親が亡くなった場合、どこに相続の相談をすべきか分からない。弁護士に依頼すべきか、税理士に依頼すべきか、判断する基準が知りたい。そのように悩んでいる方がいらっしゃるかと思います。
この記事では、相続の相談はどこにするのが良いのかを解説いたします。
目次
弁護士が最強ではない
相続の相談をどこにするか考える際に、まず思いつくのが弁護士かと思います。難しい法律関連の業務は全て弁護士に任せておけば安心。そのように考えているのではないでしょうか。
確かに弁護士は法律の専門家であり、あらゆる法務を取り扱う権利を持っています。しかし、弁護士に依頼すると、相続のことでトラブルを起こしていると周囲に判断される可能性があります。弁護士を通すということは、相手との話し合いがうまくいっておらず、好ましくない状況になっている。そう捉えてしまう人もいるのは事実です。
そのため、弁護士ではなく、税理士などの別の専門家に相談することをおすすめします。弁護士に任せたいという気持ちは理解できますが、上記のような理由から、弁護士が最強ではないと言えます。また、弁護士に依頼する場合はデメリットがあることも把握しておくべきです。
弁護士に依頼するデメリット
弁護士に依頼するデメリットとしては、主に次のようなものがあります。
費用が高い
弁護士に依頼する場合、費用が高くなります。大事なことだから多少の支出はやむを得ないと考えている方がいらっしゃるかもしれませんが、想像以上にお金がかかることを理解しておく必要があります。もちろん弁護士は法律のプロフェッショナルですので、高い費用を支払えば、それ相応の価値がある上質なサービスを提供してくれます。
しかし、世の中の弁護士が全員優秀なわけではありません。多くの弁護士は実力と実績がある場合がほとんどですが、中にはそうではない弁護士もいるのです。万が一実力不足の弁護士に依頼してしまった場合、大事なお金を無駄にすることになります。費用が高いというのは、大きなデメリットと言えるでしょう。
トラブルが大きくなる可能性がある
弁護士に依頼すると、トラブルが大きくなる可能性があります。こちらが弁護士に依頼したという事実を知ったことで、別の相続人も弁護士に依頼することになれば、トラブルは避けて通れないかもしれません。
弁護士は費用が高い分、業務を徹底するプロフェッショナルです。依頼者の利益を最大化するために、少しでも依頼者が有利になるような主張をしてくるのです。被相続人の相続財産が多いほど、トラブルのリスクは高まります。相続トラブルが長引けば、弁護士への追加費用が発生する場合もありますし、何より疲弊してしまいます。
トラブルを避けるためにも、弁護士へ相談せず、税理士などの別の専門家に相談するようにしましょう。
相続の相談は税理士事務所へ
相続については、相続税がかかる場合でも、かからない場合でも税理士事務所に相談するのがベストです。なぜ弁護士よりも税理士の方が良いのか、確認していきましょう。
相続税がかかる場合
相続税がかかる場合は、役所への申告が必須です。したがって、弁護士や行政書士、司法書士であっても税理士に相談する必要があります。
相続税をはじめ、税理士は税金に関するプロフェッショナルです。弁護士などといった税理士以外の専門家では、どうしても対応しきれない分野なのです。相続税がかかるにもかかわらず、税理士以外の専門家へ依頼してしまうと、通常の費用に加えて税理士への相談料もかかり、結果的に大きな支出になってしまいます。
かなり安い費用で相続税の申告を引き受ける税理士以外の専門家がいる場合、正しい申告をしてもらえない可能性が高いため注意してください。税務に関する知識がないのに、売り上げを伸ばすために実績を偽り、安い費用で相続税の申告代行を行っているというケースが考えられます。費用を少しでも安く抑えたいという気持ちは分かりますが、相続税の申告にミスがあった場合、過少申告加算税などの税金を追加で支払わなければならないのです。
さらに、その申告内容が正確性に欠けていて、もう一度ゼロからやり直すことになれば、また追加費用がかかってしまいます。費用を抑えるために不十分なサービスを利用したことで、最初から税理士に依頼した場合よりも多くの支出が発生してしまっては、本末転倒です。このような理由から、相続税がかかる場合は必ず税理士事務所に相談するようにしてください。
