比較

各国の代表的な内容です。
相続税の課税方法や控除制度は国によって異なります。
ここでは、日本と比較されることの多い英国・フランス・ドイツ・米国の制度をみていきましょう。
英国|遺産全体に原則40%で課税
英国の相続税は、相続人が取得した財産ではなく、亡くなった方の遺産全体を基準に税額を計算する「遺産課税方式」です。
主な特徴は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標準税率 | 40% |
| 基礎控除枠 | 32万5,000ポンド(約6,598万円) |
| 住宅に関する追加控除枠 | 最大17万5,000ポンド(約3,553万円) |
| 配偶者・シビルパートナーへの相続 | 原則として課税されない |
標準税率40%は、基礎控除枠を超えた部分に適用されます。
一定の自宅を子や孫などの直系卑属へ残す場合は、「住宅に関する追加控除枠」を利用できます。
基礎控除枠とは別に、最大17万5,000ポンドが設けられている制度です。
要件を満たす場合、1人あたり最大50万ポンドまで課税対象外となる可能性があります。
夫婦で未使用枠を引き継いだ場合は、合計最大100万ポンドです。
ただし、遺産総額が200万ポンドを超えると、住宅に関する追加控除枠は段階的に縮小します。
また、不動産が一律に非課税になる制度ではありません。
出典:英国政府「How Inheritance Tax works」「Inheritance Tax rates and allowances」
フランス|相続人が取得した財産に5%〜45%で課税
フランスでは、相続人が取得した財産を基準に税額を計算する「遺産取得課税方式」が採用されています。
子などの直系親族に適用される税率は、課税対象額に応じて5%〜45%の7段階です。
主な特徴は次のとおりです。
・配偶者やPACS(連帯市民協約)のパートナーは、原則として相続税が免除される
・子1人につき10万ユーロ(約1,800万円)の控除がある
・過去15年以内の贈与で控除枠を使っている場合、相続時に利用できる控除額へ影響する
・親族関係によって税率や控除額が異なる
「相続開始前15年の贈与がすべて相続財産へ加算される」という単純な仕組みではありません。
過去15年以内の贈与は、主に控除枠や税率の適用を判断する際に考慮されます。
出典:フランス税務当局「Comment dois-je calculer les droits de succession ?」
ドイツ|続柄によって税率と控除額が変わる
ドイツも、相続人が取得した財産ごとに税額を計算する「遺産取得課税方式」です。
税率は、相続人の続柄に応じた税区分と、課税対象額によって決まります。
| 相続人の区分 | 税率 |
|---|---|
| 配偶者・子などの税区分Ⅰ | 7%〜30% |
| 兄弟姉妹などの税区分Ⅱ | 15%〜43% |
| その他の税区分Ⅲ | 30%〜50% |
主な人的控除額は次のとおりです。
| 相続人 | 控除額 |
|---|---|
| 配偶者・登録生活パートナー | 50万ユーロ(約9,000万円) |
| 子 | 40万ユーロ(約7,200万円) |
| 孫 | 原則20万ユーロ(約3,600万円) |
配偶者には、上記とは別に最大25万6,000ユーロの扶養控除が設けられています。
27歳未満の子も、年齢に応じた扶養控除の対象です。
また、同じ人から10年以内に受けた複数の贈与や相続は、税額計算上まとめて扱われます。
出典:ドイツ連邦法務省「相続税・贈与税法14条」「同16条」「同17条」「同19条」
米国|2026年の基礎控除額は1,500万ドル
米国の連邦遺産税は、亡くなった方の課税遺産を基準に計算する「遺産課税方式」です。
相続人が納める日本の相続税とは異なり、原則として遺産の管理者が申告します。
主な特徴は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 連邦遺産税の最高税率 | 40% |
| 2026年の基礎控除額 | 1,500万ドル(約23億2,500万円) |
| 米国市民である配偶者への移転 | 原則として控除の対象 |
2025年の基礎控除額は1,399万ドルでしたが、2026年は1,500万ドルへ引き上げられました。
基礎控除額が大きいため、連邦遺産税の申告・納税が必要になるのは、主に多額の財産を保有する方です。
州によっては、連邦遺産税とは別に遺産税や相続税が課される場合があります。
また、配偶者に関する取扱いは、市民権や信託の利用状況などによって異なるため注意が必要です。
出典:米国内国歳入庁「Frequently asked questions on estate taxes」「Instructions for Form 706」
日本の相続税は基礎控除を差し引き、法定相続分で計算する

日本の相続税は、実際に取得した財産へそのまま税率を掛けるわけではありません。
おおまかには、次の順序で計算します。
- 各相続人が取得した財産から、債務や葬式費用などを差し引く
- 加算対象となる生前贈与などを加える
- 課税価格の合計額から基礎控除額を差し引く
- 残額を法定相続分で分けたものと仮定して相続税の総額を計算する
- 実際に取得した財産の割合に応じて各相続人へ税額を割り振る
- 配偶者の税額軽減などを適用する
基礎控除額は、次の式で求めます。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
課税価格の合計額が基礎控除額以下であれば、原則として相続税の負担は生じません。
日本の相続税の速算表
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 0円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超〜2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超〜3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超〜6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
速算表は、各相続人が実際に受け取った金額へ直接適用するものではありません。
課税遺産総額を法定相続分で分けたと仮定した金額に適用します。
出典:国税庁「相続税の税率」
2026年の相続では生前贈与の加算期間は原則3年
2024年1月1日以後の暦年課税による贈与については、相続税の加算対象期間が段階的に3年から7年へ延長されます。
ただし、2026年12月31日までに開始した相続では、加算対象期間は原則として相続開始前3年以内です。
2027年以後、加算対象となる期間が段階的に延び、2031年1月1日以後に開始する相続から7年になります。
「2026年は相続開始前7年の贈与がすべて加算される」というわけではない点に注意しましょう。
出典:国税庁「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」
日本の相続税で利用できる主な控除・特例

