
相続税を納付期限までに納められなかったら、ペナルティ(罰金)が課せられます。
では、やむを得ない事情で納付期限までに納付ができそうにない場合は、一体どのように対応するべきでしょうか。そこで、本記事では相続税の納付が遅れた際の対処法をわかりやすく紹介します。
目次
この記事の監修者

税理士 桐澤寛興
戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
相続税の納付・申告期限とは

相続税申告・納付の期限は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」と定められています。相続税の申告は、税務署側が計算してくれるものではありません。相続人側で被相続人の財産の評価を行い、申告をする必要があります。この章では申告期限の考え方と、遅れた場合のペナルティについて詳しく解説します。
相続税の申告期限の概要
相続税の申告期限は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内」にっ定められています。では、死亡したことを知った日、とはどのように判断すればよいでしょうか。
たとえば、同居のご家族の場合「死亡したことを知った日」と「死亡日」は同じであることが多いでしょう。一方で、被相続人と疎遠だった方や、先順位の相続人が相続放棄をしたことで相続人となった場合、死亡日よりも後に、相続の開始を知ることも少なくありません。
この場合、死亡日ではなく、相続の開始を知った日の翌日から数えて10か月となります。
相続税の申告・納付の期限に遅れるとペナルティがある

相続税の申告・納付期限に手続きが間に合わなかった場合、ペナルティーが課せられています。主なペナルティは以下のとおりです。
延滞税とは
延滞税とは、法定納期限の翌日から、実際に納付された日までの日数に対して課税されるものです。利息と言えるもので、期限後申告で修正を行った場合や税務調査で追加の納税が必要になった場合にも課税されます。
延滞税の税率は2種類あります。
- 納期限の翌日から2ヶ月の期間に対応するものは年2.4%、
- それ以降の期間に対応するものは年8.7%です(2025年度の場合)
詳しくは以下の国税庁サイトをご確認ください。
参考URL 国税庁 No.9205 延滞税について
無申告加算税とは
無申告加算税とは、正当な理由なく相続税の申告を期限内に行わなかったことに対するペナルティで、罰金に相当します。延滞税とは別に支払う必要がありますが、申告期限から1か月以内に申告した場合は無申告加算税は加算されません。
無申告加算税の税率は税務調査の通知前・通知後などにあわせて3つに分けられています。
追徴税額 | 事前通知前 | 事前通知後から 調査前 | 調査後 |
50万円以下 | 5% | 10% | 15% |
50万円超~300万円以下 | 5% | 20% | 30% |
300万円超 | 5% | 25% | 30% |
税務調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合には、この無申告加算税が5%の割合を乗じて計算した金額に軽減されます。
過少申告加算税とは
過少申告加算税とは、相続税を本来申告すべき額よりも低く申告していた場合に課せられるペナルティです。申告期限までに申告納付をしても、その税額が過少だったときは、過少申告加算税に加えて延滞税も課せられるため注意が必要です。
課税される税率は以下です。
追徴税額 | 事前通知前 | 事前通知後から 調査前 | 調査後 |
当初の納税額と50万円のいずれか多い方以下 | 0% | 5% | 10% |
当初の納税額と50万円のいずれか多い方を超える部分 | 0% | 10% | 15% |
控除や特例が適用できなくなる
相続税の申告期限を過ぎてしまうと、本来適用できたはずの特例や税額控除が利用できなくなる点も知っておく必要があります。
小規模宅地等の特例
配偶者の税額の軽減(配偶者控除)
農地の納税猶予の特例
非上場株式等の納税猶予の特例 など
これらの特例や控除は相続税を軽減する効果がありますが、申告期限を守ることが適用条件です。期限を過ぎると本来よりも高額な相続税を納める事態になりかねませんので、十分な注意が必要です。
ただし、「小規模宅地等の特例」と「配偶者の税額軽減」は、申告期限内に未分割申告を行っておき、遺産分割協議終了後に「修正申告」もしくは「更正の請求」を行うことで適用できます。
申告期限に間に合わない!知っておきたい対処法とは

やむを得ない事情で相続税の申告・納付期限に間に合わない場合には、一体どうすればよいでしょうか。そこで、この章では知っておきたい対処法について詳しく解説します。
無申告のまま放置はNG
相続税の申告・納付期限までに相続税額の計算が終わらない、現金が用意できない場合でも、無申告のまま放置することはNGです。延滞税と無申告加算税が課せられ、重いペナルティを背負うことになります。
申告期限までに準備が終わらなかった場合は「法定相続分で申告する」もしくは「概算の金額で申告する」ことが大切です。一旦申告することで、重いペナルティを回避できます。
法定相続分での申告とは
複数の法定相続人がいる場合、法定相続人ごとの相続税額は、被相続人の課税遺産総額を法定相続分どおりに取得したものと仮定して、それに税率を乗じて各法定相続人の仮の税額を算定します。
各人の税額を算定したら、合算値を実際に取得した正味の遺産額の割合に応じて按分するというステップで納税額を出します。
遺産分割協議が終わらない場合も、法定相続分で一旦申告することが一般的です。相続税の納税額は変わらないため遺産分割協議完了後に、相続人間で実際に支払うべき金額を精算しても問題ありません。
概算の金額で申告する
遺産分割協議は完了していても、被相続人の債務額が確定しないなどのケースでは、相続税申告が遅れてしまう可能性があります。このようなケースでは、ひとまず概算の金額で申告しましょう。
申告期限までに相続財産について概算の金額を計算し、それに基づいて申告納付すれば、無申告加算税は課せられなくなり、延滞税の金額も無申告時より少なくなります。払い過ぎている場合は「更生の請求」を行えば還付されます。
(多く支払っていた場合、過少申告加算税も延滞税も課されません)
相続税に計算や手続きに困ったらどうすればいい?

相続税の申告・納付期限を過ぎてしまったら、延滞税をはじめとする重いペナルティが待ち受けています。しかし、相続財産の評価に時間がかかったり、債務調査に手間取るなどの理由で、相続税申告の準備が遅れるケースは少なくありません。では、計算や手続きに困ったら、どうすればよいでしょうか。
できる限り早期に税理士へ相談する
相続税申告には多数の資料が必要なケースがあります。過去の贈与に関する資料を探したり、不動産や株式の評価に時間を要するケースも少なくありません。また、不動産の評価によっては現地調査が必要となる場合もあります。
そこで、相続税に関するご相談は、トラブルの有無を問わずお早めに税理士へご相談されることがおすすめです。税理士に相談することで、スムーズに申告準備が整うだけでなく、特例や控除もに関するアドバイスも受けられます。
相続人間での遺産分割協議に時間がかかっても、相続税申告は期限内に行う必要があるため、忘れずに相談するようにしましょう。
まとめ
相続税の計算が申告期限までに間に合わない場合、無申告の状態で放置してしまうと、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課せられてしまいます。
法定相続分を取得したことによる申告などの方法で、まずはきちんと相続税申告を期限内に終えることが大切です。申告期限ギリギリになって慌てないよう、相続が発生したらお早めに横浜市の響き税理士法人へご相談ください。

戸田譲三税理士事務所(現税理士法人みらいパートナーズ)、富士通株式会社 社内ベンチャー企業 勤務を経て2004年 桐澤寛興会計事務所 開業その後、2012年に響き税理士法人に組織変更。相続相談者様の悩みに寄り添うサービスを心がけている。
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