相続税がかからない場合
相続税がかからない場合、税理士事務所は仕事にならないため、料金が発生しないケースが多いです。仕事にならないから相談ができないというわけではなく、良い税理士事務所であれば、適切な手続きを無料で教えてくれたり、行政書士や司法書士、弁護士を紹介してくれる場合があります。
最近は電話一本で無料で相談に乗ってくれる税理士事務所が増えており、わざわざ事務所に足を運ばなくても、気軽に相談することができます。また、実績がある税理士事務所は、他の専門家とのネットワークがあることが多く、そこで紹介してもらった専門家に依頼する方が安心です。
そもそも相続税がかかるかどうか分からない場合でも、まずは税理士事務所に相談してみるのがおすすめです。最初に税理士以外の専門家に相談してしまうと、相続税がかかるかどうかということも含めての依頼になるケースがあります。そうなった場合、本来であれば払う必要がないお金を払うことになります。
相続税がかからない場合も、そもそも相続税がかかるかどうか分からない場合も、まずは税理士事務所に相談するようにしてください。
税理士事務所へ相談する際に確認すべきこと
このように、相続の相談は税理士事務所へするのがおすすめですが、相談する際に確認すべきことがあります。一つずつ解説していきます。
専門分野と実績
専門分野と実績の確認は必須です。税理士事務所であれば、どこでも良いというわけではありません。日本にはあらゆる種類の税金があり、全ての税理士がどの税金も完全に網羅しているわけではないのです。
日本にいる税理士の多くは、企業向けの法人税申告を専門としています。相続税に関する知識はあっても、申告の実務経験がない税理士が沢山います。不動産を相続する予定であれば、特に注意が必要です。相続財産の中でも不動産の申告は複雑なため、相続税の評価を軽減する制度や方法を知らず、正しい評価ができずに、相続税の金額が大きくなってしまうというケースが考えられます。
そのため、相談する前に、まずはその税理士事務所がどの分野を専門としており、どのような実績があるのかをしっかりと確認するようにしてください。相続税を専門としていて、実績もある税理士事務所であれば、すぐに分かりやすいレスポンスをしてくれるはずです。
反対に、相続税は専門外で、実績もない税理士事務所の場合、契約を取るために専門分野や実績を偽っているケースがあります。レスポンスが曖昧で、少しでも信用できないと感じた税理士事務所への依頼はなるべくしないように注意しましょう。
費用の妥当性
費用の妥当性を確認することも大切です。相続の相談をして、さほどサポートを受けていないにもかかわらず、巨額の費用を請求されるケースがあります。相続税の申告に関する税理士報酬額の相場は、相続遺産総額の0.5~1%程度と言われています。相続税が発生するかどうかの基準額は3600万円ですが、仮に相続遺産総額が4000万円とすると、税理士報酬額は20~40万円程度になります。
相続税が発生し、申告の手続きを全て代行してもらえて、充実したサービスを受けてもこれくらいの金額です。この相場よりも明らかに高い報酬額を提示してくる税理士事務所も中には存在するため、注意してください。報酬の相場を知っているか知らないかで、費用は大きく変わるのです。税理士事務所へ相続の相談をする場合は、必ず費用の妥当性を確認するようにしましょう。
アフターフォローの有無
相続の手続きが終わった後のアフターフォローの有無も大切です。相続の相談をして、手続きが終わったらその後のサポートはしないという税理士事務所は避けた方が良いです。なぜなら、相続税申告の約1割について、実地調査が行われているためです。
書面添付制度を利用した申告を行えば、実地調査が行われる可能性を低めることができますが、必ずしも避けられるわけではありません。仮に実地調査が行われることになれば、申告漏れや計算ミスがないかを丁寧に再確認する必要があります。全ての相続手続きを税理士に任せていた場合、自分で申告の正確性をチェックするためには、ゼロから全てやり直すことになります。そうなってしまったら、費用を払って税理士事務所に依頼した意味がありません。