日本は最高税率が高い一方で、相続人や財産の状況に応じた控除・特例があります。
| 制度 | 概要 |
|---|---|
| 基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数を遺産から差し引く |
| 配偶者の税額軽減 | 配偶者が取得した正味の遺産額が1億6,000万円または法定相続分相当額までであれば、原則として配偶者の税負担が生じない |
| 未成年者控除 | 一定の18歳未満の法定相続人について税額を控除する |
| 障害者控除 | 一定の障害者である法定相続人について税額を控除する |
| 相次相続控除 | 10年以内に相続が続いた場合、一定額を控除する |
| 贈与税額控除 | 相続税の課税価格へ加算された贈与について、納付済みの贈与税の一定額を控除する |
| 小規模宅地等の特例 | 要件を満たす居住用・事業用などの宅地の評価額を一定割合減額する |
このほか、生命保険金と死亡退職金には、それぞれ「500万円×法定相続人の数」で計算する非課税限度額があります。
ただし、この非課税枠を利用できるのは相続人が受け取った場合に限られます。
相続を放棄した人や相続人以外が受け取ったときは、適用されません。
限度額を計算する際の法定相続人の数には、相続放棄がなかったものとして、相続を放棄した人も含めます。
控除や特例には細かな要件があり、適用を受けるために相続税の申告が必要な場合もあります。
利用できる制度を正しく判断するため、早めに税理士へ相談しましょう。
出典:国税庁「配偶者の税額の軽減」「小規模宅地等の特例」「相続税の課税対象になる死亡保険金」「相続税の課税対象になる死亡退職金」
相続税がない国でも、別の税金がかかる場合がある

世界には、日本の相続税に相当する税金を廃止した国や、相続・遺産そのものには課税しない国・地域があります。
代表例は次のとおりです。
| 国・地域 | 相続時の主な取扱い |
|---|---|
| オーストラリア | 相続税・遺産税はない。ただし、相続後に資産を売却した場合などにキャピタルゲイン税が生じることがある |
| シンガポール | 2008年2月15日以後の死亡について遺産税を廃止 |
| 香港 | 2006年2月11日以後の死亡について遺産税を廃止 |
| カナダ | 日本の相続税に相当する税はないが、死亡直前に資産を時価で処分したものとみなされ、含み益へ課税されることがある |
「相続税がない国」であっても、税負担が一切ないとは限りません。
次のような税金や費用が発生する場合があります。
・資産の含み益に対する所得税・キャピタルゲイン税
・不動産の移転に伴う印紙税や登録税
・相続後に資産を売却した際の税金
・遺産の管理や裁判所の手続にかかる費用
そのため、相続税の有無だけを見て移住先を選ぶのは適切ではありません。
出典:
オーストラリア税務局「If you are a beneficiary of a deceased estate」
シンガポール内国歳入庁「Estate Duty」
香港税務局「Estate Duty」
カナダ歳入庁「Taxable capital gains on property, investments, and belongings」
海外へ移住しても、日本の相続税がかかる場合がある

海外へ移住しただけで、日本の相続税が直ちにかからなくなるわけではありません。
日本の相続税で国内財産と国外財産のどちらが課税対象になるかは、主に次の要素を組み合わせて判断します。
・被相続人が亡くなったときの住所
・相続人が財産を取得したときの住所
・被相続人と相続人の日本国籍の有無
・相続開始前10年以内に日本国内へ住所を有していたか
・財産が日本国内と国外のどちらにあるか
一定の要件を満たす非居住者は、日本国内にある財産のみが課税対象になります。
一方、相続人または被相続人の状況によっては、海外にある財産も日本の相続税の対象です。
「家族全員が海外へ移住して10年経過すれば、必ず日本の相続税がかからない」とは限りません。
国際相続は判定が複雑なため、移住や財産移転を決める前に国際税務へ対応できる税理士へ確認しましょう。
出典:国税庁「相続人が外国に居住しているとき」
海外移住では国外転出時課税にも注意

一定の資産を保有する方が海外へ移住する場合は、「国外転出時課税制度」の対象になる可能性があります。
主な要件は次のとおりです。
・国外転出時に、対象となる有価証券等の価額が合計1億円以上
・原則として、国外転出前10年以内に日本国内へ住所または居所を有していた期間の合計が5年超
対象資産には、株式や投資信託などの有価証券、未決済の信用取引・デリバティブ取引などが含まれます。
不動産や預貯金を含むすべての資産が対象になるわけではありません。
要件に該当すると、対象資産を国外転出時に売却したものとみなし、含み益へ所得税が課されます。
納税管理人の届出や担保の提供など、一定の要件を満たせば納税猶予を受けられる場合があります。
出典:国税庁「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」
まとめ:日本の相続税は海外より高いものの、控除・特例で負担を抑えられる可能性がある

日本の相続税の最高税率55%は、世界でも高い水準です。
財務省の比較では、課税価格が9億円前後になると、日本の負担率が比較対象の4か国を上回る結果となっています。
ただし、実際の税額は、相続人の人数や財産の分け方、適用できる特例によって異なり、一律ではありません。
海外移住後も、住所や国籍、財産の所在地によっては日本の相続税が課されるため、注意が必要です。
生前贈与や海外移住を含む相続税対策は、早めの検討が重要です。
相続財産の整理や利用できる特例についてお悩みの方は、相続税・贈与税に対応する響き税理士法人へお気軽にご相談ください。

戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。

