そのような事態を避けるためにも、相続の相談を税理士事務所にする際は、必ず手続き後のアフターフォローの有無を確認するようにしてください。
他の専門家とのネットワークの有無
他の専門家とのネットワークの有無も大切です。税理士は税金関連の手続きを専門としていますが、対応できない分野もあります。そういった分野に関する他の専門家を紹介してくれるかどうかというのは、重要なポイントと言えます。
税理士は遺産分割協議書を作成したり、それに伴う相談を行う権限を持っていません。他の専門家とのネットワークがない税理士事務所に相談してしまった場合、別途司法書士や弁護士などの専門家に依頼する費用がかかってしまうケースがあります。事前に確認していなかったことで、後からトラブルになることもあるようです。
良い税理士事務所ほど良い他の専門家を紹介してくれる可能性が高いため、他の専門家とのネットワークは判断基準の一つになります。可能な限り費用と手間をかけないためにも、相続の相談を税理士事務所にする際は、必ず他の専門家とのネットワークの有無を確認するようにしてください。
税理士事務所へ相談する際に持っていくもの
税理士事務所へ相談する際に持っていくものは、いくつかあります。
相続財産のリスト
まず必要なのは、相続財産のリストです。どのような財産があるのかを正確に把握しなければ、どういった手続きを行うべきか、相続税の申告は必要かなどを判断することができません。正確なリストを作成するためには、被相続人になる人に直接聞くのが最も手っ取り早いです。
生前に相続財産の話をするのは気が引けるかもしれませんが、しっかりと確認しておかなければ、後で大変なことになる可能性がありますので、割り切って聞くようにしてください。
主にリストアップすべき財産は次の通りです。
- 現金
- 不動産
- 株式及び社債
- 生命保険
- 退職手当
現金は通帳、不動産は登記簿謄本及び測量図、株式及び社債は配当金支払通知書など、それぞれの財産に関する書類も一緒に準備してください。リストの作成が完了したら、それを税理士事務所へ持っていきます。
税理士はそのリストを参考に、細かい部分を確認してくれるため、とても重要です。税理士とのやり取りの中で、記載し忘れていた相続財産の存在に気付くこともあります。完全な状態で持っていく必要はありませんが、認識できる範囲の相続財産は全て記載し、提出するように心がけてください。
被相続人の家族構成の一覧
被相続人の家族構成の一覧も必要になります。相続税の申告が必要な場合は、相続財産のリストと同様に重要です。なぜなら、相続税の計算においては、配偶者と配偶者以外の家族で、控除の金額が大きく異なるためです。さらに、どの相続人がどれくらいの金額の財産を引き継ぐかで、相続税の合計税額も変わります。そういった理由で、家族構成の把握が大切なのです。
実際に相続税の申告をする場合、戸籍をさかのぼって、他に相続人がいないかどうかを調べる必要があります。したがって、家族や親戚の名前及び住所は、事前にまとめておく方が良いです。可能であれば、戸籍謄本などの正確な書類も用意しておくと確実です。税理士事務所に相談する際には、被相続人の家族構成の一覧を忘れないようにしましょう。
まとめ
本日は、相続の相談はどこにするのが良いかということについて解説いたしました。
弁護士は法律の専門家であり、信頼できると考える人が多いかと思います。しかし、弁護士に依頼すると、相続のことでトラブルを起こしていると周囲に判断される可能性があります。また、費用が高かったり、トラブルが大きくなる可能性があったりなど、デメリットもあります。
したがって、相続税がかかる場合でも、かからない場合でも、税理士事務所に相談するのがベストです。税理士事務所へ相談する際には、事前に確認すべきことをチェックし、必要なものをしっかりと準備して、相談するようにしてください。この記事が少しでも役に立てば幸いです。
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
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